白河マンション
3 38F 最上階
何事もない1日が終り 19時を過ぎたので窓口を閉めた そして管理人室裏の専用のエレベーターに乗って38Fの部屋に帰った。
エレベーターが最上階に止まっても扉は開かない、ここではカードキーを差し込むと開くようになっている
そしてエレベーターを出ると 見るからに丈夫そうなチーク材のドアには カードキーと シリンダーキーの順にドアロックをオープンにする
そして室内に人が居る時には 中からもアナログ式のロックがかかるようになっている
ここまでセキュリティが厳重な理由は 前のオーナーが娘夫婦や孫にかける愛情の深さの現われだと このドアの前に立つたびに想う。
しかしこの部屋で 親子が3人で暮らしたのは数ヶ月 養子の旦那はすぐに追い出されたということだが・・・
それらの鍵を開けて「ライアン 俺だ」とドアホンに声をかけて 中からロックを開けてもらってやっと部屋に入った。
入ってすぐには 広いリビングになっていて 中央に18人掛けのL字のソファが収まり
部屋の左サイドが カウンターバーとキッチンスペースになっていて 全体で30人~50人くらいのホームパーティが出来るホールになっている
そして 私の趣味ではないが、夜には お台場から東京タワー 赤坂や新宿の夜景が とても綺麗に見渡せる。
キッチンで何か作っていたライアンが「何か飲むか?」 「いやいい それより今朝の電話。。」
「はい、大坂の件の藤川が・・・」 「うん 生後3ヶ月の自分の子供を激しく揺さぶって死亡させた奴だな・・・確か・・・りゅうかちゃん 顔や頭 胸にも数十箇所の打撲、、 だったな」 「そうだ」 「でっ?」
「昨日午後9時ごろに 頭部を10分くらい揺すると意識が混濁してきた そのまま常温で放置しておいたら 今朝4時に心肺停止を確認した」
「そうか じゃあ逆算すれば昨日1日 藤川は殺したりゅうかちゃんの苦しさを体感した訳だ」 「ああ トータルで7日 昨日の昼頃に 藤川に確認したところ 娘の名前をよびながら咽び泣いていたから確かだと想うよ 」
「よし では大坂のりゅうかちゃんの件は終了ということで、母親の方は脅しだけで許す事にしよう」 「そうだな じゃあさっそくそちらも手配するよ」 「頼む・・」
着ていた作業着を脱ぎかけて 「あっそうだ もう1つの大坂の件、、翼くんのだ あれは今どうしてる?」
「森川だよ あれはまだ3日目だから 初日にたばこの火を顔含めて10数箇所 皮下出血する程の打撲を1日6回 10分ほど続けてるよ あっ 食事はとりあえず1日パン1枚と水だけにしておいた」
「そか まっそんなもんだろう ちと見られるか?」
「ああ 3番の部屋だ 俺も行くからちょっと待っててくれ 」
リビングの他には 個室が5部屋あり 各部屋に簡単なキッツチンとバストイレが付いている。
そのうちの大き目の2部屋をライアンが使用し 私はリビングのソファで寝るが
普段は1階の管理人室で寝る。
そのほうがなんだか安心できて 人間的だと想っている。
「開けるぞ」ライアンがドアを開けると 中から悲しげなうめき声が聞こえた。




