ー016ー搭乗時間
セキュリティチェックを通りぬけようとしたら、当然捕まった。
私達の出発1ヶ月前頃から、液体は袋の中に入れる規定が始まったか、始まるかの分かれ目だったのだ。
聞いてはいたが、よく分からないので、何もせず通過しようとしたのだ。
ドロップは何も言われなかったのに。
言われるがままカバンの中を探すが分からぬ。
早口で分からぬよ。
担当がお姉さんだったため、そしてカバンを2つ持っており、貴重品の入ったカバンについては何も言われなかったため、
「すみません、貴重品はこっちに入ってるので、カバンの中を自由に触ってください。」
とお願いして、化粧水や乳液など袋につめるものを、実演してもらった。
出国手続きが終わると、姉さんと、なっちゃんは、ちょっと見てくるとどこかへ行った。
「高橋さんは免税行かないの?」
高木先生に声をかけられた。
「買い物ですか?いいです。」
免税とやらが何か分からないが、買い物には興味が無い。
「じゃ、出発前に高橋さん集合で。」
先生は、そう言い残して去って行った。
出発までゲートの前で待つには良いが、ゲートの前のイスはすでに満席だった。
出発20分前だもんな。
壁際に寄って立っていると、佐藤君がやってきた。
「席いっぱいですね。」
「ここに座ったら、怒られちゃうかな。」
「怒られたら立ちましょう。」
と、佐藤君は壁際の床に座った。
私も横にちょこんと体育座りで座った。
高校生の頃、学校の中の廊下や駅のホームで座ったもんだ。さすがにトイレの前に座る勇気は無かったが。
「高校生みたい、懐かしい。」
と笑うと私が笑うと
「僕も座ってました。懐かしくていいですね。」
と佐藤君が笑う。
幸せ。
この間、2〜3分。すぐに全員が集合して、床に横一列で座った。
搭乗手続きが開始されたのだ。
長い列ができている。
でも先生は来ない。先生に見つかったら怒られるかな…と立ち上がることを考えはじめた頃
「あなたたち、こんな所に居たの。」
と先生が笑いながら、やってきた。
「写真をとるから、ちょっと待って。」
と、写真をとったあと
「立ちなさい。いくわよ。」
と、短くなった列に並んだ。
佐藤君がさっと立ち上がると、姉さんが手を伸ばした。
「立たせて。」
なっちゃんも手を伸ばす。
「私も。」
これは!!
「私も。」
私も手を出した。
佐藤君が苦笑いしながら、姉さん、なっちゃん、私の順番に佐藤君が引っ張って立ち上がらせた。
失恋したら楽しくないとか、そんなことはないからね。
泣くばかりが失恋じゃなかっ!!
なので、私は佐藤君の後ろについて搭乗を待つ列に向かって歩いた。
列の前まで来ると、佐藤君が気を利かせてくれて
「どうぞ。」
と、私を前に入れてくれた。