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第1章 アンナ・グリムジレッタ記念学園

第1章です!よろしくお願いします!

 僕、コゼット・アーウィンブルーは、まぁ…色々あって、現実と幻想の狭間にある不気味な谷、エスカロッティに迷い込んでしまった。そこで、偉大な霊能者、アンナ・グリムジレッタ様に出会い、僕は、彼女が創った僕のような"普通ではない者"達のための学校、「アンナ・グリムジレッタ記念学園」に、何故か編入することになってしまった。正直言って…今まで学校と言う場所に良い思い出が全く無い僕にとっては、いくら"普通ではない者"達のための学校だからと言っても、やっぱり心には不安しかない。でも、一度頑張るって決めたから、もう振り返ったりしない。


「僕は…変わるんだ…。」


「あら、もう大分変わったと思うわよ?シャワーを浴びて、新しい制服に袖を通しただけでね?」


「はぁ…そうでしょうか…。」


 あれから僕は、シャワーを浴びて、カラスと共に学長室までやって来た。来て早々僕は、新しい制服や、授業で使う教科書や本等を支給された。さっき編入が決まったのに、あまりにも仕事が早すぎると思ったが、相手は"普通ではない者"。ましてや、偉大な霊能者ときている。僕は、そこにはあえて突っ込まなかった。そして、制服を着させられて今に至る…。


「とても似合っているわよ?良かった。特注にしたのよ?貴方は…男の子の割りには身体が少し小さいし…顔も女の子みたいだから…他の男子生徒の制服とは少しデザインを変えたのよ。」


 僕の制服は、青みがかった黒のジャケットに、薄い青のベスト。そして、ジャケットと同じ色合いの半ズボン。新品の黒いローファーはピカピカに輝いており、鏡に映った自分の姿は、つい数時間前の自殺を図ろうとしていた自分とは全く違い、どこか、憑き物が落ちたような顔をしていた。


「僕って…こんな顔だったっけ…。」


「コゼット!似合ってるぜ!」

「あぁ!これこそ本当のお前って感じがするぜ!」


「…ありがとう。」


 カラス達は僕の制服姿を見て喜んでくれている。この数時間の間に色々あったけど、この2羽とも仲良くなれたし、学長先生も…いい人そうだし…。少しは、これからの学園生活に期待しても良いかな?


「必要な物も全て渡したし…制服も大丈夫。後は、寮ね…。」


「え…り、寮ですか?」


「言ってなかったかしら?この学園は全寮制。貴方にも勿論今夜から寮に入って貰います。大丈夫。ルームメイトはいいこだから、きっと仲良くなれるわ。」


「全寮制…ルームメイト…。」


 僕は学長先生の言葉に少し頭を悩ませる。確かにこの学園の敷地は広く、学園寮の建物もさっき見た。寮に入るのは構わない。だけど…ルームメイト。友達が出来たことの無い僕には、ものすごくハードルが高い。学長先生はいいこだと言っているけど…それでも不安だ。いい人の振りをして僕を陥れようとするかも…。トラウマから、僕の身体は震えてしまい、少し眩暈がする。


「そんなに気負わないで?絶対に大丈夫。友達になれるわ。…ネロ!!もういるんでしょう?お入りなさい!貴方のルームメイトが待っているわよ?」


 学長先生は、手元に置いてあったベルを鳴らす。すると、ドアが開き、金髪の明るそうな少年が入ってくる。


「…あ、バレてました?…だって学長先生!新しいルームメイトが来るんですよ!?楽しみすぎて…。あ、もしかして、お前が俺の新しいルームメイト!?」


 金髪の少年は、満面の笑みで僕を見てくる。その笑顔は、僕には眩しすぎて、なかなか直視出来ない。


「…あ、うん…。そう…だけど…。」


 僕がそう言うと、金髪の少年はますます笑顔になり、僕の両手を握ってブンブンと上下に振り回す。


「そっかそっかぁ!!俺、ネロ・パフライード!!お前と会えて嬉しいよ!!お前、名前は?」


「…僕は…コゼット。…コゼット・アーウィンブルー。」


「コゼットか!!よろしくな!!ルームメイトなんだから、仲良くしようぜ!!」


 金髪の少年、ネロは、僕の両手を離すと、握手をしようと、手を差し出してくる。僕は、恐る恐るその手を取って握手をする。


「よ、よろしく…ネロ…。」


「まぁ…仲良くなれそうじゃない、コゼット。ネロは本当にいいこだから、これから楽しくなると思うわよ?」


「は、はい。…そうですね、学長先生。」


 僕は学長先生の優しくも、どこか圧を感じる笑みに、顔をひきつらせて笑う。


「なぁコゼット!ここに来たって事は、お前も、"普通ではない者"なんだろ?」


「…あ、うん…。そうだよ。ネロもそうなの?…見たところ、君は…その…普通の男の子っぽいけど…。」


「全っ然!!」


 ネロは僕の質問にないないと言った感じで片手を振る。


「…俺も、普通じゃないから、昔から周りに変なやつって言われる事多かったんだ。でも、ここに来てからは全部変わった!俺、1コ上に幼馴染みがいるんだけど、そいつと一緒にここに入ったんだ!お前は高等部1年から編入だけど、俺とその幼馴染みは、中学部から編入したんだ!心配すんなコゼット!俺とお前はルームメイトになったし、同級生で授業も一緒だから、いつでも一緒だぜ!困ったら助けてやるからな!」


 ネロは任せろと言いたげに、拳を自分の胸に当てる。


「…そっか…昔は僕と…少し似た感じだったんだ。ありがとうネロ。少し、これからの学園生活に希望が持てた気がするよ。」


「なら良かった!」


「ネロ?コゼットはね、霊視が出来て、それと語らう力を持っているのよ?」


「ま、マジで!?すごいじゃねーか!コゼット!俺も力持ってるけど、さすがに霊と喋ることは出来ないからなぁ…。」


「ってことは…ネロもそう言う力を?」


「あぁ!俺は動物と心を通わせて、友達になることで!その力を貸して貰う事が出来るんだ!」


「…動物と…?」


 僕は驚いた。やはりこの学園には、僕と同じ、"普通ではない者"達が集まっている。今まで気味悪がられて来たこの僕の力を、ネロはすごいと言ってくれた。ネロ自身も不可思議な力を持っている。きっと、他の生徒もそうなのだろう…。


「…ネロ!君もすごいじゃないか!動物と心を通わせて…力を貸して貰う事が出来るなんて!」


「いいや、お前の力もすごいって!死者と語らうなんて、学長先生みたいな能力だし!…これだったら、お前がこの学園の8人目の天才になる日も近いかもな!」


「…8人目の天才?」


「ネロ。まだコゼットはその話を知らないの。学園を案内するついでに、教えてあげて。」


「はーい!学長先生!じゃあ、荷物持って寮まで行こうぜ!学園の中案内してやるから!」


「…あ、うん!学長先生、失礼します!」


 僕は、荷物を持ってネロに着いていく。ネロとは、もしかしたら本当に友達になれるかもしれない…。そんな淡い期待を込めて、僕は学長室から出た。


-「…コゼット・アーウィンブルー…。また一人…私の可愛い生徒が増えたわね…。ふふ。これから楽しみだわ。」-


- 学園の広間 -


「ここが学園の広間?わぁ…広いなぁ…。」


 僕はネロに学園の広間に連れてこられた。広間の真ん中には、等身大の学長先生の銅像があり、そこには彼女の名前が金で刻まれていた。


「な?すごいだろ?学長先生の像!…いつ見ても立派だよなぁ…。」


 僕は銅像を見上げるネロに、気になっていた事を聞く。


「…ねぇネロ。さっき言ってた…8人目の天才って…どういう意味なんだ?」


「…あぁ!悪い悪い!まだ言ってなかったな!じゃあ説明してやる!着いてこい!」


 僕はネロに着いていき、広間の奥に行く。そこには、壁に7つ石板が飾られており、それぞれ金で人の名前が刻まれていた。


「これは?」


「これは、今この学校に在籍している7人の天才達を讃える石板だ!」


 僕は少し近づいて石板を見る。石板には、記しの天才、盗みの天才、呪いの天才など、様々な天才達の名前が刻まれており、その中には……


「…遊びの天才…ネロ・パフライード…。え?ネロ、もしかして…!」


「よく気付いてくれたな!俺はこの学園の7人の天才の1人なんだ!遊びの天才…良い響きだろ?」


「…すごいんだね…ネロ!学園の7人しかいない天才の中に選ばれるなんて…でも…何で僕にさっき…僕が8人目の天才になるかもしれないなんて言ったんだ?」


「そりゃあお前に光るものを感じたからだよ!お前ならなれる!それに、お前は学長先生に似た力を持ってる。いずれは学長先生みたいな偉大な霊能者になったりしてな!」


「…や、やめてくれよネロ。そんな恐れ多い…。」


 僕が8人目の天才になるかもしれない。そう言ったネロの瞳に、からかいなどは感じられなかった。ネロの隣は心地が良い。こんなこと思ったの始めてだ。


「友達…。つくってみたいな…この学校でたくさん…。」


「そうだな!コゼット。まずは俺がお前の友達第1号だ!この学校なら、友達たっくさん出来るはずだぜ!そうだ!この俺以外の他の6人の天才も良い奴らばっかりなんだ!今度紹介してやるよ!」


「……あ、ありがとうネロ!」


 人生で初めて友達が出来た…。今度こそ、楽しい学園生活にするんだ…。少し…いや、結構楽しくなってきた!


「あ!そうだコゼット!この俺の隣に書かれてる子、俺達と同級生で、授業一緒なんだ!明日紹介してやるよ!女の子なんだけど……」


『アン・ブリジット。』


「わぁ!!ビックリしたぁ…おいおい驚かせるなよ!しかも急に本人登場とか…やめてくれよアン!心臓に悪いだろ?」


 急に後ろから響いた女の子の声。後ろを振り向くと、

そこには、綺麗な赤毛を2つに束ねたそばかすの女の子が本を持って立っていた。


「アン…?君が…?」


 僕は石板をもう一度見る。目線の先には、記しの天才:アン・ブリジットと書かれていた。


「…あなた、編入生ね。話題になってるわよ?また一人、この学園に"普通ではない者"が現れたって。」


「あ…そうなんだ…話題に…。うん。確かに僕がその編入生だよ。」


「こいつ、コゼット・アーウィンブルーって言うんだ。俺のルームメイトで友達!お前も同級生だし、授業も一緒だから、仲良くしてくれよ?」


 ネロが僕を紹介すると、赤毛のそばかすの少女。アンは、僕に近付いて来て、石板をチラリと一瞥して僕に向き直る。


「…騙されないで。あの石板は嘘つきなの。アンのスペルは最後にeがつく。間違って書かれてる。分かった?最後にeがつくの!…覚えておいてね?」


「…う、うん。わ、分かった…。」


 少しムッとした表情のアンは僕に釘を刺すと、また一歩下がる。


「まーたそんな怖い顔して…。せっかくの可愛い顔が台無しだぞ?」


「うるさい。それに、可愛くなんかない。コゼット。この馬鹿と仲良くするなら気をつけてね。本当に馬鹿だから。」


「馬鹿馬鹿言うな!!急に現れておいて言うことそれかよ!」


「…あ…そろそろ寮に戻らなくちゃ。コゼット。右の階段は女子生徒寮への道。左の階段は男子生徒寮への道。そして、2つの階段の中間にある道は、食堂への道。覚えておいてね。じゃあ、また明日。」


「おい!こっち無視かよ!」


「…あ、ありがとうアン。」


 アンはそう僕に説明すると、そそくさと階段を上がって行ってしまった。


「…アン…少し変わってるけど…いいこだね。」


「…俺が説明しようと思ってた所全部持っていきやがった。アン…覚えておけよ!…まぁいいや、寮に行こうぜ!」


 僕とネロは、左の階段を上がって男子生徒寮に行く。


「じゃじゃーん!!ここが俺達の寮だー!!」


「…わぁ…意外と広いんだね…!」


 寮の部屋の中は意外と広く、2人で生活するには十分すぎる程だった。


「そっち!右側がお前の机とベッド!で、真ん中が共有スペースな!あ、家具は、全部学長先生が用意してくれてんだよ!それぞれの生徒に合わせてな!」


「それで僕の家具は、全部落ち着いたシンプルな物と、青の物で統一されてるんだ…。ネロの物は黄色やカラフルな物が多いね。」


 ネロは自分の生活するための家具を見て、少し微笑む。


「だろ?さすが学長先生!分かってるぜ!」


「…ねぇネロ。初めて会ったばかりなのに…僕みたいなのなんかに、こんなに親切にしてくれてありがとう。僕、今まで友達が出来たことなかったから、ネロと友達になれて嬉しいよ!」


「…俺も!新しいルームメイトだけじゃなく、新しい友達まで出来たんだ!こんなに嬉しいことねぇよ!"普通ではない者"同士、明日から、一緒に頑張ろうぜ!コゼット!」


「……うん!ネロ!」


 僕らは拳を付き合わせて笑い合う。"普通ではない者"ばかりが集まるこの学園での生活は、最初に感じていた不安なんかどうでもよくなるくらい、思っていたよりも、明るく、実りのある物になりそうだ。


第1章 fin.

第2章に続きます!読んでくださりありがとうございました!

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