第二十七羽
最終章、スタート。
朝。
ピピピ……ピピピ……と、俺を起こすには遥かに実力不足な目覚まし時計が鳴り響く。
無論、『朝寝坊マイスター』『低血圧エンペラー』『最悪の寝起き』等の異名を持つ程寝起きが悪い俺は起きれる筈も無く、夢うつつを彷徨うのであった。
ピピピピピピピピピピピピピピピピ! と、目覚まし時計の音が一際大きくなり、俺を起こそうと躍起になるものの、そんなもので起きる俺では無い。
やがて目覚まし時計は自動で止まり、勝ち誇った気分で二度寝しようとしたところ――
――大量のダイナマイトがゴロゴロと天井から落ちてきた。
当然、寝ている俺に回避行動が取れるはずもなく、ダイナマイトは瞬く間に爆発。
続いて部屋のあちこちからマシンガンが生えてきて、一斉掃射。
ベッドと自分の服に穴が開いていくのを感じながら、俺はようやく起き上がった。
次は――マシンガンが引っ込み、バズーカが出てきた。
俺は急いで箪笥から着替えを取り、たいあたりで部屋から出た。
ふー……毎朝毎朝バイオレンスだぜ……。
廊下で着替え、穴が開いた寝巻を部屋の中に放り込んで廊下を歩く。
階段を下りて、リビングへ。
リビングにはすでに我が妹、羽切朱音が居た。
もっさもさに伸びた黒髪を、無理矢理カチューシャで後ろに流した髪型をしていて、今日は白衣にメイド服という奇奇怪怪な格好をしていた。
相変わらず朝の早いやつだ、と思いながら、妹に朝ごはんを注文する。
「ん」
と、妹は黒いグリップに赤いボタンが付いただけの簡素なデザインを持つ『便利スイッチ』というものを取り出し、押した。
ほかほかのトーストと、ベーコンエッグがテーブルに現れた。
しかし、そんな光景も、もう見慣れたものである。
俺は至極冷静に席に着くと、トーストを齧りだした。
「羽切勇大は?」
「いつも通りトレーニングです」
「母さんは?」
「まだ寝てます」
ふーん、そっか。
それだけ話して、あとは黙々と朝ごはんを食べる。
妹は基本的に口数も表情の変化も少ないのだ。
「ご馳走様」
と言って、席を立つ。
妹が便利スイッチを押した。
食器が自動食器洗い機の中に移動した。
さて、シャワーでも浴びて学校行くかなー。
…………。
……あれ?
まだ、続くの?
あれー? 妹はやったし弟もやった、母さんもやったよな……まさか父さんってわけがないし……。
はて、この物語の主人公は、一体誰なんだろう。




