5話、Lvを上げて物理で斬る
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心を鬼にして言い含めると、シオはしょんぼりした雰囲気を纏わせながらも分かってくれた様だ。そんなシオに行ってきます、と告げてLv上げと探索開始。
十二階層。此処は石壁でも自然系マップでも無く土の洞窟、と言った方が良いだろうか?松明は乱雑に設置され、これを目印にして居るのでマッピングは無理そうだ。乱雑過ぎて明るい場所と暗い場所があり、敵の不意打ちに気を付けないと。
「フランベルク装備しとくか‥」
扱いに気を付けないと自分や2人も斬ってしまいそうなので、いつもは敵が出てから取り出すが流石に今装備する。敵のLvも上がって来たので、そろそろ常に持ってないとヤバそうだ。
チチチッ、と何かの鳴き声が聞こえて来る。暗がりで此方の様子を窺って居るだけの様で、全く声の主の姿が見えない。是非とも暗がりの主にはそのまま俺等の事を気にしないで頂きたい。
まぁ一度姿を見ないとステータスを確認出来ない、と気付けた。何度目か分からない大きめの部屋に入り、溜め息を吐く。
「はぁ、まるで蟻の巣状だな。飽きが来ない様に作りました!ならダンジョン製作者に全力でクレームを入れたい」
いつ襲われるか分からない状況に、俺の大して無い神経がゴリゴリ磨り減ってる気が‥。立って居ても仕方無いと部屋から通路へ歩き、暫く経つとまた同じ様な部屋が姿を現す。
「‥‥んー‥、怪しい」
松明の数が尋常じゃなく、影が無い程に明るい。ゲームだったら、こう言うのって罠かイベントだよな。俺は堅実に生きたい、通路戻って他の道を行く方が得策か?
うんうん悩みながら唸って居ると、くいくいズボンの裾を引っ張られる。アクアに視線を向ければ、触手を通路側へ伸ばす。赤く光る無数の目が此方に向けられ、俺は引き返せない事を悟った。
「‥‥‥獲物か。俺等に手を出さなかったのは、此処に引き込みたかったからか。もしかして‥」
早く入れ、と言わんばかりに暗がりの主達はにじり寄って来る。出入り口があるから、此方と彼方で入って来るんだろうか?此処に来て多数戦を余り経験して居ない俺には、荷が重い。
アクアと青月を拾い、帰還と呟くもエラーだと機械音が返答。この魔物達はBOSSに見えないが、無駄なサービス精神旺盛になって来てないか?
「壁を背にすれば戦いが楽になる筈、良しっ」
壁を背にする、と言う事は逃げる選択肢を減らすと言う事。だけど全方向に気を配って戦って居たら命が幾つあっても足りない。壁伝いに真ん中辺り、出入り口が両方見える場所に陣取る。
「‥‥鼠、ね。ステータス確認」
【簡易ステータス】
【種族】鼠(小玉鼠)
【レベル】Lv9〜13
【取得経験pt】10〜17pt
【装備】なし
【スキル】夜目、貪欲、牙、爪
《外観はその名の通りハツカネズミ、またはヤマネに似た獣。体型は球体に近く、大食漢。可愛らしい外見に惑わされると骨まで貪り食われる事になる》
雪崩れ込む様に部屋へ入って来た姿を見れば、デカイ鼠。目視で30匹程居り、大きさは俺の膝程度。一番Lvが高いのは、一番体長が大きいので良いのか?因みに大きさは俺の腰辺り、そこまで行くと可愛くは無いな。
アクアはアタッカーとして頑張って貰い、小玉鼠は飛べないし青月には空から牽制をして貰おう。俺は飛び出して来る敵をフランベルクの性能で‥、全く持って情けないぜ!
「っ、数が多いな。突くより薙ぎ払うか‥、な!」
アクアは触手を出せるだけ出し、薙ぎ払ったり突き刺したり忙しそうだ。俺は突く体勢から払いの構えを取り、魔物を薙ぐ。
突いた方が相手にダメージを負わせる事が出来るが、1対1になるから俺には危ないと思う。青月が空から牽制し、にじり寄る魔物を止めたり飛び出す魔物を尾剣で吹き飛ばしたり。
じり貧ではあるけど、魔物の攻撃がワンパターンなのでこのままなら無事に帰れるかな。
「痛、っ!たく‥、後半分」
不意に魔物が視角外から飛び出し、対応出来ずに爪で引っ掻かれる。内心舌打ちをしたい気分に駆られるも、直ぐ様斬り上げ倒す。
引っ掻かれた腕の傷は意外に浅く、じくじくと痛むが然程出血して居ないので大丈夫そうだ。だが、その血に興奮した様子の魔物が雄叫びを上げる。なけなしの理性が吹っ飛んだか。
「汗が目に入る‥」
攻撃し引っ込む波状攻撃をして居たが、その作戦は崩れ我先に突っ込む、と言う短絡的な行動に変わってしまう。暇を見てグィッと額を拭い、フランベルクの柄を握り直す。
魔物の数が減り出し、余裕が出て来たのか稀にアクアの触手が敵を弾いてくれる。青月も上から降り俺のサポートに。
「アクア青月、俺のサポートはもう良い!あのデカイのを頼むっ」
少し経ち、後5匹になった所で2人へ叫ぶ。何か小慣れてきたし、少数なら俺でも捌けそうだ。
牙と爪に気を付けて居れば理性を無くした攻撃の仕方だ、少しかすり傷は増えたが危なげ無く倒す。やっぱり経験を積むと慣れて来た気がする。まぁ、命懸かってるから当たり前ではあるけど‥。
アクアと青月の方も止めを刺して居る所の様で、最後の魔物が霧散する。無事で良かったと同時に、上階層へ行けば行く程こんな思いをする事になるのか、と小さく溜め息を吐く。
俺はその場に座り込み、アクアと青月と先ず勝利を祝う。膝の上に乗って来たり、擦り寄って来たり、甘えられて悪い気はしない。
「何か辺りに散らばってるけど、先ずはー‥」
魔物の肉、何かキラキラ輝く石等が辺りに散らばってるが気にせず指輪を弄る。またしても戦闘で全く気付かなかった【お知らせnew】から見てみよう。
【お知らせnew】
《スキル斬撃がLv2に上がりました。【眷族】アクアがLv9になりました【眷族】アクアのスキル向上心がLv3に上がりました。【眷族】青月がLv6になりました。【眷族】シオがLv2になりました》
泉の効果だろうが、地味にシオのLvが上がってる。簡易ステータスを見るのは「ホーム」に帰ってからにするか、散らばってる戦利品拾って帰ろうかな。
魔物の肉が16個、小玉鼠の皮が7枚。透明度が高く綺麗な石が1個、俺の拳程の大きさをして居る。アクアの触手にも手伝って貰い、指輪【収納】へ納めて行く。
指輪機能で戦利品を調べると、小玉鼠の皮はホーンラビットの皮みたいな感じ。魔物の肉は分かってるから、綺麗な石の説明を見た途端に俺は吃驚仰天。
【魔核(中)】
《同じ大きさの魔石とは比べ物にならない程の魔力を保有するレアアイテム。魔術師用のアイテム精製、ゴーレムの核として高値で取り引きされて居る》
アクアが持つスキル幸福のお陰何だろうけど、ぶっちゃけこんな階層で手に入れても良い代物何だろうか?魔法が使えない俺には宝の持ち腐れな感じだが、貰える物は有り難く頂こう。
じくり、と腕の傷が痛み出す。本当は魔物の気配が消えたっぽいし、階段を探したり宝箱を探したりしたかった。けど痛みでしかめた顔を見られ、アクアと青月が本気で心配し始めたので素直に帰る。
「今帰るから、帰還!」
【スキル発動】
《スキル帰還が発動されました。ホームに帰還します》
「ホーム」へ帰り、起きて居たシオの相手もそこそこに風呂へ入る。すると、傷が水に染みて悶絶する羽目になった。
風呂が終わり、俺はベットに腰掛け指輪【収納】から薬箱を取り出す。一応は治療しないとな。
「あぁ、押さえといてくれると助かるよアクア」
腕と頬に1ヶ所、足に2ヶ所、かすり傷な場所は絆創膏、腕の傷はきちんと薬を塗ってガーゼを当てて包帯を巻く。包帯止めを探して居ると、アクアが包帯を押さえて手伝ってくれる。
治療が終わると救急箱を【収納】、ベットへ寝転がる。アクアは心配そうに身体を震わせながら俺へと寄り添って来て、そんな健気な姿に笑みが浮かぶ。
「俺のステータスと、見てなかったスキル説明と‥、アクア達はLv上がっただけだから良いか」
【簡易ステータス】
【個体】志津、23歳、♂
【種族】人
【経験pt】1049pt
【スキル】指輪4、打撃2、帰還、駿足、回避、挑発、的確指示、斬撃2
【装備】量販店の服一式、指輪、フランベルク
【眷族】アクア、青月、シオ
【スキル説明】
的確指示=味方に的確な指示を出せる様になる。自身の察知能力、判断能力up
斬撃2=斬撃攻撃に1.2倍の攻撃ボーナスを付与
長子役=長子的から変化。【眷族】で長男の役割を担う者。下の【眷族】が増える度にステータス1%up、知性度up
お、世話焼き度upからステータスupになって居たのか。【眷族】を増やすのは難しいが、地味に嬉しいスキルになった。それにしても、察知や判断能力upと言ってもどれだけ何だろう?
せめてパッシブスキルでありますように。訳の分からない願掛けをし、指輪を弄りパネルを閉じる。アクアを抱き抱え、種を植えた場所へと行く。
「‥もう何も言うまい」
そこにあったのは、今にも咲きそうに蕾が膨らんだ花達。朝は芽が出た、って感じだったのに一体何があったし。3種類とも1輪だけ大きさが3〜5倍程ある。
女王種?魔物とか?まぁ、直ぐに考えても仕方が無いと気付くので止めたけど。ちょっとばかりビクビクしながら花に水をあげた。
「疲れてるんだけど、余り眠たくはないな‥」
アクアを泉に入らせ、俺はベッドに戻る。シオの寛ぎ場には3人が居り、俺は仲睦まじさに頬が緩みっぱなしだ。
ゴロゴロゴロゴロ、寝返りを打つも俺は寝付けずに居た。そう言う時こそ指輪から情報を引き出さなくては、と指輪を弄りタッチパネルを開く。
寝落ちする迄粘ったが、これと言った収穫らしい収穫は無く、俺は肩をガックリと落とすのだった。
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