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4話、森に落とし物はデフォ?


結果としてはやり直し。濡れた方眼紙のマスを塗った部分は滲み、乾くとごわごわして使えた物じゃ無い。出会ったウォーターフロッグを根絶やしにしよう、そんな事を3人で誓い合った。



「ネタ切れか?」



幽暗のロートス根っこ付きを泉に置き、ドライヤー(1pt)を用い濡れた長靴を乾かし、数着に増えたけど濡れた服は乾燥機付き洗濯機(2pt)に突っ込んで就寝。次の日無事に八階層目のマッピングを終わらせ、九階層目へ。


九階層は床が通常通りなので俺は内心ホッとする。スニーカーに履き替えてマッピングを始めるんだが、3度目の折り返し地点でおかしな事に気付く。


真っ直ぐ進み、突き当たりに着くと曲がり、また真っ直ぐ進みを繰り返して居る。これじゃあ、ただ歩かせてるだけ。敵もまた出て来ないし、一体どうなってるんだ?



「俺は楽で良いけど‥」



如何に慣れようと魔物と戦うのは怖いし、宝箱からはガラクタみたいな物しか出ないし。マッピングを止め俺達はひたすら歩き続け、体感的には長い時間を使ったと思った頃、次の階層へ上がる階段が姿を現す。


心理戦、だったりして?そうだったとしても、俺には上の階を目指すしか無いけどな。



「‥‥‥」



俺達3人は迷って居る。詳しく言うなら俺だけな訳だけど、理由は視線の先。五階層目にボスが居るなら、十回層目にもボスが居ると考えても不思議じゃない。似た様な造り、俺は警戒をして居た。


1つ違いを挙げるなら中央に台座の様な物があり、何か薄っぺらな物が置かれて居る気がする。アクアと青月は大人しく、俺の判断を待って居る様子。



「男なら気合い!」



自らを鼓舞する様に叫び、台座がある場所へアクアと青月を伴い歩いて行く。台座の上には羊皮紙みたいなのが置いてあり、何故か俺にも読める日本語で書いてある。


何々‥、《こちらはこの様な場所まで来れた貴方にプレゼントさせて頂く為の契約書です。プレゼント内容は以下の3つ。1、経験pt半額での「ホーム」移転。2、持ち物を入れて頂く事により合成する錬成の泉。3、幻の宝と呼ばれる不死鳥の血肉。尚、内容はランダムで選ばれましたので次に潜る時も同じとは限りません》



「‥‥何だこりゃ」



訳分からん。ボスが居なかった事にホッとすれば良いのか、こいつは悩むな。まぁ不死鳥の血肉は即決で却下だけど。経験ptも貯まってるし、錬成の泉?が良いか。


直ぐ様台座と手に持った契約書は霧散、変わりに足元には泉が出現する。それは真っ白な美しい石で縁取りされ、高さは無いのに覗き込んでも水底が見えないと言う不思議な仕様だ。



「投げ入れれば良いのか?【収納】に結構要らない物が‥、あ、武器作れるかな?」



指輪の【収納】一覧を眺めながら1人呟く。不意に俺は良い事思い付いた!とばかりに【収納】からフランベルクの柄、硝子の瓶、六方晶、ベルトに挟んである宿り木の棒を泉へと投げ入れる。


失敗したらどうする?って考えはその時の俺に無く、鼻唄混じり。泉の水面上にパネルが浮かび上がり、宜しいですか?YES/NOがあったので勿論YESと了承。


すると直ぐに泉が輝きを放ち、俺は目を細める。輝きが治まったそこには泉は無く、変わりに漸くまともな武器を手に入れた事を悟る。波刃型レイピア、元になって居るのはフランベルクの柄らしい。



【刺突剣フランベルク・ドレス】

《波刃型レイピア、刺突剣フランベルクに装飾剣の機能が備わった。全長70cm、重量0.4kg。六方晶を使った事により最硬、硝子を使った事により最薄の刃。突いても斬っても盾としても優秀。攻撃力+300、防御力+200。小精霊の力が宿って居る》



幽暗のロートスって魔力を帯びた水と薄暗い場所があれば、菌みたいに根っこ伸ばすんだぜ!その点を踏まえても「ホーム」は余り電気付けないし、1日一株から2〜3個の花を摘み取れるんだぜ!



「‥‥‥駄目だ」



現実逃避してみたが、剣は硝子の刃と装飾がキラキラ煌めいて存在感を主張する。いや、逆に考えるんだ俺!こんな凄い剣どうすんの?では無く、こんな凄い剣作っちゃったラッキーと考えるんだ。


‥‥あ、気分浮上してきた。


カチャリ、と小さな音を立ててフランベルクを持ち上げる。剣は驚く程に軽く刀身は透け、素材に硝子を使ったからだと納得。んで六方晶を使ったから、脆く鋭いグラスソードが硬く丈夫になったと。波刃型、硝子剣の良い所取りとは‥、恐ろしい子!



「まぁ、強くなったから良しとするか‥」



随分放って置いたな、アクアと青月に視線を向ければ2人で戯れて居た。俺も混ざりたいです先生!


そんな事を考えながらフランベルクを指輪に【収納】、タッチパネルを開き【経験pt⇔交換】の項目から「ホーム」移転を探す。十回層目だし、五階層から来るのはしんどいし「ホーム」を移転させたいと思う。


経験ptは2000pt近く貯まって居たので、何の問題も無く移転完了。


明かりは豆電球より明るい程度に設定。風呂から上がった俺はベッドに寝転がり、泉に浮かぶアクアと優雅に泳ぐ青月を眺めながら一息吐く。最近短時間浸かるだけで俺の後を付いて回るから、言い含めは重労働だったよ。



「明日は十一階層か‥」



俺の感覚では、この迷宮ダンジョンに来て1年以上経って居るかの様にさえ思える。日付の感覚は無いが、きっとまだ2〜3ヶ月しか経って無い、と思う。


どんどん魔物は強くなって俺の手に負えなくなるだろうし、迷宮ダンジョンが何階層あるのかも分からないし、帰れるかも知れないって事は‥。


陰鬱な考えを振り払うかの様に俺は目を瞑る。明日も明日でダンジョン探索に精を出さないと、だからな。



「ふ、ふぁぁぁー‥」



良く寝ても眠いとはこの事か。毎日の様に探索してたから、近々2〜3日ダラダラと休んでも良いだろう。アクアのプニプニ枕に顔を埋めて、青月のレースの様に綺麗な鰭を眺める。うん、良いな。


長い長い階段を上がり終わり俺はまたマッピング出来ないのか、と眉をひそめる。膝丈程の雑草に3〜5メートル程度の樹木が乱雑に立って居て、イメージは雑木林。


雑木林を突き進んで居ると蜘蛛の巣に掛かるし、スパイダーって穏健な魔物(Lv1)が頭に落ちて来るし、少しばかり運が無い気が‥。スパイダーは縫いぐるみの様で可愛かったけど。



「あれ?アクアさぁーん?」



青月は俺の顔周りを飛んで居るから良く視界に入るが、アクアの事を考えて居なかった。膝丈の草ならアクアは隠れてしまうから、こりゃはぐれちゃったか?


手メガホンをしてアクアを呼びながら探す、青月すら居なくなると情けないけど俺が危ないので一緒に探して貰う。何か凄い勢いで青月に頬擦りされた、可愛かったから良し!



「ん?何かガサガサしてる?」



暫く歩いて居ると、ガサガサ目前の茂みが動く。アクアだったら触手伸ばして知らせてくれるよな?と思いながら万が一の為フランベルクを指輪【収納】から取り出して装備。


青月は俺を後方支援して貰う為、少し離れて着いて来て貰う。スパイダーの魔物だけじゃ無さそうだしな、生唾を呑み意を決して茂みの中へ入る。



「‥‥‥んん?」



茂みから飛び出すと、そこには探してたアクアがプルプル震えて居た。傍らには衰弱している小さなアザラシ‥‥、ってアザラシ!


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