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2011 デジャブ  作者: 森本 義久
4/17

白河マンション

3  38F 最上階 

何事もない1日が終り 19時を過ぎたので窓口を閉めた そして管理人室裏の専用のエレベーターに乗って38Fの部屋に帰った。

エレベーターが最上階に止まっても扉は開かない、ここではカードキーを差し込むと開くようになっている

そしてエレベーターを出ると 見るからに丈夫そうなチーク材のドアには カードキーと シリンダーキーの順にドアロックをオープンにする

そして室内に人が居る時には 中からもアナログ式のロックがかかるようになっている


ここまでセキュリティが厳重な理由は 前のオーナーが娘夫婦や孫にかける愛情の深さの現われだと このドアの前に立つたびに想う。

しかしこの部屋で 親子が3人で暮らしたのは数ヶ月 養子の旦那はすぐに追い出されたということだが・・・


それらの鍵を開けて「ライアン 俺だ」とドアホンに声をかけて 中からロックを開けてもらってやっと部屋に入った。

入ってすぐには 広いリビングになっていて 中央に18人掛けのL字のソファが収まり

部屋の左サイドが カウンターバーとキッチンスペースになっていて 全体で30人~50人くらいのホームパーティが出来るホールになっている

そして 私の趣味ではないが、夜には お台場から東京タワー 赤坂や新宿の夜景が とても綺麗に見渡せる。



キッチンで何か作っていたライアンが「何か飲むか?」 「いやいい  それより今朝の電話。。」 

「はい、大坂の件の藤川が・・・」  「うん 生後3ヶ月の自分の子供を激しく揺さぶって死亡させた奴だな・・・確か・・・りゅうかちゃん 顔や頭 胸にも数十箇所の打撲、、 だったな」  「そうだ」   「でっ?」

「昨日午後9時ごろに 頭部を10分くらい揺すると意識が混濁してきた そのまま常温で放置しておいたら  今朝4時に心肺停止を確認した」

「そうか じゃあ逆算すれば昨日1日 藤川は殺したりゅうかちゃんの苦しさを体感した訳だ」 「ああ トータルで7日 昨日の昼頃に 藤川に確認したところ 娘の名前をよびながら咽び泣いていたから確かだと想うよ 」  

「よし では大坂のりゅうかちゃんの件は終了ということで、母親の方は脅しだけで許す事にしよう」   「そうだな じゃあさっそくそちらも手配するよ」  「頼む・・」





着ていた作業着を脱ぎかけて 「あっそうだ もう1つの大坂の件、、翼くんのだ あれは今どうしてる?」 

「森川だよ  あれはまだ3日目だから 初日にたばこの火を顔含めて10数箇所 皮下出血する程の打撲を1日6回 10分ほど続けてるよ    あっ 食事はとりあえず1日パン1枚と水だけにしておいた」  

「そか  まっそんなもんだろう  ちと見られるか?」

「ああ 3番の部屋だ   俺も行くからちょっと待っててくれ 」


リビングの他には 個室が5部屋あり 各部屋に簡単なキッツチンとバストイレが付いている。

そのうちの大き目の2部屋をライアンが使用し 私はリビングのソファで寝るが

普段は1階の管理人室で寝る。

そのほうがなんだか安心できて 人間的だと想っている。


「開けるぞ」ライアンがドアを開けると 中から悲しげなうめき声が聞こえた。








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