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ナマケモノ殿下の活動記-いくら防御に自信があっても、王都はやっぱりめんどくさい-  作者: 狭間 三日
第1章 ナマケモノ殿下とフォーグラム公爵家
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ナマケモノ殿下と頼み事

「おっ、ナマケモノ殿下じゃないか、今度はどこでサボるんだ?いいご身分だなぁ、他の王子王女はみな公務に忙しいのに」

「ダメですよパウル公、彼ほどの無能は王都の長い歴史に類を見ないのですから、居づらいに決まってますよ、むしろ追放されているのでは?」

「はははっ違いない、ナマケモノのシンセイ殿下、どうかお気になさらず、追放された際はお声がけください、笑いに参りますので」

 俺が一度王宮の外に出れば聞こえるのがこの声、一応王子なんだけどな俺。



「はぁ〜、めんどくさい」

 15歳になり成人をむかえたばかりの俺はフォーグラム王国の第四王子、ナマケモノ殿下と呼ばれ、次の王になって欲しくない王子王女ランキング一位を独走中のシンセイ=コウエンジ=アーヴィンだ。

 剣術はある程度素人に勝てる程度、攻撃魔術は全然ダメ、百戦不勝、勝てずのシンセイとも呼ばれている。

 今日は優雅にお茶でも飲みながらお忍びで下町を散歩し、民芸品を漁る予定だったのに、俺の目の前にいるこの男のせいでこれだ。

 

「いやー、ごめんねシン、他に頼れる人がいなくてさ」

 この目の前でキラキラとしたオーラを出しながらニコニコと謝るのは俺の双子の兄。

 フォーグラム王国の第三王子、イケメン王子、完璧殿下と呼ばれ次の王になって欲しい王子王女ランキングで常に一位を争う男、テンセイ=コウエンジ=アーヴィンだ。

 剣の腕、魔術も非常に長けており、百戦不敗、負けずのテンセイと呼ばれている。

 俺と同じ黒に近い青色の髪、俺と同じ青い目、俺と同じ顔、俺とは全く違うキラキラしたオーラをまとっている。なにせ同じ顔だというのに普段通りだと間違えられたことがない。

 

「シンなら僕の損になることはしないでしょ?シンにしか頼れないの、だからダメな兄を救うと思って人肌脱いで欲しいな」

 ニコニコしながらキラキラオーラを出してくる、このオーラ、俺が女なら惚れてたぞ。

 しかし昔からこの男に頼られると不思議と断れない、これがイケメン力なのか?本物の王子だけが出せるオーラなんだろう。

 

「わかったよもう、テンが王様になったらちゃんと悠々自適な隠居生活おくらせてね」

「ふふっ、冗談ばっかりだね、宰相でもいいかな?」

「いいわけないだろ、もう」

 こういって俺はナマケモノの住処である王宮から、この国の名を冠する一大領地、フォーグラム領へと足を運ぶことになった。


 ---

 

 ことの発端は昨日の夜だった。

「シン、本当に申し訳ないんだけど、明日フォーグラム領まで行ってくれないかな?」

 そう言ってニコニコしながら王子様がやってきた。

 

「やだよテン、今あそこモンスターが多くて危ないらしいじゃん、フォーグラム公のおかげで他領までは侵攻してないらしいけどさ」

 凄く嫌な顔で返答する、俺はナマケモノ、例えモンスターが少なくても嫌である。

 

「それについて頼られちゃってさ、モンスターをなんとかしてくれないかなって、困ってるみたいだし二つ返事でオッケーしちゃったんだけど、騎士団の訓練にも誘われちゃってさ」

「なんで断らないの?いつもとりあえずオッケー出すよね?だいたいそれ前に軍出して上手くいかなかったやつじゃん」

 この男、とりあえず頼られたらオッケーを出してしまう男である、ただ人脈も広く有能であるため、大抵はなんとかしてしまう。

 しかし今回は話が違う、軍で対処しようとしたが数が多くとにかく広範囲に出るため、対処が上手くいかなかったモンスター達相手である。

 こういった面倒ごとはとりあえず俺にもってくるところがある。

 

「へへっ、ごめんね、でもシン以外でなんとか出来そうな人が思い浮かばなくてさ、どう?出来そう?」

 全く言って良いほど悪いと思っていない爽やかな笑顔、相変わらずこの兄、断られることは全く考えておらず、出来るかどうかを聞いてくる。

 

「んー、まぁ現場みないとわかんないけど、多分なんとかなるかな、俺の予想通りなら少しお金はかかるけどね」

「ならやっぱりシンで正解だね、もうフォーグラム公には言ってるから明日よろしくね!」

 もう言ってるのかよ、しかも明日からかよ、本当にこいつはいい顔して性格が悪い。


 ---

 

「シンセイ=コウエンジ=アーヴィン様ですね、どうぞお入りください、主人が中でお待ちです。」

 片道3日かかる道のりをこえ、門番に案内された屋敷に入る。

 しかしみんな酷く冷たい視線を向けてくる、無理もないか、ただでさえモンスター騒動で気が立っているのに、イケメン王子の代わりにきたのは顔だけ同じのナマケモノ殿下だ、そんなん俺だって嫌だ。

 

「シンセイ様、お久しぶりです。」

 白髪のかかった綺麗な金髪、力強さを感じる細身、理想的なナイスミドルと言っても過言ではない、マルキウス=フォン=フォーグラム侯がで迎えてくれる。

 

「フォーグラム公爵、お久しぶりです!」

「先日の成人の義以来ですね、あの時は挨拶の時間を取れず申し訳ありませんでした。」

 フォーグラム侯は非常によく出来た人物であり、俺のようなナマケモノの話をしっかり聞いてくれるし、気にかけてもくれる。

 

「これは申し訳ない、ああいった場は苦手ですぐに逃げ出してしまいました。」

「いえいえ、みなテンセイ様に挨拶している間にシンセイ様がいなくなってしまい不思議に思っておりました。苦手だったということであれば仕方ありません、ここでその時に言えなかったお祝いの言葉を送らせていただきます。ご成人おめでとうございます。」

 ニヤリとした顔をされながら流れるようにお祝いの言葉まで送られてしまった、サボったのがバレているなこれは。



 そうこう言っているうちに客間へ到着、フォーグラム公と最低限の従者を残し話を聞くことに。

「テン兄に言われてきました、どうもモンスターに困っておられると」

「お恥ずかしながらその通りでございます。一頭一頭はそれほど強くないのですが、商車を狙い。手練れとわかるとすぐに逃げ出しており、山の中に隠れてしまうため、まとまった討伐が難しいのです。」

 さすがフォーグラム公、だいたいの貴族や他の王族連中は俺を見下し、見くびり、追い返したりするのだが、丁寧に説明してくれる。

「なるほど、であればだいたいの出現場所と時間、そしてモンスターの種類や特徴を教えていただけますか?」


 話を聞くところ、モンスターは焦げた茶色の毛をもつ狼マウンテンウルフ、それほど強くはないが人よりも馬を好み、護衛を無視して馬車に攻撃を加え馬だけを狩猟するというやっかいな知恵をつけているようだ。

 そして集団で行動し敵わないと見るや即座に逃げ出し、巣を放棄するらしい。

 だいたいの想定通りであったため、フォーグラム公に策を伝え視察の予定をたてる。

 

「シンセイ様、これより視察に出られるとか、護衛をつけさせていただきますが、もし宜しければ護衛と、そして私の目として長男のユリウスをお連れください。」

「護衛までありがとうございます。」

 護衛件見張りということだろうか、まぁ人が多いのに越したことはない、使わせてもらおう。

 こうして俺はフォーグラム公と別れ、フォーグラム家の長男であるユリウスとの打ち合わせに向かう。

 

 ところで全然怠ける時間がない、どうなっているんだ。

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