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砂漠転生  作者: タマリンド
第1章 砂漠脱出編
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第7話 砂漠の食事


 第7話です。


 砂漠で初めて魔物を倒したタクミ。

 しかし、目の前にあるのは食料と呼べるかどうかも分から  ない巨大な虫の死体と、何もない砂の大地だけです。

 火を起こすための薪も草も、この砂漠にはほとんどありません。

 文明社会では当たり前だった「食べる」という行為が、この世界ではまったく別の意味を持ち始めます。

 昼の太陽はすでに体力の限界を近づけていました。

 タクミはこの砂漠で生き延びるため、初めて「保存食」を作ることになります。


 

 太陽はすでに高く昇っていた。


 空は青く、雲一つない。


 その光が砂を照らし、熱を反射する。


「……暑い」


 タクミは額の汗を拭った。


 体が重い。


 朝はまだ歩けた。

 だが昼に近づくにつれ、砂漠の熱が体力を容赦なく削ってくる。


 頭の中の知識がはっきりと告げていた。


 昼の移動は危険。


 体力を奪われる。


 限界になる前に止まれ。


「まだ……行けるか……」


 タクミは周囲を見渡した。


 見えるのは砂だけ。


 岩も、草も、木もない。


 本当に何もない砂漠だった。


 だが、これ以上歩くのは危険だと体が訴えている。


「ここで休むか」


 タクミはその場に腰を下ろした。


 砂は熱かった。


 だが歩き続けるよりはましだ。


 目の前には、倒した魔物。


 サンドワームの死体。


 体長三メートルほどの巨大な虫だ。


「……これ、食うんだよな」


 少し遠い目をする。


 東京で暮らしていた頃、昼食はコンビニ弁当だった。


 それが今では――


 砂漠で虫を見下ろしている。


「人生って分からんもんだな」


 苦笑する。


 だが、食べなければ生きられない。


 それは理解していた。


 タクミは腰の袋からナイフを取り出した。


 研究棟に残っていた道具の一つだ。


 サンドワームの腹を見る。


 頭の中の知識が浮かぶ。


 腹部は柔らかい。


 そこを切れ。


「便利だな……」


 タクミは腹の節に刃を入れた。


 ギチッ。


 外殻の隙間からナイフが入る。


 力を込める。


 ズブッ。


 腹が裂けた。


「……うわ」


 白い肉が現れた。


 虫の肉だ。


 だが腐っているわけではない。


 匂いもそこまで酷くない。


「問題は……」


 タクミは周囲を見た。


 砂。


 砂。


 砂。


「火がない」


 薪も草もない。


 つまり――


 焼くことができない。


「……生はきついな」


 少し考える。


 その時、頭の中の知識が浮かんだ。


 乾燥。


 砂漠は乾く。


 肉を薄く切れば保存食になる。


「……干し肉か」


 タクミは小さく頷いた。


 ナイフを動かす。


 肉を薄く切る。


 長い帯のような形にする。


 それを砂の上に並べた。


 乾いた風が吹く。


 強い太陽。


 湿気はほとんどない。


 この環境なら――


「確かに乾きそうだな」


 タクミはサンドワームの肉を次々に切り出していく。


 作業は地味だった。


 だが確実に食料になる。


「営業の資料作りより地味だな」


 思わず苦笑する。


 だが、今はこれが仕事だ。


 生きるための仕事。


 しばらく作業を続けると、肉が大量に並んだ。


 砂の上に広がる白い帯。


 風がそれを揺らしている。


「これで……」


 タクミは水筒を取り出した。


 水を一口飲む。


 冷たい。


 喉に染みる。


「助かるな……これ」


 サラディンの残した魔道具。


 もしこれがなければ、砂漠での旅はすぐ終わっていただろう。


 タクミは空を見上げた。


 太陽はまだ高い。


 今動くのは危険だ。


「夕方まで休むか」


 砂の上に寝転ぶ。


 熱い。


 だが疲労の方が勝っていた。


 目を閉じる。


 サラディンの顔が浮かんだ。


 最後の謝罪。


 涙。


 そして消えていく姿。


「……重てえよサラディン」


 小さく呟く。


 亜神を終わらせる旅。


 その途中で――


 漁港町オルデを目指す。


 その場所がどこにあるのかは分からない。


 どれほど遠いのかも分からない。


 だが。


 歩くしかない。


 タクミはゆっくり目を閉じた。


 砂漠の風が吹く。


 太陽が肉を乾かしていく。


 それが――


 この世界での、最初の保存食だった。



 砂漠転生をお読みいただきありがとうございます。

 

 第7話「砂漠の食事」でした。

 

 昼とはまったく違う顔を見せる砂漠の夜。

 冷え込みと、夜に活動する魔物がタクミを待っています。


 次回、第8話「砂の夜」


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