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カンボジァ  作者: 高橋美雪(たかはし はるき)
出発前
2/33

ー002ー卒業単位

大学4年生にもなると、週1に1度しか大学に来ないという人も珍しくない。

私は、教職課程をとっていたから毎日学校に居たけれど、カズは週に1度しか大学に来なかった。だから、一緒に過ごす友達も変わってしまった。

そんな大学4年の冬。久しぶりに大学のロビーで、カズ、沙羅ちゃん、さっちゃん、弥生ちゃん、私がそろい、後は、なっちゃんを待つだけとなっていた。

すると、なっちゃんが何か紙を握りしめて飛び込んできた。文字通り飛び込んできたので、私たちの座っていたソファがずれた。

なっちゃんは、焦った顔で言った。

「私、卒業できない。」

「は!?」5人の声がそろう。

弥生ちゃんと、さっちゃんが詳しく話しを聞こうとし、沙羅ちゃんは様子を見守り、

カズと私は、唇の端が上がってきていた。

なっちゃんが握っていたのは、単位の書かれた用紙だった。

うちの大学は、一般教養で◯単位、専門教養で△単位、合計□単位と3つの項目をクリアしなければならない。

なっちゃんは、どうやら、一般教養で2単位足りず、専門教養を2単位多く取り、合計単位をクリアしていたのだ。

弥生ちゃんと、さっちゃんが、なっちゃんから用紙を取り、2人で計算する。

「足りない。」

弥生ちゃんがつぶやく。

カズと私は、限界に達して笑いころげた。

久しぶりに集まったら、こんな笑える他人の不幸があるなんて。

「今頃言われても遅いじゃん。先月言ってくれたら、良かったのに!」

なっちゃんが叫ぶ。

うちの大学は、授業を4回休むと、それだけで単位がもらえないものも多い。

5回目の授業が行われる週なので、今から授業をとっても、すでに4回休んでることになり、単位はもらえない。

「なんで、ピッタリの単位で卒業しようとするの。」

弥生ちゃんが言う。

「ほら、山口先生の授業は?出席日数関係ないじゃん?」

さっちゃんが提案する。

「去年取った。」

後2単位と、弥生ちゃんと、さっちゃんは必死で考える。

カズと私は笑いが止まらない。

「つぅか、笑うだけなら、どっかいけ。」

なっちゃんは私達に言い放ち、立ち上がり、ロビーに併設されている、事務室の窓口の戸をあけると、1枚の紙を渡され戸を閉められた。


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