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第6章 真相の暴き方

第6章です!どうぞ楽しんでくださいね!

「教えてあげるよ。あたしがどうやってこの写真を撮ったのかを…。コゼット。ちょっとその写真貸して。」


 ニヤリと笑うアゼルマに僕は写真を渡す。


「ありがとう。じゃあ、始めようか…。エポニーヌ!惑わしの力でこの空間を誰にも見られないようにして!」


「ええ!アゼルマ!」


 エポニーヌは自分の指の腹を噛みちぎり、そこから溢れた血で自分の周りに円を描く。


『惑わせ騙せ惑わせ騙せ!我に害為す者より、我を黒き闇に包み守るが良い!』


 エポニーヌが呪文を唱えると、僕らは黒が入り交じった白光に包まれる。その眩しさに僕は目を瞑る。…そして、数秒後、なんとか目を開ける。そこには、真っ黒な空間が広がっており、そこは保健室ではなくなっていた。


「これで大丈夫よ。」


「え、エポニーヌ…一体今、何をやったんだ?」


「惑わしの力を使って、空間転移したのよ。どう?すごいでしょ?コゼット!誉めてくれてもいいのよ!」


 僕はエポニーヌの発言に苦笑しながらも、彼女の能力に感心していた。"惑わしの天才" エポニーヌ・ミレガルダ。…少し面倒くさい性格をしているけど、やはり彼女も称賛に値する天才。この学園の生徒はやっぱりすごい…。


「さぁ、これで、思う存分話せるわ。アゼルマ、いいわよ。」


「オッケー!さぁさぁ皆さんご覧あれ!天才の方も、そうでない方も、この気を逃さず、あたしの話をよく聞いてくださいな!」


 アゼルマは声を張り上げると写真を皆の前にかざす。


「今宵ご覧いただくのは、一枚の写真。ここに写るは、1人の黒マントを深く被った人間が、殺した女の肉を貪り喰らう姿!普通の人間ならば、嗚咽だけでは済まないけども!普通ではないあたし達には、こんな写真も持ってこい!あぁ!ご無理な人は注意してよー?あたしは全部の責任を取りかねますからねー!全部自己責任の上、お立ち会いくださーい!!」


 アゼルマの言い回しに僕らは驚いて目を丸くする。写真をかざして語る彼女の姿は生き生きとしており、僕らは彼女の行動に目が離せない。


「それでは!単刀直入に言いますがねー?この黒マントの人物は、なんと女でございます!!この白く細い手首、指先、血がべっとりとついた口元、口角の上がり方、上品な食べ方!全てが、この人物が女だと言うことと、彼女の上品さを物語っているのです!さぁさぁ!ここで!質問ターイム!この女の名前を誰かに答えて貰いましょー!それじゃあ…だ・れ・に・し・よ・う・か・なー?」


 アゼルマは写真を片手に指を指して、僕らを嘗め回すように1人1人じっと見やる。


「…じゃあ……はーい!何かと話題のドジっ子少年!コゼット・アーウィンブルーさん!」


「…え!?ぼ、僕!?」


 僕は、当てられるのはラビニアだと思っていたから、予想外の出来事に脳が追い付かない。


「コゼットー!じゃあ!答えて!この女の名前はー?」


 僕は、アゼルマからの問いに、一度唾を飲み込んでから、ゆっくりと口を開けて答える…。


「…エルゼベート……バートリー…。」



「ピンポーン!!だいせーかーい!そう!コゼットが言ってくれたように、この写真の女は、あのバートリー事件を引き起こした張本人。エルゼベート・バートリーその人!皆気付いてると思うけど、100年前の事件にも関わらず、こうしてバートリーはまだ生きてる。そして、街から若い女を攫ってきては、殺して食っていた。これって、シンプルにヤバい事だと思わない?」


 アゼルマの発言に、僕らは震える。ネロは眠ってしまっているダイアナとアンを守るように抱き抱え、ジムは気持ち悪そうに口元に手を当てている。ラビニアは、怯えるグリンダをしっかりと抱きしめており、背中を優しく擦っている。


「確かに…100年前の事件が未だに未解決なことも、バートリーがまだ生きていると言う事実も、到底信じられるものじゃない…。」


「でも、こうして写真って形で証拠が残ってる…。」


「若い女を殺して食べ、そして、バートリーは、100年前に食べたとある呪術師の娘の影響で、年を取らない姿になってしまった…。」


「今までの件…全部…合点がいくな…。」


「まぁようは、妖怪人食いババァってことだよな。」


 事件の内容を整理するように、僕らは口を開く。本当は、こんな残酷な事、口になんて出したくない。でも…一度事件を僕らの代で終わらせると決めてしまった手前、僕らはもう後には戻れないんだ…。


「…それで?…アゼルマ…その写真…結局どうやって撮ったの?」


「そうだったね。ごめんごめん、説明遅くなって。この写真はね、エポニーヌの惑わしの力を使って、姿を消して撮ったんだ。そうでもしないとバレちゃうからね。」


「そう。アゼルマは実はすごく耳が良くてね。エスカロッティの全域の音が聞こえるくらいすごいの。普段はこの力、日常生活には不適合だって、封印してるんだけど…。あの日は、たまたまその封印を解いてたの。写真を撮った日の夜。部屋で2人で喋ってたら、アゼルマがいきなり…。マッジの森から気持ち悪い音がするって言い出して。」


「…そうなの。グチャグチャって…何かを食べる音。でも、マッジの森には獰猛な獣なんていないし…あんな変な音がするの、おかしいと思って…。しかも、聞こえちゃったの。女の声…。」


「女の…声……?」


「うん…。


 『この女は不味いわね…血が薄いわぁ…』って……。」



 その瞬間、僕らの動きは一斉に止まった。アゼルマが聞いた女の言葉…。明らかに…バートリーの言葉だ。


「それで、あたし、震えが止まんなくなって。でも、声の主を見たいって好奇心が邪魔して…。それに、バートリー事件の話も知ってたから、もしかしたらって…。それで、エポニーヌに付き添ってもらって、声のしたマッジの森に、カメラを持って行ってみた。エポニーヌの力で、一緒に透明になってね。そこで撮ったのが、この写真なの。恐くてこれしか撮れなかったけど…。これだけでも、証拠になるかなって思って…。」


「そうなの。でも、撮ったものの、どうしたらいいのか分からなくて。そうしたら、ジャンから、コゼット達がバートリー事件を追ってるって聞いて…。」


「それで、3人で来たって訳。」


「あぁ。まぁ、そーゆーことだよ。な?これで信じて貰えたか?コゼット?」


 僕はアゼルマ達の話に、歯を食いしばって目を強く瞑る。


「…あぁ。ジャン。君のことはまだ信じられないけど、アゼルマとエポニーヌが、わざわざ身体を張って証拠を持ってきてくれたんだ。無下には出来ない。僕は、君達が仲間に入るの、歓迎するよ。でも、僕はリーダーじゃないから、仲間に入る許可なら、ラビニアに貰って。」


「…ありがと、コゼット。」


「コゼット~!さすが私の未来の夫!」


「ふん!信じる信じねぇはこれからお前が決めろよな。まぁ、俺もお前のこと認めた訳じゃなぇしな!お互い様だろ。」


「…って訳で先輩。あたし達を、先輩達の仲間に入れてください。」


「お願い!ラビニア!」


「ラビニア。変な意地張んなよ。証拠持ってきてやったんだから、俺ら仲間に入れろ。」


 ラビニアは、一度ため息を吐くと、顔をあげる。


「…あぁ…。いいぜ。人数が多いに越したことはねぇ。」


「じゃぁ…これで決まりだな!いいかてめぇら!今日から俺がこのグループのリーダーだ!恐れ敬え!」


「…誰も恐れ敬ったりしないと思うよ?それに、リーダーはラビニアだってさっき言っただろ?君が僕らのリーダーになんてなれる訳ないよ。」


「…コゼットジャンには辛辣だよな…。」


「…まぁ、コゼットくんとジャン先輩の間には、因縁がありますからね…。仕方ないですよ。」


「…ジムの言う通りだな…。」


「あ"ぁ"!?おい馬鹿ネロ!それとメガネ!賛同してんじゃねぇよ!!」


 バカなジャンのおかげで、少しだけだけど、その場の雰囲気は、一瞬和やかになった。


「…じゃあ、これからよろしくね。皆。」


「7人の天才が全員いるんだから!恐いもの無しよ!ねーコゼット~!」


「あ……うん。そうだね。」


 僕は抱きついてくるエポニーヌをそのままに、1つだけ気になったことを、アゼルマに尋ねる。


「…ねぇアゼルマ。1つ気になった事があったんだけど…。バートリーが殺して食べた女の人。一体どこから連れてきた女の人なの…?」


 僕が尋ねると、アゼルマは、やるせなさそうな顔をしてため息を吐く。


「…ごめん…。そこまでは…。あたしが森に行った時は、もう殺されて食べられてたから…。」


「…あ…そうか…。嫌なこと聞いてごめん。ただ…女の人の正体が分からないのが…なんだか気持ち悪くて…。」



『…コゼット…。その人の正体が知りたかったら、また、降霊術をやってみたらどう?』


「……ぐ、グリンダ!お、起きて大丈夫なの?」


 今まで眠っていたと思っていたグリンダは、うっすらと目を開けて僕にそう告げる。


「…うん…。もう大分いいよ。ラビニーが守ってくれてたから平気。」


 グリンダはそう言って優しく微笑む。グリンダの柔らかく優しい声に、僕らは自然と安心する。


「…そっか…。良かった。…でも…グリンダ。降霊術をやってみるって…どういうこと?」


「…その女性がどうしてここに連れてこられたのか、バートリーが一体どうやって接触したのか、皆も知りたいでしょ?それなら、コゼットが降霊術をやるしかないの。」


「何で…僕?」


 僕の言葉に、グリンダは優しく微笑む。


「何でって…。自分の能力忘れたの?コゼット。あなたの力は、霊視をし、その霊と会話をすること。出来るのはあなただけ。明日と明後日は休日。学長先生は用事があって、その2日間いない。だからやるなら今しかないの。あたし達がサポートするから。皆で集まってやってみましょう。」


「…僕にしか出来ないこと…。うん!真相を知りたい!その亡くなった女の人の霊を呼んで、僕が話を聞いてみるよ!皆、明日は力を貸してね!」


「あぁ。勿論だぜ!コゼット!」


「僕でも役に立てるなら!」


「グリンダがそう言うなら、俺も賛成だ。」


「手伝うからね!コゼット!」


「出来ることがあるなら言って!」


「他ならぬ私のコゼットの頼みですもの!協力しない訳ないわ!」


「しょーがねーなぁ…。やってやるよ!」


「…ありがとう皆…じゃあ明日、僕とネロの部屋に、集まろう!今日は解散!」


第6章 fin

第7章に続きます!

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