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第14章 思い出の欠片

海編中盤です!

 水着に着替えた僕達は、海で遊び始めた。さっきこけたばかりだと言うのに、ネロは懲りもせず、今度は砂浜から走って海に浮かべたシャチの浮き輪に飛び乗ろうとする。


「とぅっ!!!」


「あ!ネロ危ないって!!」


 僕が叫んだ瞬間、ネロは水に塗れたシャチの浮き輪で足を滑らせてそのまま海に沈んでいく。


「あぁもう!!だから危ないって言ったのに!!」


「アハハ!!ネロリンは下手だねぇ!!じゃあ、このあたくしが手本を見せてあげましょうか!!」


「せ、先輩……!?ま、待ってエイミー先輩!!」


「スーパーミラクルファイティングジャーンプ!!!」


 エイミーは高く飛び上がると、持参したフラミンゴの浮き輪に飛び乗ろうとするが、結果はお察し。ネロと同じ結果になってしまった。


「……先輩もか……。ま、まぁいいや。僕もそろそろ海で遊ぼう。」


 僕は海に足を浸す。適度に冷たく、適度に暖かい、青くて美しい海。初めて友達と来る海。太陽の日差しは眩しいし、すごく暑いけど、そんなもの、目の前に広がるこの楽しい風景に比べたら、何てことない。


「ラビニア!入らないの?」


「……本当に海入らねぇとダメか?」


「…え?何言ってるの?」


 ラビニアはさっきから砂浜に立てたパラソルの下から動こうとしない。水着には着替えているものの、上には半袖のラッシュガードを着ており、脱ごうともしない。


「せっかく来たんだから泳ごうよ!」


「そうだぞラビニア!入ろうぜ!俺のシャチ貸してやるから!」


「いらねぇよ。」


 何故かラビニアは頑なに入ろうとしない。もしかして海嫌い……?と、そんなことを思いながら僕とネロは不思議そうに顔を見合わせる。


「ねぇ何やってるの?」


「グリンダ!丁度良かった!」


「ラビニアが海入らねぇって言うんだよ!お前からも説得してくれよ!」


 僕達は丁度その場に現れたグリンダに助けを求める。グリンダはリゾートチックなセパレートの水着を着ており、三つ編みの髪を遊びやすいように1つにまとめていた。


「……ラビニー海入らないの?何で?」


「……いや、別に……。特に理由は……ねぇ……。」


「…ないなら入ろうよ!ラビニー泳ぐのも得意だし、ネロ達とプールも行ってたでしょ?ほら!行こうよ!」


 グリンダはラビニアの腕をぐいっと引っ張って立ち上がらせる。ラビニアはグリンダの行動に困ったような顔をしており、少し恥ずかしそうにしている。


「……分かったよ。」


「やったー!」


 ラビニアはラッシュガードを脱ぐと、グリンダに手をひかれて行ってしまう。グリンダは嬉しそうだったが、ラビニアは少し照れた表情をしていた。


「あいつ……もしかして海入ろうとしなかったの、グリンダと一緒なのが恥ずかしかったから…だったのか……?」


「絶対そうだよ。……硬派なラビニアでも、やっぱり彼女の水着姿ってなると、何か思うところがあったんだろうね……。」


「リア充爆発しろ。」


「妬んでもしょうがないよ。」


「っていうか!見たかコゼット!?」


「な、何を……!?」


「ラビニアのあの腹筋だよ……!完全な細マッチョだったぜあれ!!俺らなんか……。」


 ネロと僕は自分の上半身を見る。


「……僕達って……はっきり言うとナヨナヨだよね……。」


「……筋トレ……頑張ろうな……。」


「……うん。」


 その時、ネロの顔に大量の水がかかる。


「ね、ネロ!!!」


『わーい!やほー!』


「あ!リーフさん!!」


 下を見ると、グリンダの使い魔であるリーフさんが、大きな水鉄砲を持って手を振っていた。頭の葉っぱの部分には、小さなサングラスをかけている。


「……葉っぱテメェ……!!何しやがる!!」


「……リーフさんよく、その小さな身体でそんな大きな水鉄砲持てたね……。」


「……そう言う問題じゃねぇだろ!!おい葉っぱ!!お前にそんなあくどいイタズラを仕込んだのはどこのどいつだ!!」


 ネロはリーフさんに指を指す。


「……グリンダ……じゃないよね。じゃあ……エイミー先輩か……。」


「……私よ。」


「あ、アン!!」


 アンは赤いチェックのワンピースタイプの水着を着て現れた。隣にはダイアナとジョオもおり、アンのやったことを苦笑しながら見ている。


「……アン!!お前か!!犯人は!!」


「……面白いと思ったから、この水鉄砲をリーフさんに渡して、ネロを攻撃するように指示したのよ。」


「……私、やめた方が良いって言ったんだけど……。」


「アンがどうしてもやるって聞かなくてね…。止められなくてすまなかったね。」


「…ダイアナもジョセフィンももっとちゃんと止めてくれよ!!!」


「っていうか……グリンダ怒んないのかな……。」


 僕は少し怖くなり、グリンダの方をちらりと見る。


「ラビニー見てみて!ここのタイドプールハコフグさんがいるよ~!」


「…青い魚とかもいるな…。」


「可愛い~!」


「……だ、大丈夫そうだね……。」


 その時、ポレットが走ってきてネロに飛び付く。


「ポレット!!……お前だけは俺のこと心配してくれるんだな……。」


「……さぁ、気を取り直して、遊びましょ。ダイアナ。ジョオ姉様。」


「…切り替え早いわね……アン。」


「……あ、あぁ……そうだな。」


「謝れよアン!!!」


 こんな感じで、僕達は海を楽しんだ。そして、夕暮れになって、ダイアナの叔父さんが海まで迎えに来てくれて、みんなで車に乗って、叔父さんの別荘に行った。


「……わぁ……まるで体育館だね……。大きい。」


「…素敵ね…叔父さんの別荘。」


「じゃあ、みんな部屋に行きましょう!案内するわね!」


 ダイアナに案内されて、僕達は別荘のゲストルームに歩いていく。


「部屋は男女分かれてるから、男子3人はそっち。ダイアナとアンはこっち。私とグリンダとエイミーは真ん中の部屋。いい?」


「…同じ部屋で良かったわね。ダイアナ。」


「ええ!アン!」


「僕達…なんか寮の時と一緒だね。」


「そうだな……。よく俺達の部屋で…この3人でゲーム大会してるからな……。」


「あんまり変わんねぇな……。」


「…ラビニー部屋別々なの?」


 グリンダは少しシュンとしている。


「…こっちに遊びくればいいだろ?」


「……うん!!」


「…ジョセフィン。こいつら部屋一緒の方が良いんじゃねぇの?」


「……ダメだ!!!私の可愛いグリンダをラビニアに一人占めさせる訳にはいかない!!」


「同意見だねジョオ。グリンダはこのあたしのいもーと!!!ラビニーに一人占めなんてさせない!!」


 ジョオとエイミーがグリンダの前に立って堂々と宣言する。


「……何このセコム……。」


「姉と親友のダブルセコム……。」


「…かかってこいよお前ら。」


「こっちもやる気なの!?」


「大乱闘ならゲームだけにしろよな!!」


 こうして部屋決めが終わり、僕達は別荘の庭に出た。理由は、バーベキューをするからだ!!


『みんな海ではしゃいで疲れたろう!!たっくさん用意してあるから、どんどん食べな!!』


 ダイアナの叔父さんはとても良い人で、とっても豪華なバーベキューを用意してくれた。


「わぁ!!僕初めてだよ!!バーベキュー!!どれから焼く!?僕ホタテが食べたいな!!」


「俺はとうもろこしだぁぁ!!」


「なってないわね2人とも!!まずはマシュマロに決まってんでしょ!?」


「……バーベキューって……お肉がメインじゃないの?」


「…そ、そうよね…。なんだか、みんなすごくはしゃいでるわね。」


「……仕方ないわよダイアナ。」


「あらアン。いつもよりも楽しそうじゃない。」


「…当たり前よダイアナ。親友や友達と過ごす夏休み……。こんなに贅沢で楽しいことってないわ。」


 アンとダイアナは2人で楽しそうに話している。


「おいお前ら!!まずは肉だろ!!焼くぞ!!」


「た、隊長!!バーベキュー隊長だ!!」


「本当だぁ!!グレゴール隊長!!」


「ラビニーバーベキュー隊長だったの!?わーい!隊長!!」


『わーい!やほー!』


 その時、どこからともなくリーフさんがやって来て、バーベキューコンロの上にハーブを置いて焼いていく


「……お、おい!!な、何やってんだ!!」


『やほー!』


「リーフさんの主食はハーブなんだよ~!」


『わーい!』


 リーフさんは焼いたハーブを食べ始める。


「……と、とにかく焼くぞ!!」


 ラビニアは焼くのが上手く、肉も魚も野菜も良い具合に焼き上がっていた。


「……お、美味しい!!すごいよラビニア!!香辛料が効いててすごく美味しいよ!!」


「さすが隊長!!完璧だ!!」


「…いい加減バーベキュー隊長って呼ぶのはやめてくれよ。」


「ラビニーすごいね!美味しい!」


「……そ、そうか……?なら……もっと食え…。」


「…グリンダにだけ甘くね~?ラビニーよぉ。姉ちゃんにもちょーだーい。」


「…自分で取れ。」


「つめたー!ラビニーつめたーい!!」


「まぁまぁエイミー。私のアサイーボール一緒に食べるか?」


「食べます!!!」


「…ジョオ姉様はオシャレよね。アサイーボールなんて。」


「姉様、身体に良いものと美容にいいものが好きだから。」


 その時、グリンダがスイカを持ってくる。


「お姉ちゃんと一緒にスイカ切り分けて来たよ~。」


「あ!本当だ!スイカ!」


「リーフさんとお姉ちゃんがつまみ食いしようとして大変だったの。」


「…リーフさんは分かるけどエイミー先輩も……?」

 

 それから、僕達はしばしの間バーベキューを楽しんだ。バーベキューを食べた後はみんなでデザートにスイカやアイスを食べたり、とても有意義な時間を過ごした。そして、お風呂を済ませた僕達は、部屋でゲームをして遊んでいた。


「なぁなぁ。ヴァリエレース飽きたくね…?」


「……まぁ、いつもやってるしね……。」


「じゃあヴァリエフェスティバルやるか?」


「やるやる!!なぁなぁ、女子も呼ぶ~?」


 明らかにネロはニヤニヤしており、僕は呆れた顔をする。


「……ネロ……顔がいやらしい……。」


「……こ、コゼット!!そんなことねぇぞ!!た、ただ、いつものメンツじゃちょっと飽きたなって思っただけで……。」


「寮ならよくアゼルマ来てくれるから四人プレイできるんだけどなぁ……。」


 その時、部屋のドアがノックされて、グリンダが入ってくる。


「あれ?グリンダ!」


「みんなゲームやってたの?」


「そうなんだよ!ってか、グリンダはどうしてここに?もしかして……俺らと遊びたかったとか!?」


「ううん。もうすぐ花火やろうかって話してて。」


「……あ、そうだったね!」

 

「…じゃあ、一旦外行くか。」


「ラビニー打ち上げ花火持ってきた?」


「あぁ。忘れてねぇぞ。」


「よし!!じゃあ今世紀最大の大花火大会だ!!」


「ネロ……ちょっと大規模すぎるよ。」


 こうして僕達は、笑いながら持参した花火セットを持って外に出た。


第14章 fin.

次回で海編終わりです!楽しみにしててください!

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