1話 親方、空からダークエルフの女の子が!
もう一つ、新作を書いてみました。
こちらも読んでいただけると嬉しいです。
カーンカーンカーンと鉱石を掘る音が響いていた。
坑道の中は暗く、狭く、おまけに暑い。
冬でも汗で全身がびしょ濡れになってしまう。
それでも、俺達は手を止めない。
鉱石を掘る。
掘って掘って掘りまくる。
なぜなら、俺達は鉱夫だからだ。
「クロード、そろそろ休憩にするぞ」
「あ、親方。はい、わかりました!」
現場監督にそう声をかけられて、鉱石を掘る手を止めた。
本当は監督と言うべきなのだけど、みんな、親しみを込めて親方と呼んでいる。
「ちょっと待ってくださいね。掘ったヤツ、全部、運び出しちゃうんで」
「お前、一人でそれだけの量を掘ったのか? 相変わらず、無茶苦茶だなぁ……」
「親方の教えがいいからですよ」
「俺は大したことはしてないけどな」
そうは言うけれど、親方は、両親のいない俺の面倒を見てくれた。
そして、俺に仕事を与えて、やり方をきちんと教えてくれた。
ものすごく大したことをしてもらっている。
俺が今、ここにいられるのは、全部、親方のおかげだ。
そんな親方の役に立ちたくて仕事を覚えて、今まで、一生懸命励んできたけど……
少しは力になれているのだろうか?
そう言うと、親方は苦笑した。
「少しどころか、とんでもなく、だな。クロードのおかげで、採掘量が以前の百倍くらいになったんだぜ?」
「親方ぁ……そういう冗談はいいですから」
「いや、本当のことなんだがな……どうもお前は、謙虚が過ぎるというか、自分のことをちゃんと理解してないっていうか」
「よし、終わり!」
「話しながらでも作業は早いな」
「親方やみんなに鍛えられましたからね。それじゃあ、休憩に入ってきます」
「おう、ゆっくりしていいぞ」
俺は坑道の外に出て、鉱山の入り口に作られた、鉱夫用の施設へ。
この施設で休憩を取ることができる。
鉱夫の寮も設置されていて、俺は、そこで日々を過ごしていた。
「よう、クロード。今日も元気だな!」
「みんなに元気を分けてもらっているからね」
「ってか、弁当それだけなのか? 仕方ねえな、俺の唐揚げを分けてやるよ」
「本当に? ありがとう!」
「午後からは、俺と一緒に採掘だよな? 頼りにしているぜ」
「任せてくれよ! のんびり見学できるように、めっちゃ掘ってやるさ」
鉱夫仲間と色々な話を交わす。
見た目はちょっといかついけど……
でも、みんな、とても優しい。
俺が鉱夫を続けられているのも、仲間のおかげだ。
色々と支えてくれなければ、俺みたいな若造、すぐに潰れていただろう。
「そういえば」
鉱夫仲間が思い出したように言う。
「クロード、お前、まだ寮住まいなのか? お前はまだ十八だけど、でも、ここで働いてもう十年になるだろ? だいぶ金も溜まっているだろうし、自分の家を持ったりしないのか?」
「持ち家には憧れるけど、半人前の俺にはおこがましいって。もっと成長して、一人前になってからじゃないと」
「ははは、クロードが半人前なら、俺はどうなるんだよ。まったく……謙虚が過ぎるヤツだよな、お前は」
「いや、事実でしょ」
「ま、そういうところもクロードの良いところか。ほれ、俺のフルーツをやるよ。これでも食って大きくなって、早く一人前になれよ」
「ありがとう!」
また弁当のおかずが増えた。
みんなに感謝だ。
――――――――――
しっかりと弁当を食べて。
軽く横になり、休憩。
そうして元気になったところで、外に出る。
「よし! 午後もいっぱい掘るか!」
「おーい、クロード!」
「あっ、親方!」
「休憩は終わったか? 仕事に戻るぞ」
「はい、わかり……え?」
ふと、それに気がついた。
見上げた先は青い空。
その中を、白い雲がゆっくりと泳いでいて……
それともう一つ。
なにかが落ちていた。
高く、高く、高く。
落ちる、落ちる、落ちる。
どこまでも低く、地面に吸い込まれるように落ちていく。
あれは……
「女の子!?」
間違いない。
女の子が空から落ちてきた。
しかも、普通の女の子じゃない。
耳は長く、肌は陽に焼けたような感じ。
「親方、空からダークエルフの女の子が!?」
「うん? なんだって?」
ダメだ。
親方は今、発掘作業に必要な魔道具の近くにいるせいで、俺の声が聞こえていない。
いちいち許可を取っている時間はない。
「あっ、おい!? クロード!?」
「すいません、説明は後で!」
げんこつをもらうことは覚悟しよう。
俺は、全力で駆け出した。
女の子が落ちてくるところに急ぐ。
間に合え。
間に合え。
間に合え。
「間に合えぇえええええええぇぇぇっ!!!」
跳躍。
女の子を宙でキャッチした。
跳んだ先は崖。
でも、それはそれで都合がいい。
あのまま受け止めても、衝撃を殺すことができず、女の子は死んでいたかもしれない。
でも、こうして崖に着地して、斜面を滑りつつ、落下の衝撃を少しずつ殺していけば……
「……う、うまくいった」
崖を滑り降りて。
それでいて、しっかりと女の子を受け止めることができて。
どうにかこうにか、無事に着地することができた。
「……ぅ……」
腕の中の女の子は意識を失ったまま。
ただ、見た感じ怪我はしていない。
落下のショックで気絶しているだけだと思う。
とはいえ、素人判断は危険か。
「おーーーい、クロード!!! 大丈夫か!?」
崖の上から親方の声が降ってきた。
見上げると、仲間達も見える。
「はい、大丈夫です! ただ、ちょっと厄介なことになっていて……!」
――――――――――
空から降ってきたダークエルフの女の子。
いったい、彼女は何者なのか?
どうして空から降ってきたのか?
疑問は尽きない。
そして……
この出会いが俺の人生を大きく変えることになるのだった。
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