表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/38

6話 宮廷魔法使い

 私にとって、世界は色褪せて見えていた。


 頭の悪い者が多い。


 単純に知識が足りていないだけじゃなくて。

 根本的な常識が欠けている者が多い。


 だから、常に世は混乱している。

 バカがバカをして。

 秩序が乱れている。


 上に立つ者が賢いのなら、もう少しまともな世界になっていただろうけど……

 あいにく、上に立つ者もバカが多い。


 バカが国を動かして。

 バカを量産する。

 どうしようもない。

 そしてまたバカが上に立つ。

 どうしようもない悪循環だ。


 だから私は、世俗から身を切り離した。

 そして、大好きな魔法を思う存分に研究した。


 魔法は好きだ。

 勉強した分だけ、しっかりと応えてくれる。

 深い知識が必要になり、この身を高みに押し上げてくれる。


 楽しい。

 楽しい。

 楽しい。


 やっぱり魔法は最高だ。

 世のバカ共と関わる必要なんてない。

 一人でとことん研究していこう。


 ……なんて思っていたのだけど。


 研究には金が必要。

 世知辛い。


 そして私は、比較的マシに思えた国の誘いを受けた。

 宮廷魔法使いとなり、仕事をして……

 そこで得た金を元に研究をする。


 最初は、それでまあまあ満足していた。

 仕事はめんどくさいけど、大好きな魔法の研究ができる。


 ただ……


 私の振る舞いが気に入らないのか、同僚などからくだらない嫌がらせを受けるようになった。

 やっかみと嫉妬。

 なんてめんどくさい。


 金は得られるものの、これじゃあ研究に集中できない。

 やっぱり、国はつまらない場所だ。

 こんなところにいる必要はないのかもしれない。


 潮時かな。


 今の研究が一段落したら国を出よう。

 幸い、それなりの蓄えはある。

 しばらくの間、研究には困らないはずだ。


 そんなことを考えていたある日、とんでもないものと出会う。


 この国の王子は才能の塊だった。

 いや。

 そんな言葉で表せるものじゃない。

 『化け物』と表現する方がぴったりかもしれない。


 それほどまでに圧倒的な魔力量。

 六歳にして精密すぎるコントロール。


 素晴らしい!


 私は彼の本質に気づいた時、歓喜のあまり失神しそうになった。


 なんていう才能。

 なんていう素材。

 彼を調べれば、私の研究はさらに捗る。

 さらなる高みに登ることができる。


 私は、真面目に彼に魔法を教えることにした。

 きちんとした師を得た彼が、どこまで成長するのか?

 とても楽しみである。


 色褪せていた世界が急に輝いて見えるようになった。

 つまらないと思っていた世界がとても楽しくなった。


 ノクト王子が全てをひっくり返してくれた。


 いい。

 実にいい。


 彼の師として。

 魔法を愛する者として。

 徹底的に鍛えることにしよう。

 そして、魔法の高みに導いていこう。


 いや。


 あるいは彼ならば、私でさえ到達できない階位に踏み入ることも……


「くふふ♪」


 ダメだ。

 わくわくが止まらない。

 ドキドキが止まらない。


 ノクト王子は最高だ。

 最高すぎる。


 これから、徹底的に鍛えよう。

 私の全てを授けるつもりで教えよう。

 そうすることで、私もまた、とても満ち足りた日々を過ごすことができるだろう。


「ふふ。がんばろうねぇ……王子様♪」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

◇◆◇ お知らせ ◇◆◇
既存の作品を大幅にリファインして、新作を書いてみました。

娘に『パパうざい!』と追放された父親ですが、辺境でも全力で親ばかをします!

こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

― 新着の感想 ―
ひどいな。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ