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始龍の賢者  作者: みんと
森の大賢者 編

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10/65

第10話 1984***


「なにがおかしいんだ?」


 俺は闖入者をとっ捕まえた。


「い、いや……別に。ただちょっと姫の様子が気になっただけだ」


 オブライエンはこの期に及んでまだ誤魔化そうとする。

 すべてまるっとまとめてお見通しなのにな。


「姫はティナがいっしょにいるから大丈夫だろ? まさか夜這いってわけじゃないよな?」

「ははは……まさかぁ……」


 苦笑いで誤魔化しつつ、オブライエンは攻撃の態勢に入る。

 後ろをとっている俺を、不意打ちで倒そうと、腹に後ろ蹴りをかまそうとしてくる。

 しかし、もちろんそんな腑抜けた陳腐な攻撃が俺に通用するはずはない。


「ふん!」

「ぐぎゃあああああああ!!!!」


 俺が魔力を少し解き放って威圧すると、オブライエンの脚はあらぬ方向へと曲がり、べきべきに折れてしまった。

 もうべきべきのめっきょめきょだ。

 オブライエンはその場にのたうち回る。


「あ、ちなみにお前が姫に盛った毒とやらも解除済みだ。毒見を装って毒を盛るなんて、あんなやりかたで俺を出し抜けるとでも思ったか?」

「っく……くそぉ……くそが! この化け物め!」

「姫の忠実な従者を演じつつ、平気な顔して暗殺を仕掛けることのできるお前さんのほうが、俺にはよっぽど化け物に見えるがね」


 まあなにかこいつにもただならぬ事情とやらがあるんだろうが、そんなの俺の知ったことじゃない。

 ライゼのような美人を殺そうとするやつは俺が殺す。しかも男だしな。

 俺のおっぱいをこの世から一つでも消させはしないぜ。

 なんてったってまだ一揉みもしてねぇんだからよぉ。


「っく……こうなったら自棄(やけ)だ! えい!」


 オブライエンは懐からなにやら取り出すと、おもむろに地面にたたきつけた。


「わ! なんだ!?」


 彼が地面にたたきつけた玉のような物体からは、大量の煙が放出された。

 煙はあっという間に廊下中に充満し、あらゆる視界を遮った。


「目くらましか!? なんだこれすげえ、なんも見えねえ」


 さすがの俺もいきなり視界を奪われては、一瞬の隙を作られる。

 すぐに魔力を制御して風を起こし、煙を吹き飛ばすが、そのときにはすでに廊下からオブライエンの姿は消えていた。


「ふん、未開のバカな蛮人め」


 オブライエンの声のしたほうを向くと、彼はライゼたちの寝室に立ち入っていた。

 しかも姫を人質にとっていやがる。卑怯な奴だ。


「へっへっへ、姫を殺されたくなければ俺を森の外まで安全に送れ。本当は姫を毒殺して一人で逃げ切るつもりだったが、さすがにこの脚じゃあな」

「きゃああああ!? オブライエン!? どうして!?」

「うるせえ! まだ状況が理解できねえのか?」


 ライゼは信じていたオブライエンに裏切られたというショックで、まだ状況を飲み込めていないようだ。

 まあ、そりゃあそうだろうな。

 オブライエンのほうは裏切ったというより、もともと姫を暗殺するために送られた刺客だったのだろうが……。


「どうした! 俺を送り届けろ!」

「えー……いやだよ」

「じゃあ殺すぞ!」

「でも、送り届けても殺すんだろ?」

「ああもちろんだ。それが俺の目的だからな」


 なら、こいつの言うことをきく必要はどこにもないな。

 すると、ティナが俺に向かって嘆願してきた。


「お願いだ! 助けてくれ!」


 まあ、美人の頼みだ。

 それにおっぱいのためだから、助けるに決まってる。


「あいつはどうなってもいいか?」

「構わん! 殺してでも姫を助けてくれ!」

「よし。まあ、殺しはしないけどな」


 すると俺とティナの会話をきいていたオブライエンがまた吠えだした。

 あまり強い言葉を使うと、弱く見えるというのに、よく吠える犬だ。


「っは! この状況でどうするつもりだ! 人質がいるんだ。俺に手は出せまい!」

「人質? どこにいるって?」

「は…………?」


 俺は一瞬にして転移魔法でライゼをこの手に取り戻した。

 ライゼは俺の腕に抱かれている。おっぱいが手に当たっている。最高だ。

 オブライエンは急に消えた人質を探して手が虚空をさまよってるようだ。

 あまりの恐怖と安堵によるのか、ライゼは俺の腕の中で気を失った。

 これでやりやすくなったな。姫様に血は見せたくない。


「じゃあ、ボコるか」

「ま……待ってくれえええええええ!!!!」

「待たねえよ!!!!」

「ぎやああああああああああああああああああ!!!!」


 まずは金玉に蹴りを一発くらわせる。

 俺はオブライエンを死なない程度にボコボコにした。

 美人を泣かすやつは許さない。

 それに、裏切りや嘘は俺が最も嫌う行為だ。




◆◆◆




 俺とティナはオブライエンを柱に括り付けにした。

 ライゼは安心したのかベッドでぐっすり眠っている。

 念のため寝室には俺が結界魔法を施したから、これでもう安心だ。

 あとはこのクソ野郎を、俺とティナでなんとかするだけ。

 俺は自白魔法を使ってこいつを拷問なしで自白させることにした。

 まあ拷問とかで苦しめてやってもいいけど、別にこいつに個人的な恨みとかがあるわけでもないしな。


「それで、お前はなんでこんなことをしたんだ!」


 ティナがオブライエンに問い詰める。

 自白魔法のせいで、オブライエンは一切の嘘を許されず、質問に答えざるを得ない。


「それは姫を神殿に行かせないためだ」

「お前はどこの所属だ。本当の主は?」

「俺は他国のスパイだ。アルテミス国の大臣に飼われてる」

「だがなぜ他国のスパイが姫を狙う……!」

「お前の国の姫に聖女として活躍されるわけにはいかんのだ。聖女が死ねば別の聖女があらわれる」

「馬鹿め、そんなことしてなんになる! 今は人類の危機だというのに……」

「は、知ったことか! 我々の国が救わない世界などに価値がない!」

「っ……! 狂ってる……!」


 話をまとめると、オブライエンは前から姫の暗殺を狙っていたわけか。

 その目的は自国の利益のため……。

 まあ、人間どもの考えることは俺にはわからんな。

 詳しい事情は俺の知ったことじゃない。


「じゃあ、先の森で襲われた件も貴様が手引きしたのか?」

「い、いや……! それは違う! 俺は関与していない。あれはまた別の国の刺客かなにかだろう」

「姫は多方から狙われているということか……!」

「道をわざと間違えさせ、あの森へと誘導したのは俺だがな。余計な邪魔が入ってこんなことに……」


 他の国の刺客がそこをチャンスとばかりに襲い掛かってきたということか。

 あの一件がなければ、オブライエンがそのまま姫を暗殺しておしまいだったかもな。

 つくづく姫は俺に出会えて運がいい。


「それで、こいつはどうするんだ?」

「私が処分しよう。レルギア殿の手は汚させない」

「ああ、頼む。俺には関係のない話だしな」


 オブライエンは姫を暗殺しようとした罪で、ティナによって処刑された。

 これにて一件落着、と言いたいところだが……。

 まだまだライゼには敵が多そうだな。

 できれば俺が守ってやりたいが……。

 はてさて。

 まあ、胸揉むためならなんでもやりませう。



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