さん
「望夏先生、ちょいとご質問ですけどもね、『泥を塗られるか、汚泥を捨てるか』どうされます」
はてさて、二日考えてもやはり妙案など思い浮かばなかった。
終いには焦りと苛立ちと眠気で頭がおかしくなってしまったか、原稿用紙には『怠惰なものら』などというリストが出来上がっていた。
〝
怠惰なものら
一、わたし
一、自叙伝なるもの
一、妙案
〟
そんなものを書き上げて満足したか、そのまま寝落ちしていた私である。
最早昨晩の自分に呆れと苛立ちとを隠しきれず、『一、わたし』と言うところには朱色で大きく丸をつけてやった。
そんな馬鹿げたことをして、もう良いや、と適当に机を片付け、望夏先生の前で、今に至る。
「汚泥を大人も見惚れる泥玉にでもしてやろうか」
「と、言いますと」
「自叙伝は、書け」
これまた、私としては望んでいないのに、望夏大先生のお言葉とあらば、と体が勝手に動き出す。しかしまあ、このまま行けば同じこと。愚問を垂れ流すは一度にて十分だ。
まあまあ、やはりまあ、望夏先生にも責任というのがあると思うのだ。
私に自叙伝を書け、とおっしゃるが、その私にそんな能力など、欠片もない。一先ず、能力そのものを、とは言わずとも能力を手に入れる妙法など、教えてもらわねば割に合わぬというものだ。
「では、望夏先生、どの様にして書けば佳いなど、ご助言ばかり頂けませんか」
そんなことを私が申してみれば、望夏先生、少しばかり考える素振りをされて、ふと机上の紙を一枚、乱雑に取られたかと思えばばばばっと何か書きなぐり、見せてこられた。
〝
無駄を羅列せよ
〟
はて、無駄を羅列とな。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
知り合いなどに勧めていただけると、広報苦手な作者が泣いて喜びます。
いいねや評価、ブックマークなどもあります。是非、気が向いたらボタンを押すなりクリックなり、していってください。