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第5話(3)素質あり

「あ、悪魔とは⁉」

「見えているだろう。目の前のあれのこった」

 ブレムさんが指を差した先には、全身が黒一色、やや小さめで、二本足で立っていて、頭に二本の角が生えており、尻尾が尖っており――矢印のような形をしている――槍を手に持った存在がいた。

「!」

 わたしは単純に驚いてしまう。

「……」

「お、おおう……」

 黒一色の存在がこちらに向かって動いてきたので、わたしは後ずさりをしてしまう。そんなわたしの様子を見て、ブレムさんは顎をさすりながら呟く。

「へえ……」

「な、なにか?」

 わたしはブレムさんに問う。

「いや、感心していたんだよ」

「感心?」

「ああ」

「……もしかしてわたしに対してですか?」

 わたしは自らを指差す。

「他に誰がいるよ」

「……感心する要素ありましたか?」

「いや、普通だったなら、悪魔と相対した瞬間に、ガタガタと震え出して、周囲に向かって、『助けてくれー‼』って泣き叫ぶもんなんだよ」

「そ、そうなんですか?」

「そうなんだよ。すっかりビビっちまってな」

「はあ……」

「アンタ、オイラにはビビっている様子だったのに、悪魔にはビビらねえんだな。ははっ、おもしれー……」

「おもしろくはないです!」

 わたしは食い気味にブレムさんの言葉を否定した。この局面で『おもしれー女』認定されて良いことは絶対無い気がするからだ。

「そ、そうか……」

「そうです!」

「……いや、やっぱりおもしれ……」

「おもしろくはないです‼」

「……いやいや、おもし……」

「おもしろくないです!」

「……」

「………」

「いとおかし……」

「いとおかしくはないです!」

「インタラスティング……」

「アイアムノットインタラスティングガール!」

「む……」

「OK⁉」

「むう……」

「アンダスタン⁉」

「あ、ああ……」

「……ご理解頂けて良かったです」

 わたしはうんうんと頷く。

「ま、まあ、それはともかくとしてだ……」

「はい」

「何故にビビらねえんだ?」

「え、それは……だって……」

「だって?」

「……ベタベタなんですもん」

「は? 触ったのか?」

「いや、感触的な話ではなくてですね、なんというか……ビジュアル的なことです」

「ビジュアル的?」

「ええ、だって見てくださいよ、虫歯の擬人化イラストみたいじゃないですか?」

「ぎ、擬人化イラスト?」

「見たことありませんか? 歯医者さんとかに貼ってあるポスター」

「ああ……なんとなく、言いたいことは分かった……」

「だから、どちらかと言えば……親しみすら覚えます」

「はあっ⁉」

 ブレムさんは驚く。

「? なにか?」

 わたしは首を捻る。

「い、いや、アンタ、思ったよりも大物かもな……」

「そ、そんなことはありませんよ」

「いいや、とにかく常人ではないようだ」

「いえいえ、極めて常識人ですよ……」

「謙遜すんなよ」

「謙遜させてください」

「だって、悪魔に親しみを覚えるんだろ?」

「それはちょっと口が滑ってしまっただけです。忘れてください」

「忘れろったってな……」

 ブレムさんが自らの髪をボサボサと掻く。

「……なんというか、慣れただけです」

「慣れ?」

「ええ、ここ数日色々あったので……」

 わたしは俯き加減で呟く。

「ふむ、興味深いな……」

 ブレムさんは腕を組んで頷く。

「話すと長くなるので話しませんよ?」

「詳細はどうでもいい」

「ど、どうでもいい?」

「色々あったわりにキャパオーバーしていないアンタ自身に興味が湧いた……」

「あ……」

 しまった。マズい流れだぞ、これ。

「悪魔にビビらないのはマジで大事なことだぜ」

「い、いや、ビビるビビらないではなくてですね、慣れてしまったというか……」

「エクソシストの素質ありだな」

「素質あり? わたしはごくごく普通のどこにでもいる平凡な女子高生ですよ?」

 突発的に人一倍強い霊感が備わっていて、選ばれし存在で、運命的な勇者で、スペースポリスマンの適性が高いということを除けばだが。

「……それじゃあ、サクっと悪魔祓いと行こうぜ、相棒」

「あ、相棒にされてしまった⁉」

 わたしは両手で頭を抱える。

お読み頂いてありがとうございます。

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