50話 オーシャンテイル二日目
「今日は、私が街を案内しますね!」
ナナが元気いっぱいに言う。
日を跨いで翌日。
俺とシオンは、ナナの案内で街の観光をすることに。
遥か北を目指す旅の途中だけど……
目的地に一直線で、一つも寄り道をしない……というのはあまりに寂しい。
もちろん、シオンを故郷に送り届けることは大事だ。
でも、それだけじゃなくて、たくさんの思い出を作ってほしい。
そうして、たくさん笑顔になってほしい。
それはきっと、とても大事なことだと思うから。
「お二人は、もう海に行かれたんですか?」
「うん、そうだね」
「なら、今日は違う海を案内しますね」
「違う海?」
「ふっふっふ。それはお楽しみです♪」
ナナは楽しそうに笑いつつ、俺達を色々なところに案内してくれる。
「……ご主人様」
俺にだけ聞こえる声で、そっとシオンが声をかけてきた。
「観光はいいのですが、案内をナナ様にお任せしてもよろしいのでしょうか……?」
シオンは、昨日のナンパ男を思い出しているのだろう。
また同じようなことが起きたら?
「なにかあったら、俺達が守ればいいさ。それに……」
「それに?」
「今日は、ちゃんと護衛の人がついてきているみたいだから」
軽く周囲を見回す。
街の人と観光客がたくさん。
でも、その中にうまく溶け込んでいる、鋭い気配を持つ人達がいた。
鋭い、と表現したものの敵意は感じない。
ナナの動きに合わせて移動して、周囲に気を配っている……つまり、密かにつけられたナナの護衛だろう。
「ナナ様の護衛ですが……ご主人様は、よく気づきましたね。私は、そういう探知には長けている方なのですが……恥ずかしいです」
「悪い方向に考える必要はないって。俺はただ、そういうことには慣れているからさ」
鉱山は広く、迷路のように入り組んでいて、おまけに粉塵などで視界も悪い。
目があまり頼りにならないのだ。
なので、周囲の気配を探る術を自然と身につけていた。
……という話をしたら。
「失礼ですが、そのようなことができるのはご主人様だけかと……」
苦笑で返されてしまう。
なぜだ?
――――――――――
「じゃじゃーん! ここが、もう一つの海ですよ!」
「「おぉ……!」」
ナナが案内してくれた場所に移動して、俺とシオンは思わず感動の声をこぼした。
案内された場所は、街を一望できる丘にある公園だ。
特に遊具などはなくて、のんびりと過ごすためのところなのだろう。
そんな公園の展望台からは、オーシャンテイルの街並みと海が広く遠くまで見ることができた。
街は太陽の光を受けて輝いていて。
その奥に、雄大な海がどこまでも広がっている。
それらを包み込むのは青い空。
全てが一体となって調和がとれていて、まるで一枚の絵画のよう。
とても綺麗だ。
その一言に尽きる。
「……」
「シオン?」
シオンがちょっと涙ぐんでいた。
ただ、笑顔だから悲しいわけじゃないと思うけど……」
「申しわけありません……本当に、本当にとても素敵なところなので、故郷を思い返してしまって……」
「……そっか」
シオンの手を握る。
強く。
それは、必ず故郷に連れて行くから、という俺の意思の現れだった。
「どうですか、お二人とも?」
「うん、すごく素敵なところだね」
「このような場所に案内していただき、ありがとうございます」
「えへへ。よかったです、喜んでもらえて」
ナナがにっこりと笑う。
年相応の笑顔だ。
貴族で、本来なら雲の上のような存在だけど……
でも、そんなこともないんだな。
貴族だとしても、俺達と変わらない人間だ。
こうして普通に笑顔を交わすことができる。
そんなことを学ぶことができた。
シオンのために始めた旅だけど……
俺も、色々なことを知ることができて、とても勉強になっていた。
「それじゃあ、次は美味しいスイーツが食べられるお店に……」
「……これはこれは。ナナ嬢ではありませんか」
ふと、そんな声が乱入してきた。




