高知県 中村高志 ホームレス
15 高知 中村高志 ホームレス
2月16日 あれから怖くてこのマンションには近づかないようにしていたが 今日の昼から降り始めた雪が本格的になって とてもじゃないがダンボールハウスでは凍え死んでしまうと想い ありったけの毛布をかついで白河マンションの地下駐車場に避難してきた。
1番奥のベンツの後ろに回ると 壁と車との間が向こうまで見通せて 乗り降りする人が来てもちょうど死角になるいい場所に 寝床を決めた。。
深夜 うとうとしていると車が帰ってきた
降りてきた人は 1階に上がる階段ともエレベーターとも違う所にあるドアをガチャガチャやっていたが 諦めたように非常階段を上がって行った
しばらくすると ガシャっともう一人の人間が車から降りた音がしたかと想うと 壁と車の隙間をコツコツとこっちに歩いて近づいてくる
マズイ 逃げなきゃ と想っていると 10m向こうで座ったかと想うと何かしている ああ おしっこだ と思い息を殺してうずくまっていると 「あっ」と言ってコンクリートに転んだ がすぐに立ち上がって向こうへ歩いていった。
ほっとしたところに さっき開かなかったマンションのドアが中から開いて 「来い」 と女を呼ぶと 女は何事も無かったように車のドアを閉めて男の後に続いてドアに消えた。。
ふと見ると さっき女がつまづいたところに何かが落ちている 静まり返った地下駐車場を確かめて できるだけ音を立てないように近づいて拾ってみると 案の定女もんの財布だった
(そうだ もしかして気が付いて探しに来たら大変だから 朝まで待ってまだあればもらおう) と そのままにして またもとの ベンツのまだ奥に横になった。。
寝たのか寝てないのか なんとか2011年2月の記録的大雪から一晩を明かすと 財布はまだそのままそこにあった。。 助かった・・ 中身の現金だけを抜いてポケットにねじ込んだ そしてカードと保険証を見ると 千葉県・・・・・市 下田早苗 1983・3・20 とあった それを財布に戻して
もしかして女だけ玄関から出るかも 保険証がないと困るだろう と 公園に戻る前に まだ明けてない早朝の1F玄関前に財布をおいた。。
うとうと 起きてるのか寝てるのかもよくわからない
私が桜になった夢をみた 夢? 今も夢かも? ママ ママ
寒い 寂しい 寒い さみしい
喉が渇いた ママ ママ ママ ゴメンナサイ
エ~~~ン エ~~~ン 声が? 楓の声 かえでは横でうつぶせたまま
もう動かないのに? 誰の鳴き声?
エ~~~ンエ~~~ン か細い声 かわいそうな声 寂しいこえ エ~~~ン
気が付くと 自分の口から 声が出ている エ~~~~ン
桜子? 私? 私はさなえ しもだ さなえ
さくらこ かえで ごめんね ままごめんね さくらこ かえで・・・・
暗くなった まっくらになった もう なにもみえない
さみしく さみしくなった・・・・・・
2011 3 5日
「終ったようだ」 「ああ そうか」
「ライアン もうやめよう これで 」 「ああ わかってるよ」
「後は 」 「ああ 俺がちゃんと供養しとくよ」 「そうしてくれ」
クリーニング用キャリーを押して部屋に入ると酷い匂いだ
ベッドカバーにくるまって床にまるまって寝ている下田早苗は まるで胎児のようだ
28年の短い命だったが しかたない 1歳と3歳の命を奪ってしまったんだから
命には 命をもって償わなければ 霊魂や恨みがあるなら いつでも俺んとこに来てくれ いつでもこの命くれてやるからな
真っ白なシーツに下田早苗を綺麗に包んでキャリーに入れた
「じゃ 行ってくる」とヨハンに声をかけて エレベーターでB2 まで降りた
地下2階には 元々あった焼却炉を ダイオキシンがほとんど出ないといわれる1000度以上の高機能焼却炉に変えた
それは ビンやアルミなどの資源ごみ意外の物なら なんでも燃やしてしまうというすぐれものだ。
例えば もし人間を焼却しようとしたら 数時間で跡形もなく消えてしまう
焼却灰を科学的に調べても 燐と少量のたんぱく質が検出されるだけで もはや人間か豚の肉かさえ判別できない。。
その中へ下田早苗を入れた後 ふと思いついてクリーニングキャリーも放り込んだ
丈夫なドアを閉めて ロックを確かめて点火スイッチを押すと ゴーという音が地鳴りのように響いてきた。
もう1度全てをチェックし B2の鍵を閉めて エレベーターに乗り込んだ
平田警部
白河交番で話しを聞いて さっき思いついた想像を反復ししてみた。
ライアンが6年前の歌舞伎町でのチャイニーズマフィアの抗争に関わっていたのは確かだろう しかも相手の数人を殺したのはライアン本人だと確信している。
そしてその抗争を収め 新宿での外国グループを解散させたのもライアンだという
6000万の金の出所は 高杉英樹と田中不動産の田中剛三のラインだろう
「ライアン フィリピンマフィアと 看護士の高杉 田中不動産がどう言う形で結びついたのか・・」
駅に向かって歩いていたが ふと気が付くと白河マンションの前だった
そうか 清澄白河駅の目の前だもんな 立ち止まって38Fの建物を見上げた。。
「もう1度寄ってみるか」気を奮い立たせるために 声に出して言ってみてから それはとてもいいアイデアのような気がした。
歩道の境からすぐに白河マンションの前庭になっていて レンガを敷き詰めた広い歩道と 芝生に植えられた白樺のような木のコントラストがヨーロッパの公園のようになっていて 清洲橋通りの騒音を一瞬忘れさせてくれる。
ホテルのような玄関で 管理人用のインタフォンを押した
「は~い」「??」 さっきのライアンではない 高杉か? 「すみません 警察のものですが 」「はい なんでしょう?」「ちょっと聞きたいことがありので 開けてくれませんか?」と カメラに警察手帳をかざすと 少し間があってから 「はい どうぞ 中にお入りください」ガシャ っと重い音がして正面入り口の自動ドアが開いた。
ライアンと話したときは横のドア越しだったので 一瞬たじろいだが これはいい機会だと想い 中にはいった。
「どうぞ」 男が椅子を進める 「 失礼します」 質のいい白い皮のソファに腰掛けた
若い・・・見た目30歳くらいにしか見えない 小柄だが贅肉のない硬い身体がうかがえる それに一瞬だが 目が合ったときの怖い目? 深い目? けしていきがってるわけではないのだが 普通の人間なら10秒みつめられる目ではない。 これが高杉英樹か・・・
「お茶でいいですか?」 「いや かまわなでください」 お盆に乗せてお茶を持ってきた 「どうぞ」と言って 高杉もむかいに座った そして 無言でこっちを見る 人がみたら にらみ合いでもしてるように見えるであろう時間が過ぎた
「でっ?」 低い さっきまでの業務用の声とは明らかに違う 低い声
自然に座っているだけの高杉 しかし何かが違う 空気に張りがあるのだ ああ 禅だ こいつは全ての覚悟が出来ている と ふと感じた 間違いなく
・・・・・・・・・・・・・・・・・
私は黙った 黙ったまま 高すぎを見ていた 無心の目で
すると「ライアンと知り合いなんですね?」 「ああ 昔な」
「わかりましたか?」・・・・・ドキっとした 「何を?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・「いえ なんでもありません」
切り替えたのが解った 業務用に・・・
「でっ 今日は何の用でしょか?」 「いや もういい 」「そうですか」
「今日はいいが 近いうちまたお邪魔していいかな?」 「いつでもどうぞ」
と口元だけで微笑んだ。 今日は負けた と 心の中で舌打ちをした
外に出た もう夕暮れが近づいていて 自転車に子どもを乗せた2人乗りのお母さんや 買い物帰りの主婦が 忙しそうに歩道を行違っていく。
高杉英樹 ライアン ともに普通の人間ではない 今はこの人々に同化しているつもりだろが 必ず正体をあばいてみせる
そのとき 何か気配がして 回りを見回したときに マンショ裏の花壇の植え込みの影で サッと人影が消えた ン?
刑事の悪い癖か? 植え込みの先に小走りして裏を見ると 河沿いの公園を走る男がいた
本能で追いかけた 「おい ちょっと」 振り返った男は 驚いたように目を見開いて本格的に逃げ出した。
「おい まて~」 男の走りは遅い すぐに追いついて肩を掴んで「止まってくれ おい 」 男は諦めたように素直に従った。
警察手帳を出して「どうして逃げた?」 というと 男はハアハアいいながら 黙っている。。「ちょっと座ろうか ここへ 」と 公園のベンチを見つけて座らせた。
沈黙 下を向いて顔を隠すようにうつむいたままだ
「マンションを覗いてただろう ン? お前 若いな?」見ると 汚れてはいるが顔はまだ20代のようだ
「ホームレスか」「はい」初めて男が返事をした 「ああ 日本語が話せてよかったよ
日本人だよな?」というと 「はい」
「もう1度聞く 何故逃げた? なぜ マンションを覗いてた?」
「逃げてません 覗いてもいません・・」 「そうか 身分を証明できるもの あるか?」 というと急に震えだした。。
どうせ最近多い 就職難で食い詰めてアパートも追い出された にわかホームレスだろう
俺は区役所の福祉課じゃないし 余計なお世話はしたくない という話しをしてから
「ところで 先週の16日 木曜日の夜から次の日にかけてなんだが この女を見かけなかったか? このマンションのあたりで?」 というと 写真を見た男は あきらかに動揺した 「見たのか?」「この人がどうしたんですか?」「いや この辺にきてから居なくなったんだ」「行方不明って事ですか?」「いや まだ そこまではわからないが 何か知ってるのか?」 「・・・・いえ 知りません・・」
いや こいつは何か知ってる と脅しをかけてみた
「そうか じゃ 今パトカー呼ぶから一緒に最寄の 深川警察まで行ってくれるか? 住所とか名前とか いろいろ調べないといけないから」
「いえ いえ 」と脅えだした 「じゃあ 知ってる事をちゃんと 話してくれるよな?」「はい 見ました・・」
聞いていくと 16日の深夜 白河マンションの管理人の男と下田早苗が 車で帰ってきてエレベーターに乗って上階に行ったということだ 「なぜ この女だとわかる?」
と聞くと その日は都内も大雪で あまりの寒さに白河マンションの地下駐車場で寝てたら 車に残された女が 自分に気がつかづに近寄ってきて オシッコをして行った
近づいてくる時に ライトに照らされた女の顔がよく見えた ということだった。。
アッ っと想った 「財布を拾ったのはお前か?」 男はビックリした様子で「はははは はい」と言った
そして地下で拾った財布を 現金を抜いて 保険証やカードが入っていたので女が困ると想い 1階のロビー入り口に置いて逃げたと言うと 男は泣き出した。。
「いいよいいよ 俺は置き引きなんか興味ないから」と言っても 男の興奮は冷めず
泣きながらこの日 もっとも重要な事を 話しはじめた。。
「僕は・・」からはじまって この男が2年前の2009年 高知県で事件を起こし 執行猶予中に逃亡した事を話しはじめたのだ。。
中村高志(23)2~6歳虐待 3幼児にろう垂らす 母親と交際男逮捕
通報生き早期保護 住民の耳に怒声と悲鳴
初犯だったので 懲役1年 執行猶予2年の判決を受けた
そして 保釈後に馬路村の祖母の家で生活していたところ 何者かに拉致されて山の中で背中に大火傷をおわされた事 それは虐待の仕返しだと男が言ったこと そして驚いた事に その男が白河マンションの管理人 高杉英樹だということ
「ほんとうか?」 つい怒鳴ってしまったが 怯えた中村高志は「はい 目隠しされてたけど 声は忘れません 間違いなくここの管理人さんです」という
「僕はどうなりますか また刑務所に行かされるのですか?」と泣きじゃくっているが
それどころじゃない 「大丈夫だ 高知にも帰れるし 刑務所にも入らなくてもいい」
とさとし 「俺がちゃんとしてやるから しばらくは今までどうりここで生活していろ これからは毎日俺の携帯に連絡を入れるように 絶対に逃げるなよ 逃げたら警視庁全力で捕まえるからな 」と念を押して 携帯番号を書いた紙と当座の金を与えて別れた。
一晩寝て 改めて考えてみると また新たな方向性が見えてきた
久しぶりに朝から新宿署4Fの刑事課に出て これも久しぶりのパソコンの前であれこれ考えている 警視庁のネットワークに繋ごうとするのだが パスワード入力画面から1歩も進まず ため息ばかりついている。
このところ新宿署では「暴力団追放 三ない運動」プラス1 のキャンペーンをしていて
この部屋のほとんどの男達が「クリーンな街 新宿」 とかで忙しく働いている
「先輩 何やってんですか? めずらしい」と山田が声をかけてきた
「おおちょうどいよかった 山田 ちょっと調べてくれ」「また 何ですか? おやっさんは後 1週間ちょいで退職なんですから 余計な事件引っ張り出さないでくださいよ ただでさえ忙しいんですから」「ああ わかってる あのな・・・」
「この7年間 2005年 田中レナちゃんの事件の犯人 小森連の出所後からでいいから 虐待事件で有罪になった者の中で 釈放または出所後 所在が確認できない者 言いかえれば行方不明の者のリストを作ってほしい とりあえず関東だが 出来れば全国で 出きるだけはやく頼む」
「おやじさん~~マジですか? これから?」「ああ パソコンができないんだからしょうがないだろ?」「はいはい わかりました でも 最近何してるんですか? 今月の16日 のおやじさんの退職祝いの店 もう予約入れてるんですから マジ面倒はやめてくださいよ 今誰か捕まえても起訴するまでには おやじさんは刑事じゃなくなってんですから」「ああ わかってるって 余計な手間は取らせないよ もうそれだけだ 頼む」
「はい すぐやりますから コーヒーでも飲んでゆっくり老後の事でも考えてください コピーは1部でいいんですよね?」「ああ じゃ」
そして1時間後 戻ってみると机の上にコピー用紙が数枚のっていた
しかし 予想以上に虐待事件の数が多く 想ったようなデーターにはならないようだ
「これじゃあ ダメだな・・」そこに山田警部が来て「それでいいですか?」
「ああ ありがとう」「しかしほんとですね この6年間で東京だけでも虐待事件の犯人が7人も行方不明 ついでに調べてみましたがそれ以前には不明者は居ないんですね~」
「えっ!ほんとうか?」 「??はい おやっさん そこ調べてたんじゃないんですか?」
コピーをよく読むと レナちゃん事件の犯人 小森連 高知の3幼児ろうそく虐待の 中村 高志 そして今回の2幼児放置餓死事件の 下田早苗も 不明者にちゃんと含まれている とすると そのほかの不明者も高杉やライアンが関わっている可能性があると言うことか???
「もう一つ気になったんですが」「 ?? なんだ?」
「試しにその 小森連や下田早苗をソーシャルネットワークで検索してみたんですよ」
「なんだそのソーシャルってのは?」「えっとツイッターやフェイスブック ブログなどですね」「なんだその ツイッターとかっていうのは?」「まま いいですここから聞いてください」「ああ」
「小森連や下田早苗についての書き込みの中に ヨハンって言う名前がよく出てくるんですよ みんなの噂なんですが 小森連は歌舞伎町でヨハンがワゴンで拉致したって」
「ほう」 「下田早苗の件でも ヨハンの仲間が やはり歌舞伎町で白いワゴンで連れ去ったとか」「ほう 目撃者がいるのか?」「いや ネットですから 目撃者とかは・・どうかな?」「見たって書いてるんじゃないのか?」「いや 書いてるには書いてますけど ネットでは 無数のサイトに書かれたことが さも自分が見たように書く奴も多くて・・」「じゃ その目撃者を見つければいいだけじゃないのか?」「それがですね・・なんていうか はっきり言って無理です」「なんで?」「とにかく ネット上での最初に書いた人を探し出すのは 砂漠で1個の砂を見わけるようなもんなんです」
「そうか・・・それでっ?」「ああ ヨハンに殺されるって」「誰が?」「虐待で子どもを殺したり 傷つけたりした犯人は 刑務所を出た後でも拉致されて その子供と同じめにあわされるって」 「ヨハンにか?」 「他に 誰かいますか?」「ばか」
「とにかくネット上での噂ですし 都市伝説みたいなものかもしれないですけど 確かに2005年以後 そうしていなくなった人間がいることは確かです」
「そうだな・・」頭が痛くなってきた
近いうちにもう1度 高杉英樹とライアンに挨拶にいかないとな
今度は5ぶで話が出来そうだ なんだか 楽しみができた。。




