53話 家庭教師
「えへへ♪」
翌朝。
俺とシオンとナナ。
三人で朝食を食べていると、ナナが嬉しそうに笑った。
「どうかした?」
「お二人と一緒に、またごはんを食べられることが嬉しくて」
「そっか」
「これから、私の家庭教師をしてくれるんですよね? 改めてありがとうございます」
俺とシオンは、夫妻からの依頼を請けた。
ただ、それはナナには秘密なので正直に話すことはできない。
そこで、ナナの家庭教師をする、という嘘を。
これならナナと一緒にいることができる。
正直に理由を話さなくても密かに護衛できる。
真実ではないものの、全て嘘を吐いているわけではない。
その方が話を進めやすいだろうということで、このような設定に。
「お兄様とお姉様ができたようで、私、嬉しいです」
「俺も、ナナみたいな妹がいたら嬉しいよ」
「本当ですか? えへへ、ありがとうございます♪」
ナナはとてもご機嫌だ。
ただ……
「……」
心なしかシオンが不機嫌そうに見えた。
どうしたんだろう?
俺、なにもやらかしていないよな……?
「クロードさん、シオンさん」
「あ、うん。なに?」
「今日はどのような勉強を?」
「えっと……」
……どうしよう?
俺、ずっと鉱夫をやっていたから、体を動かすことには自信はあるけど、頭にはまったく自信がない。
最低限の読み書きはできるけど、それくらいだ。
ど、どうすれば……?
「まずは、ナナさんが今、どれくらいできるのかを知りたいです」
迷っているとシオンが答えた。
「ナナさんの今を知ることで、これからの方針を決めていきたいと思います」
「わかりました。えっと……」
「本を貸していただけますか?」
シオンはナナから本を受け取る。
パラパラとめくり、高速で目を通した。
「……はい。では、今から口頭でいくつか問題を出すので答えてください。わからない時はわからないで構いません。ただ、一つの問題につき30秒以内で答えてください。それ以上かかる時は、次の問題に移ります」
「わかりました」
「では……」
シオンはスラスラと問題を出して、ナナは、いくらか迷いつつも答えていく。
おぉ……
すごい。
シオンは完璧に家庭教師をこなしていた。
「……はい、ここまでで大丈夫です」
「ふぅ」
「驚きました。ナナさんは、とても頭がいいのですね」
「そうでしょうか? けっこう間違えたり答えられなかったりしましたけど……」
「確かにそうですが、ナナさんの年齢を考えると、十分に及第点です。というか、それ以上ですね。この本、もっと上になってから読むべきものです」
「えへへ」
「これなら、そうですね……ちょっと考えるので、待っててくださいね」
「はい!」
ナナは嬉しそうに頷いて机に向き直る。
まずは一人で、という感じなのだろう。
「……シオン」
シオンにだけ聞こえる声で、そっと問いかけた。
「なんだか……すごいね」
「なんのことでしょう?」
「本当の家庭教師みたいだったよ」
「ありがとうございます。故郷にいた頃、色々と勉強をしていまして……あと、子供達に勉強を教えていたこともありまして」
「そうなんだ?」
「故郷では、助け合いが基本でして。私は、狩りに参加したり。それと、今言ったように勉強を教えたりしていました」
「なるほど」
すごい、の一言に尽きる。
戦うことができて、頭もよくて。
他にも家事ができて、雑学も持ってて。
シオンって、なんでもできるんだな。
「すごいね、シオンは」
「……私からしたら、ご主人様の方がすごいのですが」
「え、なんで? 俺なんて、体を動かすことくらいしかできないよ」
「その体を動かすこと関連にすさまじく特化されているところがすごいと思うのですが……」
そうかな?
知識を持っていることの方が大きな武器になると思うのだけど……
そこは個人の価値観の差かな?
「でも、それならそれでちょうどいいのかも」
「え?」
「俺は体を動かすことを担当して、シオンは頭脳を担当。ちょうどいい感じに役割分担されていて、きっと、俺とシオンは相性がいいと思う」
「……」
シオンの長い耳が赤くなる。
「シオン?」
「……ご主人様は、そういうことをさらりと言うところがずるいと思います」
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