第17章 変わってしまった親友
お久しぶりの本編です!!
あの学長先生と過ごしたラーゲルネインから数十日が経ち、ついに2学期が始まった。僕らは学園生活に戻り、日々授業に取り組んでいた。だが、そんな中、僕はとあることに頭を悩ませていた。
9月下旬のとある日。体育の授業で一緒になったラビニアに、僕はずっと悩んでいることを打ち明けた。
「…は?ネロが変?」
「…そうなんだよ。夏休みの終わりぐらいから、なんだか様子が変なんだ。」
「…例えば?」
「…何回話しかけても上の空で、暇さえあればボーッとしてるんだ。今までそんなことなかったし、しかも、僕が話しかけると、なんだか面倒くさそうにこっちを睨むんだ。僕だけじゃないよ。ジムが何かを尋ねても、ジャンがからかっても、何の反応もないんだ。明らかに最近のネロはおかしいんだよ。ラビニア何か知らない?」
僕がラビニアに事情を説明して尋ねると、ラビニアはバスケットボールを右腕の小脇に抱えたまま、眉を潜めて重たい口を開く。
「…そのことか。」
「…ラビニアやっぱり何か知ってるの?」
「…夏休み明けの時なんだけどよ。現代語学の授業であいつと一緒になってな。明らかにあいつおかしかったんだよ。その時、俺が見たあいつの行動と、さっきのお前の話でのあいつの行動は、嘘みてぇに一致する。」
「じゃあ…ネロはやっぱりボーッとしてて、話しかけたラビニアは、睨まれたりしたの?」
僕が驚いた様子で尋ねると、ラビニアは小さく頷く。
「…ど、どうしよう…。」
「…何かに取り憑かれてるってことはねぇんだよな。霊視しても何にも取り憑いてなかったしな。あいつに憑いてたのは、子キツネの生き霊だけだった。」
「…同じだよ。僕も霊視してみたけど、ネロにはポレットの生き霊しか憑いてなかったんだ。だから、霊の仕業じゃないってことだけは……分かるんだけど。」
『じゃあさ、徹底的に調べてみる?』
『このままじゃ、ネロがおかしくなりそうだからね。』
僕らが顔を上げると、前にはアゼルマとジョセフィンがいた。
「…アゼルマ。ジョオ。…」
「…あぁ、そういや、今日の体育男女合同だったな。」
「ネロのことっしょ?それならあたしも知ってるよ。ついこの間ね。あまりにもボーッとしてるからエポニーヌが怒ったんだよ。そしたらさ、ネロが『うるせぇ!俺はお前みたいなケバい上から目線な女は嫌いなんだよ!』とか言って、大喧嘩になったんだよ。」
「私もその瞬間を見ていたけど、明らかにいつものネロではなかったね。誰か別の人物を見ているようだったよ。」
「……そ、そんなことが……!?」
「…あいつ何やってんだよ。」
僕はアゼルマの話に唖然として言葉が出ない。ネロは普段、底抜けに明るくて、確かに馬鹿だなって思う瞬間もあるけど、友達思いで、他人を不愉快にさせるようなことなんて絶対に言ったりしないのに…。
「…ねぇ2人とも…。ネロがああなったのは、夏休みの終わりぐらいからなんだ。何か…これが原因じゃないかって思うことない?」
アゼルマとジョセフィンは顔を見合わせると、緊張した面持ちで口を開く。
「…思い当たる節ならあるよ。ネロが大きく変わってしまった、大きな要因…。」
「コゼット知ってるかな。あのね。2年にプリシー・ロッツォって言う女子生徒がいるんだけど…。」
プリシー・ロッツォ。その名前を聞いた瞬間に1人の女子生徒が頭に思い浮かぶ。同じく2年のラビニアは勿論知っているのか、ハッとしたような表情を浮かべる。
キャラメル色の髪を三つ編みにした、ヘーゼル色の瞳の優しそうな少女。夏休みの終盤に、ネロに話しかけてきたあの少女だ。
「……知ってるよ。あの三つ編みの女の子。確か…ネロとは、1学期まで、演奏学が一緒だったんだよね。」
「その通りだよコゼット。プリシー・ロッツォは私やラビニアと同じ第2学年の女子生徒だ。おっとりした雰囲気の優しい淑女なんだが……」
「そのプリシー・ロッツォが怪しいんだよ。」
「……怪しい?」
アゼルマの言葉に僕は小首を傾げる。
「どうやらプリシーはネロに好意を寄せているようでね、あの可愛らしさを駆使してネロに何度も言い寄っていたようなんだ。」
「ジョオ先輩の言う通りだよ。それは、あたしも見たことあった。あざといよ~あれは。それでさ、実はこの前ね。エポニーヌがプリシーを見て、あの先輩なんだか変な感じがするって言い出したんだよ。エポニーヌ、勘が鋭いから、あたしそれが気になってさ。普段は使わないようにしてる、あたしの聴力の能力を解放して、プリシーの周りの音を聞いてみたの。そうしたらさ…………
あり得ないくらいの
不協和音が
ずっと
響いてたんだよ。
ずっと聞いてたら……
きっと耳が引きちぎれてた。
だってその不協和音の中に
『ネロくんは私だけを見てれば良い』
って、強い念を感じたから。
だから……。
プリシーがネロに何かをしたのは……
きっと間違いないよ……。
そんなこと考えたくないけどね。」
「…いつものあの誰にでも優しい淑女の姿は、全部かりそめだって訳だよ……。」
暗い表情でボソッと呟いたアゼルマと、冷静に分析するジョセフィンに、僕とラビニアは戦慄した。プリシーの周りに響いていたあり得ない程の不協和音。
プリシー・ロッツォ。彼女が、ネロに何かをしたことが、アゼルマの言うように確かなことならば……
彼女は自分が好意を寄せるネロに対して……
一体なぜ……
そんな縛り付けるような念を……
蠢かせていたのだろうか……
第17章 fin.
次回をお楽しみに!




