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第18章 呪いのデヴァンチェッタ

お待たせしました!前回の続きです!

 プリシー・ロッツォの一件から数日後。やはりネロの僕らへの態度は変わらず、終始緊張感に包まれ、ピリピリした日々を過ごしていた。


 そして今日も……。


「…ネロ、またプリシーと一緒にいるよ…。」


「…あいつ、マジで何なんだよ……。気持ち悪ぃ。」


「ネロのこと好きならちゃんと真っ正面から告白すればいいのに~…。そんなことに能力使ってさ……。」


「…あそこまで行くと、何かの病気だね…。……もう見ていられないよ……。」


 僕とラビニア、アゼルマ、ジョセフィンの4人は、曲がり角の影からネロとプリシーの動向をずっとチェックしていた。


「…見てよあのあざとい顔…。うっざぁ…。」


「…あんな分かりやすいやつに騙されんだな…ネロ。」


「…でもアゼルマ。プリシーの周りの音って、気持ち悪いぐらいに独占欲強かったんでしょ?」


「うわぁ!!そうだけどもう思い出したくない!!言わないで!!耳が引きちぎれる!!」


「……シッ……。静かに。」


 急にジョセフィンが人差し指を唇に当てて声を静めた。


『…ジョセフィン……どうし……え……?』


 その瞬間だった。プリシーの細い手がネロの頬に伸び、そのまま…………

 


 唇を奪った。

 


ネロの目は何かに操られているように虚ろで、その瞳を見つめるプリシーの目も、瞳孔が開き、血走っていた。ヘーゼル色の瞳と唇は徐々に赤く染まっていく。プリシーは何かを呟いているようで、ずっと唇が小さく動いていた。

 ネロはくらくらしており、そのままそれに答えるかのように、プリシーだけをずっと見つめていた。いつの間にか、ネロの瞳からは血が溢れていた。2人の異常さは、吐き気を催す程だった。


『……お、おい!何だよあれ!』


『……ね、ネロの目が!!それに……プリシーの目も唇も……真っ赤だ!!ま、まさか…プリシーは化け物?』


『……いいや、その、まさかかもしれない……。』


 ドサッ…


『……え…?あ、アゼルマ!?アゼルマ!!』


 両耳を押さえたまま、アゼルマが倒れた。


「……アゼルマ!しっかりするんだアゼルマ!ど、どうしたんだ!」


「……アゼルマ……まさか、聴力を……。」


『……歌………悪魔の…………讃美……歌。壊す……心を…………身体を……引き裂く……。ネロが……危ない……。……魂を……抜かれ……ちゃう。……あれは……最初から……プリシー…ロッツォなんかじゃ……なかった。あれは…………人の姿をした………


      デヴァン……チェッタ…………』


 途切れ途切れにそう言うと、アゼルマは泡を吹いてそのまま動かなくなってしまった。


「……アゼルマ!!アゼルマ!!ら、ラビニア!!どうしよう!!アゼルマが!!」


「……ど、どういう事だよ!!……デヴァンチェッタだと!?」


「……ら、ラビニア……どうしたの?……デヴァンチェッタって……?」


 僕はアゼルマが言っていたデヴァンチェッタと言う言葉が気になってラビニアに尋ねた。


「……あ、あぁ。それは……」


「……待ちなよ!!今はアゼルマが大変な状況なんだ!一刻を争う……。そんな説明を流暢にしている場合ではない!ラビニア!君は取り敢えず、エポニーヌを呼んでくるんだ!それと……応急処置のために、ジムとグリンダを!!デヴァンチェッタの件は、私が後でコゼットに説明する。」


「……ジョー…。」


「ほら急いで!!このままではアゼルマが危ない!!」


「……お、おう!!分かった!!」


 ジョセフィンの的確な指示により、ラビニアは廊下を駆け出した。


「……ラビニア……。」


「……コゼット。一旦保健室にアゼルマを運ぼう!」


「……う、うん!で、でもネロは……。」


「今の私達じゃアレには太刀打ち出来ない!!とにかくアゼルマを保健室に!!早く!!」



『それじゃあその娘は間に合わないわよ。』



 急に後ろから響いた聞き覚えのある声に、僕はハッとして振り返る。するとそこには……


「あ!!し、シュイさん!!お、お久しぶりです!!」


 毒使いの先輩、シュイシュアン・リーがいた。彼女…いや、彼は、前に僕とジムを助けてくれた3年生で、毒の研究でしょっちゅう学園を抜け出していたが、前に会長に見つかって学園に連れ戻されたのだ。

 久しぶりに見るシュイさんは見た目がかなり変わっていた。


「……シュイさん、ちゃんと学園に戻ってきてたんですね!」


「流石に出席日数危なかったし、学長から生徒会に戻らされたり、監視の目がきつくなったりして逃げ出せなくなったからね。」


「……何か……前と見た目が違いますね……。」


「心機一転、髪型とかメイクも全部変えたのよ。似合うでしょ?身体に流す毒の配分とかで目の色だって変えられるのよ?」


「……こ、コゼット。知り合いなのかい?この……女性は……。」


「……3年生の先輩だよ。前に助けて貰ったことがあるんだ。……補足すると、女性みたいな男性だけどね。」


 つまりは、シュイさんは、王子様系女子のジョセフィンとは対極の存在と言うことだ。


「……だ、男性!?……あぁいや、そんなことは今どうだっていい!!シュイ先輩。私は2年のジョセフィン。貴方は、アゼルマを救う方法を知っているのですか?」


 ジョセフィンが尋ねると、シュイさんは小首を傾げた。


「……残念ながら、救う方法は知らない。でも、薬草や毒を使って、生命機能が止まってしまわないようにすることは出来る。」


 シュイさんはアゼルマを抱き上げると、彼女の生気を失いかけた顔を見て、ため息をつく。


「……可哀想に…。何かの妖気に当てられたのね…。おそらくは……あそこの三つ編み悪魔……。あぁ、アタシああ言う女が一番嫌いだわ。……心配しないで、すぐに処置を施すから。さぁ、アタシに付いてきなさい。この娘は死なせないわ。」


 心強い味方を得て、僕とジョセフィンは、アゼルマを助けるために、シュイさんの後を追った。


「……ネロ……待っててね。君もすぐに助けるから。どうにかして……ネロとアゼルマを救う方法を考えなきゃ……。」


 僕はプリシーに魅入られて虚ろな目をして、血を流しながら口を歪ませて笑うネロを振り返らずに、ただ静かに、歩いていった。


ーーー

ーー


『……私としたことが……まさか気付かなかったなんて……何故学園にデヴァンチェッタなんかが忍び込んでいたのかしら……。


 

このままでは危ないわ。



わたくしの生徒達を、あんな悪魔なんかに、誰一人として、殺させたりしないわ。』


第18章 fin.

次回もお楽しみに!

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