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羽切家の非日常  作者: ラウス
羽切那美
21/32

第二十一羽

「おー、これが便利スイッチか」


 母さんはまじまじと便利スイッチを見てから、ほい、と妹に返した。


「『全知』でそういうのがあることは知ってたけど、実物を見るとまたすごいもんだな」


 そう言って母さんはくしゃっと笑い、妹の頭を撫でた。


 時刻は6:21分。

 あれから深夜だったこともあり、とりあえず寝て、起きて、現在に至る。


 ちなみに相変わらずの低血圧だった俺を起こしたのは母さんだった。

 文字通り叩き起こされて、もう二度と母さんに起こすのは頼まないと誓った。


「勇大は『仙人候補』三人と相対して勝ったって? すごいじゃん、あと二十年くらい修行したら『仙人』に成れるかもよ」

「へへ、ぜってー成ってやるぜ」


 そう言って、弟は照れ臭そうに鼻を掻いた。


「しんちゃんは……言うまでも無いか」

「しんちゃん言うな」

「だったら何て呼べばいいのさ」

「俺のことを視界にいれるな、話しかけるな、家に帰ってくんな」


 はっきり言おう。

 俺は母さんが嫌いである。


 世間では母さんは何故父さんを選んだのか疑問に思われてるらしいが、俺には全く逆、父さんが母さんを選んだ理由がさっぱりわからん。


 母さんが「このツンデレさんめー、いい加減デレてくれよぅ」とかほざいてる。

 イライラが最高潮である。そもそも折角の休日に何故こんなやつの相手をしなくちゃなんないのか、理解に苦しむ。納得も出来ない。


「はぁ……俺、ちょい遊びに出掛けてくるわ」


 ベアコンと読書中毒でも誘ってカラオケにでも行こうか。

 それと、頼みこんで何日か泊めて貰おう。母さんがどっか行ったら帰るとしよう。


「おいおいおい、折角の久しぶりの家族団欒だぜ? 遊び行くとしても午後からにしろよ、昼飯どっか食いに行こう」

「嫌だ」

「何だ? 反抗期ってやつか? 懐かしいな、アタシにもあったぜ、反抗期」

「アンタの反抗期は半端無く周りに迷惑だったんだろうな……」


 それこそ街一つ壊滅させるくらいには暴れてそうだ。

 いや、街一つで済むのかがそもそも疑問だったか。


「もういいよ、勝手に行くから」


 二階に上がって自分の部屋に入り、財布と携帯を取る。

 そして窓から飛び降り、玄関前に着地。


 靴をサッと取って、そのまま外へ。


 家出だ家出、こうなったら家出してやる。

 そもそも、俺はあの家に不釣り合いなんだ、むしろ、家出は遅すぎたくらいだった。


 とりあえずこのイライラを発散するためにカラオケかボーリングにでも行くか……。







*****






 イライライライラ。

 まさか朝早い所為で娯楽所がどこにも開いてないとは……迂闊だった、暇すぎてしょうがない、というかストレスがマッハでヤバい。


 あー、もうその辺の不良とか見つけてボコボコにしてくっか。……いや、それやったら停学、悪くて退学だ、それは勘弁願いたい。


 うーあー、……そうだ、京都に行こう。

 京都に行って八橋を食って……何泊かして帰ってこよう。


 財布、幾ら入ってたっけ。


「2、4……5000円か、……外泊は無理か」


 いや、適当なヤクザを壊滅させて拠点を奪うとかも有りか……。


「どっちにしろ、まずは京都行くか……」


 あ、でもよく考えたら修学旅行で行ったばっかか。

 うーん……行ったこと無いところ……大阪にでも行こうかなぁ。


「……ん?」


 前方に、見覚えのある人影を発見した。


 角刈りにサングラス、黒いスーツに身を包んだ細身の男。


 銘南東……だったか、偽名らしいが。


「……お」


 向こうもこっちに気付いたらしく、寄って来た。


 コイツはきょぬー派だから、敵なのだが、暇すぎて死にそうだったのだ、しょうがない、今は話し相手になってもらおう。


「よっす、銘南東」

「銘南東……? ……ああ、そういえばそんな感じで名乗ったっけか。まあいいや、よう、羽切長男、いや、橋本太郎って呼んだほうがいいか?」

「橋本太郎で頼む」


 今は、羽切を名乗る気分じゃない。


「さて、折角の再開だ、どっか適当なマクドナルドで談笑と行きたいところだが……生憎と俺は用事があってな、もう行かなきゃなんない」

「なんだ……残念だな」


 折角知り合いに会えたと思ったのにな。

 本当に大阪行くしかないのだろうか。


「あ、そうだ、お前ならいいだろ。……ほれ」

「ん? なんだこれ、名刺?」

「俺の連絡先が書いてある。なんかあったら頼っていいぞ」


 ま、お前には家族がいるから不必要かもしれんがな、と銘南東は朗らかに笑った。


「……いや、ありがとう」

「どういたしまして、それじゃ、俺は行くから」


 バイビー、とだけ言い残して、銘南東は目にも止まらぬ速度で走り去った。


 やっぱ銘南東はかなりの身体能力を有してるようだ。

 羽切勇大からも逃げ切れたらしいし大体予想できてたけど。


 名刺を改めて見てみる。

 『神に最も近い三仙人』カレルイー・シバートン。

 と、書いてあった。


 HAHAHA、何とも外国人っぽい名前だな、そういえばアイツは青い瞳をしていたっけ。それにしても、長い名前だ、何かあだ名を考えなくては……カレールーとかどうだろう。


 ふむふむ、しかし『神に最も近い三仙人』だったのかー。うん。



 ……え。



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