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砂漠転生  作者: タマリンド
第1章 砂漠脱出編
10/34

第10話 ギガントワームの骨

 

 第10話です。


 砂嵐が去り、露出したのは想像を絶する巨骨だった。

 肋骨一本が百メートルを超え、全長は数キロメートル——

 岩の亜神ドゥラガンが召喚したギガントワームの遺骸。

 タクミは初めて、この世界の「神話」が現実に残っていることを目の当たりにした。


 

 砂嵐が去った後の砂漠は、信じられないほど静かだった。


 空には無数の星が広がっている。


 タクミはゆっくりと息を吐いた。


「……助かった」


 硬化能力が切れかけたあの感覚を思い出すと、まだ背筋が少し冷える。


 嵐があと少し長く続いていたら危なかった。


 タクミは砂を払い、周囲を見渡した。


 砂丘の形が大きく変わっている。


 嵐が地形を削り、別の形を作ったのだろう。


「砂嵐エグすぎだろ……」


 自然の力に、思わずそんな感想が漏れる。


 タクミは西へ歩き出した。


 目指すのは漁港町オルデ。


 距離は分からない。


 サラディンが教えてくれたのは、ただ西に漁港町があるという事実だけだ。


 どれほど遠いのか。


 どれほどの時間がかかるのか。


 それは、まだ分からない。


 砂漠に入ってから――


 八日目の夜。


 タクミは一定のリズムで歩き続けていた。


 その時だった。


 遠くの砂丘の向こうに、白いものが見えた。


「……?」


 岩のようにも見える。


 だが形が妙だ。


 曲線を描いている。


 タクミは近づいた。


 そして足を止めた。


「……なんだこれ」


 それは骨だった。


 巨大な骨。


 砂の中から弧を描くように突き出している。


 だが普通の骨ではない。


 大きすぎる。


 高さだけで十メートル以上ある。


 タクミはさらに近づいた。


 そして気付く。


 それは一本ではなかった。


 同じ形の骨が、等間隔に並んでいる。


 一つ。


 二つ。


 三つ。


 さらに奥にも続いている。


「……肋骨?」


 頭の中の知識が反応する。


 サラディンから与えられた、この世界の知識。


 その中にある存在。


 タクミは骨の列の中を歩いた。


 巨大なアーチが並んでいるようだった。


 骨の湾曲の大きさから推測する。


 一本の長さは――


 百メートルを超えている。


「……嘘だろ」


 思わず笑ってしまう。


 頭の中の知識が、その名前を告げた。


 ギガントワーム。


 砂漠の伝説の巨大生物。


 その肋骨は一本だけで百メートルを超える。


 そして体長は――


 数キロメートル。


 タクミは骨の列を見渡した。


 白い巨大な弧が、月明かりの下で静かに並んでいる。


 どこまで続いているのか分からない。


 砂に埋もれている部分も多いが、それでも分かる。


 これは一体の生物の骨だ。


 そして知識が続く。


 かつて岩の亜神――


 ドゥラガンが、神言語魔法によって呼び出した存在。


「ドゥラガン……神言語魔法……」


 タクミは小さく呟いた。


 サラディンが最後に使った魔法。


 世界の理を書き換える力。


 その代償は大きい。


 ドゥラガンもまた、その力を使い――


 力を使い果たして消滅した。


 このギガントワームは、その時に呼び出された存在。


 そして今は、巨大な骨だけが砂漠に残っている。


「スケールおかしいだろ……」


 タクミは苦笑した。


 東京のビルよりも大きい骨。


 そんなものが、砂漠に横たわっている。


 しばらく歩く。


 骨の列はまだ続いている。


 やがてタクミは立ち止まった。


 空が少し明るくなってきている。


 夜が終わる。


 砂漠の昼が来る。


「……ここで休むか」


 巨大な肋骨が長い影を作っていた。


 十分な日陰になる。


 タクミはその影に座り込んだ。


 袋から乾燥肉を取り出す。


 水を一口飲む。


 そして、ふと気付いた。


「……あれ?」


 思ったより体が軽い。


 砂漠を八日歩いたはずなのに、まだ動けそうな感覚がある。


 普通ならもっと疲れていてもおかしくない。


「……まあ」


 タクミは肩をすくめた。


「慣れてきたってことか」


 深くは考えない。


 人間は環境に適応する生き物だ。


 きっとそういうことなのだろう。


 タクミは骨にもたれ、空を見上げた。


 巨大な骨のアーチ。


 青くなり始めた空。


 その下で、元営業マンは静かに目を閉じた。


 砂漠の旅は、まだ始まったばかりだった。



 砂漠転生をお読みいただきありがとうございます。


 第10話「ギガントワームの骨」でした。


 ギガントワームの骨の先で、タクミは砂に半分埋もれた古い建造物を発見します。

 それは、この砂漠にかつて存在した文明の痕跡でした。


 第11話「砂に埋もれた神殿」


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