表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ナマケモノ殿下の活動記-いくら防御に自信があっても、王都はやっぱりめんどくさい-  作者: 狭間 三日
第1章 ナマケモノ殿下とフォーグラム公爵家
8/52

ナマケモノ殿下と作戦開始

 全ての準備を終えたシンセイ達はいよいよ作戦を開始する。

 作戦開始

 魔物の巣の特定及び誘導するための術式魔石の回収のため、術式魔石を探索する探索術式魔石を用意(シンセイお手製)

 領の騎士や常備兵、冒険者を10組に分け、内密に、そして一斉に回収を行う。

 シンセイとフォーグラム公の予想では人為的なものであり、黒幕がいると考えられている、黒幕への証拠を逃さないため、そして黒幕を捕まえるため、一斉に作業を行うことが必要である。

 フォーグラム領家から遠い地域はあらかじめ指示を与えていた冒険者が指示通りに開始、そしてフォーグラム領家からはユリウスの号令の後、常備兵と騎士が探索を開始した。


 ----

 

「シン様、私達はこれからどうするのですか?」

 最後の作戦部隊を見送った俺にそう言ってくるのはフォーグラム家の長女で領民から絶大な人気を誇るクリスティーナ嬢である。


「もちろんナマケモノの時間だ、これまで少し働きすぎた」

「もうその芝居は私の前では必要ありませんよ、シン様が他所で言われてるようなナマケモノではないということはバレております。」

 俺の悪態はなんの意味もなさなかった。

 うーん、とてもやりにくい、これでは本当に怠けたい時にも色々言われてしまいそうだ。


「やれやれ、クリスティーナに言われてしまうとは、今回は少し働きすぎたようですね、シンセイ様」

 そういって茶化してくるのは理想的なナイスミドル、クリスティーナの父で今回の依頼主、マルキウス=フォン=フォーグラム侯である。


「いや怠けたいのは確かですよ、でも今回は腹が立ちましてね」

「ほう、普段から身分が下の者からナマケモノ殿下や無能など呼ばれても気にもしないシンセイ様が「腹が立つ」ですか?余程のことがおありになったようですね、理由をお聞かせ願いますか?」

 だいたい予測はついているだろうフォーグラム公は、礼をしながら聞いてきた、首を下げたフォーグラム公の顔は少しニヤけていた。


 「私はいつもナマケモノと言われる度に腹が立っておりますよ、なんの問題もないため無視していますが、ただ今回は貴族が貴族を相手取るのに領民でもない民を巻き込んでいますからね。気に入らなければ嫌がらせではなくちゃんとした手順を踏むべきだ。」

「貴族が貴族?ということは今回の事件の黒幕は貴族?シン様は今回の首謀者が誰かわかっているのですか!?」

 目を見開き驚いた表情のクリスが問いかけてくる。


「まぁ、誰が得をするか、どうして軍で対処できなかったのか、なんで俺にこの話が回ってきたのかを考えるとだいたいの予測はつくよ」

 チラッとフォーグラム公の方をみると、子供を見守る優しい顔で頷いた、続けていいようだ。


「まずは誰が得をするかについて説明しよう」


 --------


「そして最後、なんで俺にこの話が回ってきたのか、これは簡単、解決したい人が解決出来なかったから」

「?」

 クリス嬢は首をかしげながら不思議な顔でこちらに説明を求めてくる。

 

「今フォーグラム公に恩を売りたいのは後継者争いをしている我が兄上姉上達だ、でも解決出来なかった、つまりまだ誰にも与していない貴族となる。さらに前回の調査でオリジナルの術式魔石を使っていることが判明した訳だ。先ほどの説明と合わせればあとはわかるかな」

「術式魔石を作ることができるほどの力があり、後継者争いに与しておらず、フォーグラム領内の街道が使えないことで利点がある人?」

「そう、もっと言うと今回の術式魔石は非常に大きかったよね?それほどの魔石を用意するなら足がつくんだ」

 いいね、ちゃんとわかってくれる。

 

「シンセイ様、こちら、ご指示いただきました通り、調査した結果でございます。」

 そう言ってフォーグラム公は俺に資料を渡してくれた。


「フォーグラム公、ありがとうございます。やはりパウル侯爵ですか、動機はまぁ、いっぱいあるだろうが、半年前の父上の誕生パーティでしょうね」

「ええ、彼の父は非常によく出来た人物でしたが、急な代替わり、やはり若すぎますね」

 フォーグラム公は少し悲しそうにしている。

 

「えっ、パウル侯爵ですか?お手紙で何度もお断りしているのに、半年前のパーティで強引に私に求婚をしてきて、父上が庇ってくれた」

「そう、あそこでフォーグラム公が叱責しなければ、おそらく俺の父上、つまり国王が叱責していた。そうなれば罰は必然、代替わりしたての侯爵家にそれはマズイんだ、そしてフォーグラム公は庇ったんだ。」

「それを理解せず父上に逆恨みで今回の計画を行った、そんな、それなら民に迷惑をかけずに父上や私に直接言えば」

「フォーグラム公の真の意図を理解する頭もなく、民をまきこんでの仕返し、こんな小悪党に侯爵家を任せることは出来ない。」

 そういって俺は怒りを抑えながら屋敷の外へ歩き出した。

 慌てて追いかけてクリスティーナ、落ち着いてついてくるフォーグラム公。


「ではフォーグラム公、パウル侯爵を捕えに行ってきます。」

「ええ、くれぐれもお気をつけてください。」

「待ってください、シン様がお一人でいかれるんですか?」

「そんなわけないだろ」

 そういって上に目をやると蒼い甲冑を装備した黒いドラゴンが舞い降りてくる、それに続き鋼の甲冑を装備した緑のドラゴンが4頭降りてくる。


「これは、ドラゴン?竜騎士?しかも黒い、フォーグラム王国軍に竜騎士が存在するとは聞いたことがないのですが」

 不安そうな顔でこちらを見てくるクリスティーナ嬢、まぁわかる、こいつはいくつかある俺の秘密兵器の1つだ。


「クリス、安心して、俺の秘密兵器、こいつは相棒のジークって言うんだ」

 蒼い甲冑をきた黒いドラゴン、ジークを撫でる。

 ジークは俺に幸せそうに俺に頭を預けてくれる。


「機会があったら教えてあげるよ」

 クリスティーナ嬢は少し不安そうな顔をしていたが、俺とジークの姿をみて少し安心してくれたらしい。


「あっ、内緒だよ」「がぅ!」

 跨った俺にジークが答えてくれる。

 竜の応答にビビったのか、少し顔を赤らめたクリスティーナ嬢と、その様子をみて少し考えているフォーグラム公を残し、俺はパルム侯爵の屋敷へ向かった。


 さてと、悪徳貴族とご対面だ!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ