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キラキラの虫

作者: 藍色
掲載日:2026/01/12

 カラスはキラキラしたものが大好き。


 だから巣の中にはお宝がいっぱい。


 ガラスやプラスチックのカケラも、だいじな宝物だ。


 とくにお気に入りなのは、外がわは黒くてキレイじゃないけど、にじ色に光る内がわがステキな貝がらだ。


 ニンゲンの巣の近くのハコから見つけたものだ。


 ハコにはときどきエサが入っているので、アミのすき間から袋をつついている時に出てきたのだ。


 今も、電柱の上から見つけたキラキラに向かって飛びおりる。


 でも、今日のお宝は何だかいつもと違っていた。


 木の上にいる虫みたいにフサフサで、なんだかウゴウゴしている。


 でも虫より大きいし、とってもキラキラしているから、食べてしまうのはもったいない。


 キラキラの虫を持ってかえろうか食べようかまよって、まわりをピョンピョンとハネる。


 すると仲間のカラスがやってきて、「いらないならオイラにおくれよ」と電柱の上でさわぎ出す。


「ダメだよ!これはオイラが見つけたんだ!」


 キラキラの虫を守るように羽を広げて「カアッ!!」と気合いを入れる。


 すると、もっとたくさんのカラスが集まってきた。


「なになに?」

「なんか良いもの?」

「キラキラだ!」

「ほんとだ!」

「オイラにちょうだい!」

「アタイもほしい!」

「キラキラの虫?」

「キラキラのゴハン?」

「ゴハンじゃないよ、お宝だよ!」


 みんながいっせいにオシャベリするから、通りかかったニンゲンが遠ざかっていく。


 でも、カラスのさわぎはおさまらない。


「このお宝はオイラのだから、みんなあっちへ行けよ!」


 最初にキラキラの虫を見つけたカラスが、近付こうとしたカラスにおこる。


「なんだよケチンボ」

「食べないならちょうだい」

「持ってかえらないならちょうだい」

「オイラもほしい」

「他にもいないかな」

「あっ、あっちになにか光った!」

「お宝だ!」

「キラキラだ!」

「キラキラの虫かな?」

「オイラのだ!」

「アタイも見つけた!」


 気まぐれなカラスが別のキラキラを見つけて飛びおりる。


「大物だ!」


 ペットボトルをくわえたカラスが、ピョコピョコとバランスをとりながら飛びはねてよろこぶ。


「こっちの方が大物だよ!」


 クシャクシャになったビニール袋を引きずったカラスが、見せつけるように胸をはる。


「こっちのはピカピカしてるよ!」


 アルミホイルをくわえたカラスがハシャギながら飛び立っていく。


 お宝を見つけたカラスが飛びさってしまうと、しずかになった。


 のこりのカラスは、キラキラの虫があきらめられずスキをうかがっている。


 はじめに見つけたカラスが、とられる前に巣へ持って帰ろうとキラキラの虫へ向いた時に、風がビューッとふいた。


 あっと思った時には、キラキラの虫は地面をコロコロとにげていく。


 あわててカラスたちが追いかけるも、右へ左へとクネクネと動くのでなかなかつかまらない。


 風のせいなのだが、カラスにはキラキラの虫がにげているように見えている。


「まてー!オイラのキラキラ」

「オイラのだよ!」

「アタイがもらっちゃうもん」

「オイラのお宝だ」

「ちがうよ虫だよ」

「どっちでもいいよ」

「おもしろいお宝だ」


 さわぎながらキラキラを追いかけるカラスたちに、スズメやハトもあきれ顔で見ている。


「あれは虫じゃないよねー」

「お宝でもないよー」

「そうなのー?」

「ボク見たんだよー」

「ワタシも見たよー」

「なにを見たのー?」

「ニンゲンだよー」

「ニンゲンだねー」

「あのキラキラはニンゲンなの?」


 スズメたちがチュンチュンとオシャベリをしていると、先にお宝を見つけたカラスが戻って来て聞いてくる。


「ちがうよー」

「ニンゲンじゃないよー」

「ニンゲンがすてたのー」

「いらないのよー」

「ゴミだよー」

「カラスはゴミ好きー?」

「ちがうよ!キラキラが好きなの!」

「でも君たちが持って帰ったのは全部ゴミだよ?」


 ハトが本当のことを言うと、カラスがかたまる。


「お宝がゴミ?」


 信じられないと、泣きそうになりながらカラスがつぶやく。


「そうだよ。ニンゲンがすてたゴミだよ。カラスだけじゃなくて、他の生き物もまちがって食べちゃったりするけどゴミだよ」


 ハトが答える。


「ワタシ見たー」

「テレビだー」

「ニンゲンの巣にあるのー」

「海のゴミだってー」

「いっぱいだってー」

「カメが食べたー」

「クジラも食べたー」

「オナカいたいのー」

「死んじゃうのー」

「ゴミはダメなのー」

「ダメー」

「でもすてるのー」

「ニンゲンがすてたのー」


 スズメたちがさえずる。


 そこに、キラキラの虫をつかまえたカラスがもどって来る。


「見てくれオイラのお宝だぞ!」


 ハトにはちぎれて小さくなっているそれが、ニンゲンたちがクリスマスツリーと言う木にまき付けている、モールと呼ばれる物だとわかった。


「ゴミよろこんでるー」

「ゴミ好きねー」

「ゴミだねー」

「カラスにはお宝なんだよ」


 スズメとハトがコソコソと言い合う。


「オイラもうキラキラひろわない!ゴミいらない!」


 もう1羽のカラスは、さけびながら飛んでいった。


 その声におどろいたカラスたちにスズメとハトがせつめいすると、同じような事をさけびながらみんな飛びさっていった。


「その方がいいよ。ゴミで巣を作るとニンゲンがすててしまうからね」


 もう聞こえないとは思いながらも、ハトはカラスたちに言う。


 ハンガーで作った巣をすてられて泣いていたカラスを思いだしながら。


「カラスはニンゲンにかしこいと思われているけど、本当にかしこいのはニンゲンにかかわらずに生きているものたちかもしれないね。ニンゲンは自分たちがすてたゴミで自分たちが困るような変わった生き物だから」

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