54話 お兄ちゃんお姉ちゃん
ナナの家庭教師……
のフリをした護衛が本格的に始まった。
ナナが家にいる時は家庭教師をして。
勉強以外の時間は友達と接して、他愛のない話をして。
夜は一緒にごはんを食べて。
シオンは一緒にお風呂にも入ったりして。
寝室は別々だけど、でも、なにかあればすぐに駆けつけられる距離に。
昼。
勉強以外の時間でナナが外出する時は、興味を持った感じで同行して。
あるいは、そっと後をつけて。
そんな感じで始めた護衛依頼。
わりとうまくいっている感じで、今のところ、ナナの周囲で問題は起きていない。
もちろん、ナナ自身も無事だ。
そして、今日も護衛は続く。
――――――――――
「今日は、ぬいぐるみを探したくて」
街をゆっくりと歩くナナは、俺とシオンを見つつ、笑顔で言う。
今日はナナの買い物。
俺達も誘われて一緒することに。
護衛の依頼があるからちょうどいいんだけど……
それだけじゃなくて、近い世代の友達は初めてだから、一緒に出かけることは素直に楽しい。
「……」
シオンは、じーっとこちらを見て。
それに気づくと、何事もなかったかのように視線を外す。
最近、こういったことが多いんけど……
うーん、どうしたんだろう?
「えへへ♪」
ふと、ナナが嬉しそうに笑う。
「どうかした?」
「最近、クロードさんとシオンさんといつも一緒で、それが嬉しくて」
「俺も楽しいよ」
「はい、私も」
「よかったです。前にも言ったけど、お兄様とお姉様ができたみたいです♪」
けっこうなご機嫌だ。
今にもスキップでもしそうな感じ。
「……あの、お願いがあるんですけど」
「うん?」
「えっと……手を繋いでも、いいですか?」
ナナは、どきどきという感じで俺とシオンを見た。
もっと仲良くなりたいとか。
スキンシップをしたいとか。
そんな感じかな?
「もちろん」
「どうぞ」
俺とシオンは笑顔を浮かべて、それぞれ手を差し出した。
「えへへ……ありがとうございます」
ナナは、俺とシオンと手を繋いだ。
ちょうど、俺達の間に挟まれるような感じ。
こうしていると、家族というか……
本当の兄妹になったような気分だ。
妹がいたら、こんな感じなのかな?
……わからないな。
俺は、家族に関する記憶がない。
どんな父親なのか、どんな母親なのか。
兄弟がいたのか。
まったくわからない。
気がついた時は一人で、汚れた裏路地にいて。
そこで、日々を生きるため、毎日が命がけで。
それから親方に拾われて……
だから、家族についてはよくわからないけど……
「えへへ♪」
嬉しそうにするナナを見ると、なんだか胸が温かくなる。
この気持ちは大事にしたいな、と思った。
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