6話、基本【眷族】は喋らない
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また【眷族】が増えた記念にベッドをキングサイズにしてみた。流石にダブルベッドは狭くなって来たから。凄くふかふかして居て皆も気に入り、一角で和み系集会が開かれるだろう。
「絆創膏と、包帯と‥」
早速アクア達が仲良く遊んで居るのを横目にし、カリスの回復魔法があるのに俺は指輪【収納】から救急箱を取り出し、消耗した品物の補充する。
備えあれば憂い無しって言うからな。もしかしたらLvも低いし、彼女達のMPが無くなっちゃうかも知れないし。こりゃ切実に指輪スキルLvを上げたい、そろそろ詳細ステータスでHPとMPを見させて欲しい。
救急箱に粗方詰め終わり、指輪に【収納】。それを待って居たかの様に、アクア達が此方に向かって来る。主冥利に尽きるって感じ?嬉しいねぇ。
「明日、はダンジョン探索の続きをする。仲良く、相手の欠点を補いながら頑張ろう。一番大事なのは、怪我をしない事かな」
相も変わらずシオはお留守番で良心は痛むが「ホーム」を守ってくれ、と言えば元気良く一鳴き。どんどん頼もしく、増えて行く【眷族】に心強さを感じる。
1つ言うなれば、明日で良いのだろうか?真面目に悩む。
余り気にして居なかったが、時間が分からないのは少しばかり不便だな。此処へ来てどれだけの時間が過ぎたか曖昧だし、オジサンになる迄にはどうにかしたい。
「後は花に水あげて、軽食食べて、もう寝ちゃおうかな」
寝過ぎで眠い、と言うのを久々に体験しても良いだろう。よっこいせと掛け声をし、6人を持ち上げるとキャッキャ楽しそうに歓声が上がる。主に3姉妹。
アクア、青月、シオを泉へ、3姉妹を花のベッドへ。指輪【収納】から瓶を取り出し、水やりを。‥‥花が何だか群生祭りになって来た様な気が‥。
「んじゃ、明日から宜しくな」
問い掛けると彼女達はしっかり頷き、同時にスカートの裾を持ち上げ頭を下げ、花のベッドへ入って行く。やっぱり女の子だな、可愛らしいし様になってる。
硝子の瓶を【収納】し、気持ち良さそうに泉を泳ぐアクア達を横目に俺もベッドへ帰る。シオはもう岩場の寛ぎ場で寝て居たり。
軽食お握りセットをパパッと食べて寝に入る。明日は十二階層の途中から探索、またあんなに沢山の小玉鼠が居たら少し憂鬱な気分になるかも知れないな‥。
何時も通りに準備をし、所が変わって十二階層目。歩みを進め、大量の小玉鼠と戦闘をした松明が尋常じゃ無い場所へ辿り着く。
戦闘前は帰還を使えなかったが、戦闘後は普通に帰還出来た。ボス部屋の様に特定スキルの制限はされて居たみたいだけど、実質トラップ部屋だったのかね。
「んー‥、考えても仕方無い。カリス、また宜しく頼む」
あんなに大量の気配は無いとしても、暗がりから此方を窺う気配がする。スライム部屋みたいな感じか?いやいやいや、スライムみたいにポンポンポンポン再生してたらまた襲われる。
考えても仕方無い、と思考を止めて先へ進もうと歩む。やはり通路は乱雑な松明で暗いので、此処はカリスの出番。カリスが両手を前に出し、小さく何かを呟けば明るく光る球が浮遊する。
効果とかは聞けないが、きっと光の補助魔法で暗い場所を照らす効果。電球位の明るさで、随分先まで照らしてくれる。唯一の欠点は、明るい場所に入ると自動解除されてしまう所。
だからもう一度お願いした訳で、凄く助かります。暗がりに居る小玉鼠が驚いてるのか、逃げて行くからね。
「階段は何処かな‥」
時間にして1時間程度は歩いて居ると思う。体力付いて来たから良いものを‥。曲がったり引き返したりする道は選んで無いから、結構奥まで来た気がする。
「あー‥?ここ?」
うろうろ、うろうろ。ふと足を止め、通路の横に目を向ければ人1人が漸く通れる程の狭い通路。確かに、微かに石造りの床が土に汚れて居るがはっきりと見えた。
行ってみなければ分かるまい、不味くなったら帰還すれば良いし。そう思いながら俺は、狭い通路へと身体を滑り込ます。
「‥‥ビンゴ。でも狭い、趣向変えにしては悪趣味だ」
通路の奥には上り階段があり、やっと次の階層へ進めると安堵する。だが、階段を上れば上る程どんどん狭くなって行き、俺は眉を寄せる。十三階層に着く頃には蟹歩きでしか進めなかったからだ、凄くダサい。
漸く階段を上がり終わり、十三階層の広さに一安心する俺。辺りを見渡し周囲を確認するも、石造りのダンジョン。原点回帰か?
「松明も無く明るいが、光源はどうなってるんだ?」
明かりが無いのに明るいと言う不思議さに、思わずアクア達を見ながら俺は首を捻る。すると皆が真似をして首を傾げたり、身体を傾けたり、凄く可愛い。
皆を愛でるのは「ホーム」へ帰ってからにしよう、そうしよう。マッピングは出来そうに無く諦めるとして、早速探索を始める。
「敵の気配は‥、無さそうだな。ん?あぁ、警戒は怠らないよ」
何度目かの十字路を適当に曲がりながら呟く。十字路の床がモザイクタイルの様で綺麗だな、と思って居ると皆から諌められた。突然敵が出現するかも知れない、気を付けよう。
言葉は通じないが身振り手振りは通じる。まぁ、俺の言葉を【眷族】の皆が理解出来るのが大きいな。つまる所、楽しくお喋りしながら探索して居た。
「‥‥あれ?此処」
さっきも通らなかったか?気付かなかった事を恥じるよりどう言う仕掛、もしくは罠なのかを考えよう。通路の端に陣取り、皆で顔を見合わせ首を捻る。
今まで無かったから失念して居た、罠と言ったら謎解き落とし穴針が飛んで来たり天井が落ちて来る。侵入者を撃退するのに、魔物だけが手段じゃない。そう考えると恐ろしいな。
「俺がやったゲームから推測するに、回転床だと思う」
某マップを見る回数が限られるゲームも回転床があって、俺を苦しめた。時間は掛かると思うが対策は大丈夫だと思う、多分。
活躍してくれそうな物を指輪【収納】から探してみると、リボンが目に入る。これをある程度の大きさに切って回転前、回転後の十字路に置けばどうだろうか?また戻って来たとしても、リボンが無い場所へ行けば良いし。
「取り敢えずやるか」
うだうだして居ても、どの道先には進めない。鋏が無かったのでフランベルクを変わりにし、リボンを3等分。10本だったから30本に増えた訳だ。足りなくなったら低pt、また交換すれば良い。
3等分にしたリボンの1つを早速置き、皆でモザイクタイルの中へ入る。すると、真っ直ぐ向いて居た筈が右にリボン。普通なら後ろにある筈。
この作戦で行けば、同じ道を何回も通らないと行けないが大丈夫だろう。本当に抜け出せなかったら、マッピング機能付き地図を【経験pt⇔交換】で使用する。pt無けなしだけど‥。
「こっちには行ったよ。だから次はあっち」
回転床の精度が高くて助かったかもな。気付くのに遅れたってデメリットがあったけど、景色がぐるりと回転しないから酔わずに居られた。
3姉妹が飛び出して行きそうなのを静止しながら、俺はリボンを置く作業をする。十字路がリボンで埋まって来た、階段は近いか?
ぽよん、ぽよん、と弾みながら先導してくれてるアクアがピタッと止まった。辺りに視線を巡らせるも、敵の姿は勿論気配すら‥。
「上か!」
自分がウォーターフロッグに上から奇襲されて居た事を忘れてた。何処かで天井は無いって安心するんだよな、見下ろし系のゲームばかりやって居たせいか?
勢い良く天井へ視線を向けると、そこには鋭い牙と爪を生やした体長は赤子ほどの蝙蝠がこちらを威嚇して居る。
「蝙蝠のステータスを」
【簡易ステータス】
【種族】天鼠(肉食蝙蝠)
【レベル】Lv13
【取得経験pt】15pt
【装備】なし
【スキル】吸血、壊音波、羽ばたき、爪、牙
《100種程居る天鼠の中で唯一の肉食。羽ばたきは音もせず夜行性な為、荒い気性と相まって襲われる事件が相次ぐ》
「む、遠距離攻撃が無い俺とアクアは蝙蝠が落ちてくるまで待機。青月、シルス、リリムは尾剣と魔法で叩き落としてくれ。カリスは俺等と一緒、もしくはあの3人の補助で。後、無茶しない」
大体これがデフォルトの戦い方になりそうだ。近距離の俺とアクア、中距離の青月、遠距離のシルスとリリム、回復補助のカリス。良くあるパーティーだと思う、でもバランスが良い。
3人の攻撃が蝙蝠の皮膜を傷付け、飛べなくすると俺とアクアが止めを刺す。連携は何の問題も無い。あるとしたらLv差だろう。
「蝙蝠の、羽か‥」
【蝙蝠の羽】
《薄い皮膜の張った羽。乾燥させ、黒魔術の媒体に使われる》
一応指輪に【収納】。このメンバーで戦闘初勝利、ワーイ、と喜びを表現して居る皆に釣られ俺も万歳三唱。端から見たら結構恥ずかしい事をしてる、と気付いた時には遅かった‥。
そう言えば、皆で倒した時に経験ptはどうなるんだ?指輪を操作し、パネルを開いて検索中。ふむ、やっぱ半分は俺の、もう半分は攻撃を加えた【眷族】達で分配か。
オンラインゲームならLvにもよるけど少し少なく皆に分配なのにな、ケチ。
「さて、探索探索」
この階層が明るいからなのか、襲って来ない吸血蝙蝠も居る。そんな魔物には余り手を出さず、攻撃して来る魔物だけ倒す。一杯居そうだし、仲間呼ばれたら面倒だ。
一階層事に1000ptじゃ無かったら、絶対マッピング機能付きの地図買ってる!絶対殆どマップ埋まってるし!と、心の中で叫んで漸く階段発見。
十四階層はどうなんだろ、アクア達に慰められつつ階段を上がる俺。情けない。
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