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ナマケモノ殿下の活動記-いくら防御に自信があっても、王都はやっぱりめんどくさい-  作者: 狭間 三日
第1章 ナマケモノ殿下とフォーグラム公爵家
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ナマケモノ殿下と秘密の部屋

 モンスターの巣の跡地にて調査を行ったシンセイ一同。

 調査の結果、巣には魔力を流す事でモンスターを誘き寄せる術式魔石が隠されていた。

 周辺にいくつかの巣を用意し、モンスターのリーダー格がこの術式魔石に魔力を通す事で巣を変えながら集団で行動していたため、兵による大規模な討伐を逃げ切ったと予想をたてたシンセイ。

 モンスターとモンスターの巣を一網打尽にするべく、術式が刻まれた術式魔石を探索の準備を初めた。

 探索魔法はシンセイのオリジナル術式となるため、ユリウスらには城の宮廷魔導師に術式魔石の作成依頼を行うと嘘をつき、シンセイはこっそり術式魔石の作成を行うのだった。


 --------------------


「ではこちらのお部屋を使用してください。」

 クリスティーナに案内され公爵家で部屋を借りる。

 

「このお屋敷にいる間は私がお世話をさせていただきます。もしご入用ありましたらなんでもお申し付けください。」

 どうやら邸内での監視役はクリスティーナになったようだ、申し訳ない、監視対象がテンならやる気もあがるだろうに、ダメな方の弟が相手だ。


「ふふふっ、私から世話役に立候補したんですよ、そんな申し訳なさそうな顔しないでください」

「見透かされてしまいましたね、テンにはよく言っておきますね。これからナマケモノ期間になりますので、なるべく私のことは尋ねないように、食事はこちらでとらせていただきますので部屋の前に置いていただけるとたすかります。」

「そう、ですか、わかりました、でも晩の食事はなるべくみんなで食べるようにしているのでその時はお呼びしても宜しいでしょうか?」

「わかりました。であれば晩のお食事はお邪魔させていただきます。」

 なんか露骨にガッカリして出ていってしまった。

 どこで対応を間違ったのだろう。

 まぁいいか、とりあえずちゃっちゃと魔石に術式を掘る作業に移ろう。

 まずは防音結界と認識阻害結界だね、これで部屋の外に音は漏れないし、もし部屋を急に開けられても俺はベッドで寝てるように見える。


 ---

 

 普段はナマケモノと呼ばれているシンセイではあったが、魔石に術式を刻むのは嫌いではなく、いかに丁寧に、いかに素早く、いかに美しく刻めるのか、一種の芸術としての熱を持って作成を行なっていた。

 本人は無自覚だが、魔石に術式を刻んでいる間はあまり周りのことが気にならず、いつものやる気のない顔でなく、非常に生気に満ち溢れた少年の様な顔になっている。

 

 ---

 

「凄いですね、これはどうやって術式を刻んでいるのですか?」

「これは二重結界の応用だよ、魔石に結界を薄く使うとこで綺麗に線をひけるんだよね」

「はぁー、こんなに綺麗に術式をひけるんですね、シンセイ様凄いです!」

 ふっふっふっ、自慢の結界術を褒められると気分がいい。

 そう、俺はこんなんでも結界の技術と術式魔石の作成にだけは自信があった、俺が安全に怠けるために必要な技術であったからだ、戦にしか役に立たない剣術や攻撃魔法を学ぶよりもいざという時に怠けられる結界技術を勉強したものだ。

 

「だいたいみんな結界術を甘く見過ぎている、防御にしか使えない技術と言っているが、今回刻む術式だって結界術式の応用なんだ」

「そうなんですか?一体どうやって結界術で魔石を探索するのですか?」

「ある術式にしか反応しない薄い結界を貼るようにするんだ、そうすると同様の術式が結界に触れた時だけ反応するように出来るんだ、これは俺のオリジナル術式でさ、宮廷の結界術師も使えないんだ」

 すごいだろ?師匠にいっぱいしごかれたからなぁ。

 

「でしたら、調査に使う術式魔石は宮廷魔導師が用意するのではなくシンセイ様がお造りになっているのですか?」

「そう!宮廷魔導師でも俺のオリジナルの術式を刻むことは出来ないからね、でもまぁバレちゃうと面倒だからこれはみんなには内緒にしてるんだ」

「そうなんですね、私は知ってしまって大丈夫だったのでしょうか?」

 そう言ってクリスティーナ嬢は困った顔でこちらを見てくる、さすがテン側のキラキラ人間、困った顔も絵になるなぁ。

 、、、ん?

 どうしてクリスティーナ嬢がここに?


「どうしてクリスティーナ嬢がここに?」



 ---


 緊急事態が発生してしまった、こんなに慌てたのはテンが初恋の人と別れるのが嫌で襲撃を起こそうとした時以来だ。

 クリスティーナ嬢に色々とバレてしまった、どうして。


「あの、ノックはしたのですが、返事がなくて、それで部屋を開けると結界の反応があったため、その、解除してしまいました。ごめんなさい」

 大慌てしている俺は、こんな美人に涙目で謝らせてしまった、こんな姿をユリウスに見られたら殺されてしまう、テンに見られたら一生笑いのタネにされてしまう。

 冷静に考えよう、どう考えても悪いのは俺だ、ここはクリスティーナ嬢の屋敷で、部屋は間借りしており、勝手に結界を貼ったあげく、クリスティーナ嬢はしっかりノックしていたらしい。


「あの、死ぬまで話しません、墓場まで持っていきます!だからその」

「あー、えっと、あの、気にしないでください、いや、気にして欲しいです。違う、その、内密にしていただけないでしょうか?勝手に屋敷内に結界術を貼りその中で作業をしていたのは私なので、全面的に私が悪いです。ですが、どうか内密にしていただけないでしょうか」

「違います、返事もないのにお部屋にお邪魔して、勝手に結界を解除したのは私ですのでどうかその、お気になさらずに」

「いえいえ、本当に全面的に私が悪いです、ですが内密にしていただきたいです。私に出来ることはなんでもしますので」

「なんでも?今何でもするとおっしゃいましたね?」

 あれ?問題発言だったか?俺がクリスティーナ嬢になんでもするって言う分には問題ないはずだけど、これが逆なら大問題だが、間違ってはないはず。


「でしたら、先ほどのように、仲の良い感じの喋り方をしてもらってもいいですか?シンセイ様の喋り方は距離を感じてしまって、敬語もやめて、私のこともクリスとお呼びください!」

 モジモジしながら天然の上目遣いでのお願い、これを断れる男はいるのだろうか?いやない。

 

「わかりました、いや、わかった、ならクリスも俺のことはシンと呼んでくれ、仲の良い人はこう呼ぶんだ、それとテンセイのこともテンと呼んでくれて良い、あいつは俺だけ特別扱いされてると拗ねるから」

「そうなんですね、テン様と及びしていいのですね」

 ニコニコになってくれた、とりあえず大したお願いでもなくてよかった、素直にテンに紹介してくれって言ってくれたら紹介するのに。

 弟である俺に面と向かっては恥ずかしかったのかな、テンはライバルが多いから頑張って欲しい。


「では、このまま術式魔石の作成を見学させてもらっても宜しいですか?」

「わかった、いいけどこれ以上バレるのは大変だから、誰も入らないようにだけお願いね、もう一度結界貼るのは骨なんだ」

「誰かさんが壊してしまいましたしね、ウフフ、ごめんなさい」

 邪悪な笑顔だ、王宮で美女を見慣れている俺でなければすぐに恋に落ちていただろう、兄であるユリウスの過保護も頷ける。


「今回、術式魔石は全部で30個作ろう思ってる、フォーグラム兵と騎士団、そして冒険者にも手伝ってもらって大規模な捜索を行い、なるべく1日で終わらせるつもりだ」

「それは、とても急ですね、どうしてそれほど急がせるのですか?」

「今回の件、恐らく黒幕がいる、あまりゆっくりしていると証拠隠滅や逃走されかねない。一応黒幕にあたりはついているが、罪を認めてもらわないといけないからね」

「逃げる隙を与えずに、一気に討伐、そして証拠を消す暇を与えずに捕らえる!さすがシン様です。」

 パンッと手をたたきながら納得をするクリスティーナ嬢、思っていたより頭の回転がいいのかもしれない。

 

「術式魔石は遅くとも1日に5個は作成できるはずだから、色々準備を考えて、決戦は10日後かな。そしてクリスにお願いがある、フォーグラム侯には30日ほどかかると伝えているんだ、だから2人きりのタイミングで実は10日後に決行すると伝えて欲しい。兵士と騎士団にも、訓練と称して出歩けるように伝えてくれ」

「シン様はフォーグラム領内に黒幕と繋がっている人物がいると考えているのですね。わかりました、必ずお伝えします。」

 そう言って俺は術式魔石作りに戻った、クリスも引き続き俺の作業を見ている、テンにはよく言っておこう。


 ---

 

 そしてフォーグラム侯との晩餐や、クリスとのお茶会などを行いながら無事、術式魔石完成の目処がたった。


「よし、じゃあ冒険者ギルドにいって依頼をだそう」

「でも依頼を出してしまうと黒幕に気づかれませんか?」

「その心配はもちろんある、だからギルドに依頼は出さない、そのかわり個人に話を持っていくんだ」

「個人?我々貴族はよく冒険者に嫌われていると聞きますが、そのような方々に話を聞いてもらえるのでしょうか?」

「大丈夫、俺はこう見えて冒険者ギルドには少し顔がきいてね、今からフォーグラム領の冒険者ギルドに向かうよ」

「はい、お供させていただきますね。護衛にはお兄様は呼ばなくてもよろしいでしょうか?少し、口うるさくて」

 可愛い顔して酷い事をいう、実の妹にこんな事を言われた日には枕を濡らしてしまう。


 そして俺とクリスは適当な護衛とともに冒険者ギルドへと向かった。



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