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始龍の賢者  作者: みんと
幼少期 編
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第1話 転生?→捨てられ《魔力ゼロ》


 世界の片隅で、一人の哀れな男が、いましも命を落とそうとしていた。

 彼は生涯誰にも愛されず、悲惨な人生を送ったという。

 千鳥足(ちどりあし)酩酊(めいてい)の二十四時、彼は静かに息をひきとった。




◆◆◆




「神様、生まれ変わったら今度はイケメンにしてください。そんで、愛されたい……。他にはなにもいらないから……! せめておっぱいくらい揉んでみたかった……女を孕ませたい……」


 死ぬ直前に、俺はそう念じた。

 それが、思い出せる最後の記憶だ。




◆◆◆




「魔力ゼロか、ゴミめ」

「こんな忌み子、早く捨ててきてちょうだい」


 生まれて最初に耳に入ってきたのが、両親のそんな言葉だった。

 姉たちも、生まれたばかりの弟をひどい言葉で罵った。


「魔力がないなんて、きっと人間じゃないわ。悪魔の子よ」

「そうよ。命あるものには必ず魔力が流れているというのに……!」


 なんで赤子である俺にこんな意識があるのかはわからない。

 おそらく状況から察するに、俺は赤ん坊に転生でもしたのだろうと思う。

 ってことは、前の人生があるはずだ。だけど、その記憶も定かではない。

 記憶もない、魔力もない。しかも生まれたばかりの赤ん坊。ようは、今俺はめちゃくちゃピンチってわけだ。

 どうやらこの世界では――いや少なくともこの国では、か?――魔力ゼロの人間は人間として扱われないらしい。

 両親がどういった立場の人間かはわからなかったが、服装からしてそこそこ裕福なのは間違いない。

 だけど、俺は忌むべき子供だから、このまま森に捨てられてしまうらしい。

 父と思しき人物は、使用人に命じた。


「できるだけ遠くに、間違ってもこの子が戻ってなどこれぬような場所に、捨ててきてくれ」


 俺の第二(?)の人生はそんな幕開けだった。




◆◆◆




 俺は森の奥深くに捨てられてしまった。

 ここまで俺を連れてきた使用人たちの話によると、ここはとんでもない場所らしい。

 人間がおいそれと立ち入ることもできないような、そんな深く暗き場所。

 まちがっても、親切な人間が通りかかって俺を助けるなんてことはない。

 まあこの世界の人間が、魔力ゼロの人間を助けるなんてことがあるのかどうかは知らないが。

 そう、少なくとも人間は(・・・)


「グルルゥ……」

「………………」


 俺のもとにやってきたのは、腹をすかせたドラゴンだった。

 ドラゴンなんて本当にいるんだな。なんていう感想が出たってことは、少なくとも俺は前世でドラゴンを見たことがないってことだ。

 だけど、これがドラゴンだってことはわかるから不思議だ。

 巨大な竜は、俺のことをしげしげと眺めて、よだれを垂らしている。

 さっきの腹の音からしても、俺を食うつもりなんだろう。

 せっかくまた生まれることができたっていうのに、俺は死ぬのか?

 記憶もないし、失うものなんてなにもないはずなのに、それでもなぜか、死にたくないってことだけは思える。不思議だ。

 だが、ドラゴンは思いがけない言葉を口にした。


「か、かわいい……」

(は……?)


 なぜか俺はドラゴンの言葉がわかった。

 っていうか、ドラゴンの側が人間の言葉をしゃべってるのか?

 それにしても、なにいってんだこいつ……。


「なんとかわいいのじゃ! この赤子は!」


 ドラゴンは俺のことを器用に抱きかかえて、愛おしそうに見つめてくる。

 正直、捨てられて屈辱的な思いをした後だからか、ちょっとうれしい。

 続けて、ドラゴンは俺のことをなめまわすように見つめて、よだれを垂らしながら言った。


「きっと成長したらイケメンのショタっ子に育つに違いない……! ぐへへ……」

(オイオイ……)


 なんだこのドラゴン。ショタコンドラゴンじゃねえか!

 てなわけで、俺はショタコンドラゴンに拾われ、彼女に育てられることとなる。

 このとき俺はまだ知らなかった。このドラゴンが、史上最強の古龍をもしのぐ、伝説の(エンシェント)始龍(ドラゴン)であることを――。




◆◆◆




 俺を拾ったショタコンドラゴンは、アイリシア=フォスフォフィライトと名乗った。

 普段は龍言語なるものを使うそうだが、俺に話すときは人間の言葉で話してくれる。

 そのうち、俺にも龍の言葉を教えてくれるそうだ。

 生まれてすぐに捨てられ、名を持たぬ俺には、レルギア=フォスフォフィライトの名が与えられた。

 俺は、5歳になっていた。


「レル、お前にはいろんなことを教えてやろう。そのほうが、後々我の役に立つ」

「ありがとう、母さん」

「はぅ……か、母さんは恥ずかしいからやめるのじゃ!」

「えーと、じゃあアイリ」

「はぅ……ショタに名前で呼ばれた……きゅん」


 なんだかアイリはいろいろとめんどくさい。

 まあこんなんでも俺の命の恩人で、大切な家族だ。

 普段はドラゴンの姿ではなく、人間の美少女の姿をしている。

 薄白紫色の髪の毛、エメラルドグリーンの瞳。真っ白な透き通る肌に、華奢な体躯は、まさに浮世離れしていて、人間の見た目をしていても、別種の人類であることを明確に感じさせる。

 出会い方さえ違えば、俺は確実にこの女性(ヒト)に惚れていたであろう。

 だから母というよりは、姉に近かった。ただ、ショタコンの変態だという点を除けば……。


「あの、アイリ。そろそろお風呂は一人で入れるから」

「ぬぅ……そ、そんなことを言わずに、の? レルも我のような美少女とお風呂に入れてうれしいじゃろ?」

「いや……今更アイリに欲情しないから」


 それよりも、そろそろアイリの視線が怖い。

 っていうか、仮にも5歳児になに言ってんだコイツ……。

 まあ俺が2度目の人生らしいということは、アイリも把握しているから、いつもこんな感じだ。




◆◆◆




 アイリには、本当にいろいろなことを教わった。

 彼女は俺の親であり、姉であり、俺のすべてだった。

 10歳になった俺は、魔法についていろいろ教えてもらった。


「おそらくレルが捨てられたのは、魔力ゼロだったからじゃろう。人間は愚かじゃからな。ものを知らんのだ。どうか両親のことを恨まないでやってくれ」

「うん、俺も別に両親のことはなんとも思ってないよ。人間の慣習に従っただけだろうし。それに、おかげでアイリとこうして出会えたんだからな」

「ふふ……うれしいことを言ってくれるな」

「まあでも、魔力ゼロってのは残念だったかな。俺も魔法とか使ってみたかった。才能さえあればな……」

「魔法か? それならレルにも使えるぞ?」

「は……?」

「そうじゃな。レルも10歳じゃ。そろそろ魔法について話してもいいじゃろう」


 この世界において、人間とドラゴンの常識は完全に違っていた。

 ドラゴンは世界のすべてを知り尽くしており、人間に与えられた知識はその5分の1にも満たない。


「だって俺、魔力ゼロだぞ……? 才能なしってことじゃないのか?」

「ああ、じゃが、レルの魔法適正は史上最強クラスじゃぞ?」

「は……?」


 アイリがなにを言っているのかよくわからなかった。

 魔力ゼロの俺が、史上最強クラスの魔法適正を持ってるだと?

 そんなの、宝の持ち腐れにもほどがあるじゃないか。

 いくら適正があっても、そもそもの魔力がゼロなら、魔法は使えない。

 こんなバカげた話、他にあるだろうか。

 今更そんなこと言われても、俺はどう思えばいいんだ?

 俺が困惑していると、アイリはさらに驚くべき事実を告げた。


「それに、魔力も完全なゼロというわけじゃない」

「え……? そうなのか? だったら、なんで俺は捨てられたんだ?」


 アイリの説明によると、そもそも魔力がゼロという生物はありえないらしい。

 実際、魔力ゼロの人間が忌み子として扱われるのも、生き物として不気味だからという理由だ。


「例えば、今のレルの状態は毛穴が閉じているようなものじゃ。魔力の出る源泉のようなところに通じる道が閉じているだけ。実際には魔力は奥底に眠っているのじゃ」

「そうなのか……。だったら、俺にも魔法が使えるんだな?」

「ああもちろん。断言しよう。レルは人類史上最強の魔術師にもなれるな」

「本当か……!? それはすごいな……」

「当然じゃ。我に育てられたんじゃからな。それに、レルの才能は比類なきものがある。だからこそ我はお前を拾ったのじゃ。我が慧眼に曇りなし! へへん」


 アイリは自慢げにその小さめの胸を張った。

 こいつショタコンだけど自分もちょっとロリババアみたいなところあるんだよなぁ……。

 まあアイリの言う通り、ドラゴンに育てられた人間なんてきいたこともないからな。

 たしかに俺は唯一無二の可能性を秘めているのかもしれない。


「そっか、俺の才能を見抜いてくれてたんだな……!」

「まあ、本当はいい感じのショタに成長しそうだったというのが主な理由じゃ」

「やっっぱそれかよ! このショタコンドラゴンめ!」


 そして実際アイリの言った通り、のちに俺の魔法技術は、とんでもないレベルにまで達することになる――。



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