↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
PR

百合短編

私たちのひな祭り

作者: 転生新語
掲載日:2025/03/04

 私は語学(ごがく)学校(がっこう)で英(えい)会話(かいわ)など教(おし)えている。同僚(どうりょう)のジョディはアメリカ人(じん)女性(じょせい)で、互(たが)いのオタク趣味(しゅみ)が合(あ)って、あっという間(ま)に仲良(なかよ)くなった。アニメで日本語(にほんご)を覚(おぼ)えた彼女(かのじょ)は、日本(にほん)の文化(ぶんか)にも興味(きょうみ)津々(しんしん)である。


「もう三月(さんがつ)ね。ねぇ、ひな祭(まつ)りって知(し)ってる ? 私の誕生(たんじょう)日(び)って三月(さんがつ)三日(みっか)なのよ」


「オー、ガールズ・フェスティバル! 知(し)ってますヨ、知識(ちしき)だけですケド。あれは何(なん)で、男(おとこ)の人形(にんぎょう)もあるんですカネ? 女(おんな)の子(こ)の祭(まつ)りに男(おとこ)、不要(ふよう)デス」


「さぁ、それは考(かんが)えたことなかったけど」


「女(おんな)の子(こ)だけで集(あつ)まる行事(ぎょうじ)があっても、いいんデスヨ。大統領(えらいひと)には、それがわからないんデス。男(おとこ)、出(で)しゃばり過(す)ぎ、思(おも)いマス」


 こんなに熱(あつ)く、ひな祭(まつ)りを語(かた)られるとは思(おも)わなかった。昼(ひる)休(やす)みの軽(かる)い雑談(ざつだん)だったんだけどなぁ。


「何(なん)だか、ごめんね。熱(あつ)く語(かた)ってるところ申(もう)し訳(わけ)ないけど、私の家(いえ)、ひな人形(にんぎょう)って飾(かざ)ったことないのよ。家(いえ)が貧(まず)しくてさ」


「アー。最近(さいきん)は、飾(かざ)らない家庭(かてい)も多(おお)いらしいデスネ。じゃあ誕生(たんじょう)日(び)だけ、祝(いわ)われタト」


「ううん。言(い)ったでしょ、私の家(いえ)は貧(まず)しかったって。私、誕生(たんじょう)日(び)を祝(いわ)われたこともないの」


 十代(じゅうだい)の頃(ころ)は苦労(くろう)したものだ。今(いま)となっては笑(わら)い話(ばなし)だが。懐(なつ)かしく思(おも)っていると、ジョディが両手(りょうて)で、私の手(て)を握(にぎ)ってきた。


「……わかりまシタ。一緒(いっしょ)にやりまショウ、ガールズ・フェスティバル!」




 三月(さんがつ)三日(みっか)の夜(よる)、ジョディは一人(ひとり)暮(ぐ)らしの私のマンションを訪(おとず)れてきた。誰(だれ)かを招(まね)くなんて初(はじ)めてで、亡(な)くなった母(はは)が知(し)ったら喜(よろこ)んだことだろう。シングルマザーだった母(はは)には、私が楽(らく)をさせられるまで生(い)きてほしかったのだが。


 私が簡単(かんたん)に、ひ(・)な(・)あ(・)ら(・)れ(・)など用意(ようい)して、ジョディはお酒(さけ)や食(た)べものを持(も)ってきてくれた。「これがアメリカ式(しき)、バースデーパーティーですヨ!」と言(い)っていて、本当(ほんとう)かは知(し)らないが楽(たの)しい。酔(よ)った私たちの距離(きょり)は近(ちか)くなった。


「……今日(きょう)、帰(かえ)りたくないデス。わかるでショウ?」


 うん、良(よ)くわかる。オタク話(ばなし)を通(とお)して、私たちは互(たが)いの深(ふか)い部分(ぶぶん)をさらけ出(だ)していたので。


「うん。私も貴女(あなた)を、帰(かえ)したくない」


「良(よ)かったデス。私のひな壇(だん)に、顔(かお)を埋(うず)めてくだサイ」


 ジョディが胸(むね)を寄(よ)せて笑(わら)う。これはアメリカン・ジョークなのかなぁと思(おも)いながら、酔(よ)った頭(あたま)をそこへ到達(とうたつ)させた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。