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ナマケモノ殿下の活動記-いくら防御に自信があっても、王都はやっぱりめんどくさい-  作者: 狭間 三日
第1章 ナマケモノ殿下とフォーグラム公爵家
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ナマケモノ殿下と公爵家

 フォーグラム領 この国の名を冠するその領は広大であり、整備された街道が発展した街を同士を繋ぐ領。

 それぞれの街は発展しているが、街道で囲まれた森の奥に、300年前、魔族との戦いで消失した旧王都跡地がある。

 旧王都跡地は現在通っている街道は1つだけだが、有名な観光地となっている。


 シンセイはこのフォーグラム領で起こっているモンスターの大量発生に対処するためフォーグラム領を尋ねた。

 この地を治めるフォーグラム公と作戦会議を行い、調査へと向かう。

 調査の護衛にはフォーグラム家の長男がついてくることとなったため、これから打ち合わせとなる。

 

 ---

 

「で、王家に轟くナマケモノ殿下よ、軍による掃討作戦を逃げのびたこの卑怯な魔物に、あんたはいったい何をするつもりだ?俺にもわかるように説明しろ」

 わかりやすく敵意をもってきているのがユリウス=フォン=フォーグラム、18歳、綺麗な金髪ロングヘアをなびかせクールな紫色の瞳を持つ、将来は公爵家の跡取りであり文武に長けた男である。一応の殿下である俺にわかりやすく敵意を剥き出しにしてしまうのは若いが、将来はまぁ有望だろう。

 今回の調査の護衛リーダーとなるため、まずは説明をする。


「やめてくださいお兄様、そのような言い方はシンセイ殿下に失礼です、殿下はわざわざフォーグラム領のためにいらしてくれたのですよ」

 何故か俺を庇うこの人はフォーグラム令嬢クリスティーナ=フォン=フォーグラム、フォーグラム公の長女であり14歳、少し身長は低めではあるが出ているところは出ていて、でなくていいところはでていない、理想的な体型の1つだろう。

 兄のユリウスと同じ金髪ロングヘアに紫色の瞳を持つが、なんか兄よりフワフワしてる気がする?あとあれだ、テンと同じオーラがある気がする、空間がキラキラしている。

 調査に行くのなら是非私も!とついてきてしまった。普段は引っ込み思案なのか、周囲がとても驚いていた。

 ちなみにこの人がついてきたせいで護衛の数が倍になって非常に暑苦しい、本人は知らないだろうけど。


「クリスティーナ様、お気になさらず、ユリウス様のご意見はごもっともです。」

「そうだぞクリスティーナ、おそらくこいつが持ってきた計画もどうせ兄のテンセイのものだろう?まぁ安心しろ、失敗しても命だけは私が助けてやる」

「私は一度やめてくださいと言いました、そうまでしてシンセイ様を悪くおっしゃるというのなら、お兄様とはもうしばらく口を聞きません」

「待ってくれクリスティーナ、そんなつもりではない、ただ俺は心配で」

 酷い、お兄様半泣きだぞクリスティーナ嬢、言い過ぎじゃないか?俺が目の敵にされてしまう、非常によろしくない。


「クリスティーナ嬢、そのあたりでおやめください、私がナマケモノ殿下なのは確かです、それにユリウス様に今にも殺されそうです」

「殿下はお優しすぎます、そもそも殿下ですよ?王の息子にそんな口を聞いていいわけありません。だいたい兄上は跡取りというのに、意識が足りません、そのような意識のため先程のシンセイ様と父上の会議にも参加させてもらえないのですよ」

 ユリウスが涙目になっている、少し可哀想になってきた、もうこれ以上話してもダメだろう、説明にうつろう。


「では説明させていただきます。今回のマウンテンウルフの大量発生及び集団行動についてはいくつかのイレギュラーがあります。1つは集団行動を取ること、もう1つにすぐに巣を放り出してしまうこと、最後にこのマウンテンウルフのグループがいくつもあるというところです。このどれもがマウンテンウルフの生態とは異なり、不可解です。」

「俺は原因や問題点じゃなくて解決策を知りたいんだが?」

 ユリウスがそう凄むとすぐにクリスティーナに睨まれて小さくなってしまった。


「続けますね。この様なイレギュラーがいくつも重なるのが偶然とは思えません、これは計画的、もしくは組織的に起こされた可能性があります。」

「人の手が入っている?ということでしょうか?」

 このキラキラした人、もしかしたらユリウスより頭がいいのかも知れない。


「確実ではないですが。恐らくリーダーがいると思います。」

「ならそのリーダーを捕まえたら終わりだな、よし、ナマケモノはもう帰っていいぞ」

「そのリーダーはどうやって補足するのでしょうか?」

 ついにユリウスの方を向かなくなってしまった。


「このマウンテンウルフの集団は10個のグループに別れていると考えます。」

 そう言って俺は魔物の襲撃が予想される地域に印をつけた地図に10個の丸をつけていく。


「この1つ1つの円の中にいくつかの巣があり、掃討作戦の時は巣を転々とすることで逃げ切ったと考えられます。」

「いくつもの巣を使い分けるだと?そんな魔物聞いたことがないぞ?いったいどうやって逃げる先の巣を決めているんだ?何が起きている」

「それはこれからです。以前の軍の掃討作戦で見つかった巣の跡地に向かいましょう、私の予想が正しければ、そこに魔物へ干渉することができる何かがあるはずです。」

 恐らく、魔物を呼ぶための魔石か、それに連なるものがそこには残されているはず。

 

「ではみなさん参りましょうか」

「まてクリスティーナ、本当についてくる気か?これから先は魔物の巣だぞ」

「えぇ、お兄様が守ってくださるでしょ?それにシンセイ様がいらっしゃいます」

「そう言ってもこいつは百戦不勝、勝てずのシンセイだ」

「ええ存じております、そして、勝てなかった試合のうち、負けたのはほんの数戦だとも聞いております。お兄様もシンセイ様には勝ったことないのですよね?」

 言い負かされたユリウスが悔しそうな顔をしながらこちらを睨みつけてくる。


「決まったようですね、ではユリウス様はクリスティーナ様をお願い致します。私は自分の身ぐらいは自分で守ります。」

 そう言って俺は悔しそうな顔をするユリウスと、ニコニコ顔のクリスティーナ、そしてフォーグラム家の騎士をつれて魔物の巣の跡地へと向かった。


 -------------


「ありました!大きな魔石です!何やら術式が刻まれています。」

 泥まみれの兵が叫ぶ、どうやら予想通り、大型の魔石が見つかったようだ。

 

 魔石というのは術式を刻むことで魔力を流すだけで誰でも魔法が使えるようになる魔力の通りがいい石である、この術式が刻まれた魔石のことを術式魔石という。

 魔石で刻むことができる術式は基本的に初級魔法まで、大型の魔石でも中級、上級魔法となると家のような大きさの魔石が必要になる。そのため携帯できる術式魔石は初級魔法のみが使えると思っていい。

 

 巣は街道から近いところにあり、馬車で怠けながら待つ俺に兵士が複数人で術式魔石を持ってきてくれた。

 

「この術式魔石、魔力を流すと音をだすのか?術式を見る限りそうだが、私には聞こえんな」

「魔物にしか聞こえない音、ということでしょうか?」

 俺と同じ馬車で優雅にオーラをだすクリスティーナと、馬をひいて護衛をしてくれているユリウスとともに術式魔石を確認する。


「だいたいわかりました、他の巣にあたりを付けます。予想通りですね。このまま術式を発動して魔物を誘きだして討伐したとしてもおそらく黒幕に逃げらてしまいます、全ての巣の術式魔石を破壊してから逃げる隙を与えずに捕らえましょう」

「他に隠された巣を探すということか?一体どうやって?」

 困惑するユリウスに自信満々で答える。


「術式の解析は済みました、あとは同じ術式を使っている術式魔石を探すだけです。一度公爵邸に戻りましょう、宮廷魔導師に手紙をだして術式魔石を探索するための魔石を用意してもらいます。」

「宮廷魔導師はそのようなことが出来るのか、わかった、しばらくは準備になるな」

 嘘である、探索魔法は俺のオリジナルの術式であるため、手紙を出した振りをして術式魔石の作成を行うつもりだ。

 とりあえず手紙はテンに出して、宮廷魔導師に頼んだ感じをだしておこう。


「解決の目が出てきましたね、さすがはシンセイ様です。」

 ニコニコとクリスティーナ嬢がこちらを見てくる、どうもこの人は俺に対する評価が謎に高いようだ、俺の悪評が届いてないということはないだろうに、変な男に引っかからないか心配だな。


「おいシンセイ、貴様俺のクリスティーナに近づくなよ。」

 おまえのではないだろ。

 ユリウスが大きな声を上げたせいでクリスティーナに睨まれている、自業自得だ、俺は近づいてなどいない。

 こうして俺たちは巣を離れ屋敷へと向かう。


 ユリウスめんどくさいな、こんな奴が跡継ぎで大丈夫か公爵家?

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