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柳風剣銃士と英雄達  作者: 烏龍茶
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昼飯と無能力

いやー夏風邪って怖いですね。

ちょっとずつ文が伸びている気がします。まだまだ色々ずさんですが‥‥末永い目で見守ってくれたら幸いです。

誤字脱字の報告と批判批評待ってます。

飛行船の船内は想像していたよりも遥かに広く綺麗だった。部屋の中心のガラス張りの木のテーブルと、それを挟み込むようにある二つのソファがある。木製のフローリングと白い壁が穏やかな清潔感を醸し出す。


「うおっは!住み心地よさそーだな」


柳のすっとんきょうな声にソファの上で寝転がっていた人物が返事をする。


「家具もいい感じだぞ。別の世界だが、こういう風に俺たちの世界に似た家具とはありがたい」

「え〜と、たしか荒木の友達の‥‥弘さん?」

「そうそうそれであってる。あんたは風磨だっけ?よろしく」


そう行ってソファから立ち上がり、柳と握手をする。


「そういや荒木とハルクスエさんは?」

「あ〜荒木はとっとと操縦席の方に行った、どんな操縦席か気になったんだろ、ハルクスエさんは部屋からいくつか書類を取ってくるらしい」

「んじゃもうちょっと時間掛かるか」

「暇ならそこの本読んどけってハルクスエさんが言ってたぞ」


そういって弘が指差すのは壁に固定された、天井まで届く本棚だった。軽く見積もっても六十冊は超えている。


「じゃあ一冊‥‥すげぇなこれ殆ど百科事典クラスの厚さだよ」


柳が取り出したのは『山中植物典』ということ本だ。どうやらこの世界の野草について書かれた本のようだがその殆どは見た事もない植物ではなく


「えっ?これゼンマイじゃん。こっちはヘビイチゴみたいだし‥‥‥これ思っきしマツタケじゃん!」


パラパラと流し読みしていく中いくつかこちらの世界の植物が書いてある。植物図鑑のような内容で、挿絵と共にその植物の名前と特徴が記されているが、名前こそ別物だが記されている特徴と挿絵パラパラどうみてもこちらの世界の物だ。


「俺も一冊雑に流し読みしたよ。驚いたよ、まさかマグロやマッコウクジラがいるとは‥‥」

「マッコウクジラとはまた何と言えば良いのかわからないラインナップだな‥‥」

「食用って書いてあったんだよ。昔の日本では結構食ってたらしいけど美味いのかな」

「そーいや俺まだ飯食ってねーなぁ」

「何でこの世界に俺たちの世界の物が‥‥?たまたまじゃないし。持ち込まれたのか?」

「腹へったー何が食いたーい」

「うっせっーぞ風磨!こっちまではら減った‥‥」


二人で騒いでいるといくつかの書類を脇に挟み、ハルクスエが奥の部屋から出てきた。


「そろそろお昼にするんで手伝って下さーい」

「「はーい」」


何故同じ生物がいるのか?そんな謎より昼飯な、男子高校生(柳は中退してるが)二人であった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


時々絶妙な量が余るのがひき肉と大根だと思う。


というわけで昼飯の献立は麻婆茄子と大根の味噌汁にイカそうめん、そして白米ご飯。


「せっかくの異世界なのに‥‥想像以上に日本食だよこれ」

「うるせーぞ荒木!現地の料理が合わなくて激ヤセする日本人もいるんだ。黙って食え!」


ぶーぶー言いながらもちゃんと食べる荒木と、それに軽い説教を食らわす弘。


「魔導剣とか【超速】、とか何考えんですかねぇ‥」


ハルクスエは書類を読みながら味噌汁を啜っている。

一方柳は


「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」


ただひたすらに、黙々と口に麻婆茄子と白米を運ぶ。この世界に来る前から空腹だったがやっとこ飯にありつけたようだ。


「ねぇハルクスエ。その紙何?」


最初に興味を示したのは荒木だった。


「こいつは貴方達の能力が記載された書類です」

「ぼうぼうブッベバビ?(能力って何?)」


柳が茄子を口に詰めながら質問する。


「ま、普通の運動能力とかじゃなくて、貴方達に与えられた専用の能力です」

「専用ねぇ、じゃあ俺は?」


今度は弘が質問をする。


「まって下さい。たしか柳さんは説明を聞いていないんでしたよね」

「ぶん(うん)」

「この世界には生まれつき人より並外れた力を持って生まれる人がいます。その力を天より授けられた、とかいて『天授』と呼びます。」

「『天授』‥ねぇ』

「『天授』の力は様々‥‥まぁだいたい数百種類ぐらいですかね。魔術をより強力にする物もあれば魔術に存在しない属性を操る物、身体を極限まで強化する物まで」

「超能力者みたいなものかなぁ」

「『天授』は原則こちらの世界の人間が生まれつき持つものですが、守護人が持つ能力は『加護』と呼びます。大きな違いは『天授』は完全にランダムに能力が決まってしまいますが『加護』はある程度確定しています」

「ある程度って何だよ」


荒木の質問にたいして多少話にくそうに答える。


「‥‥‥実は守護人の中にはある四種類の『加護』を除いて毎回だれかがなんの力も得られないんです。今回は二人」


そういって申し訳なさそうに、おずおずと柳を指差す。



「北霧晴人さんと‥‥‥柳さんです」



それを聞き弘と荒木は少し気まずそうに柳の方を向く。

多くの人は一度は考えるはずだ。不思議な力を手に入れて冒険したい、窮屈な現在を抜け出したいと。

その千載一遇のチャンスを逃し、しかもさっきの博物館で見たような怪物と戦わなければならない。柳以外の三人は心の中で同情してしまった。あまりにも運が無さ過ぎる、と。

が、当人は余った麻婆茄子のひき肉とご飯で麻婆丼を作りながら。


「うん?あっそう」


と、特に気にしてはいない。


「別に急にそんな事言われても実感わかないよ。元々なんも持って無いんだし、無かったら無かったでそっちの方が普通だよ」


と、あっけらかんと言い放った。別にカラ元気を出そうとしているわけでもなく、ヤケクソにもならず、ただ現状を受け入れる。


簡単にそう振る舞えるように見えるかも知れないが、人は心の何処かで自分にも満足出来ない。何か足りない自分。あれが出来ない自分。

心の中で自分を嫌悪し、周りの人間に悩む。そんな心の隙間。

その心の隙間を降って湧いた『異能の力』は簡単に埋まるだろう。簡単にその隙間を埋め未知の世界に飛び立てるのだから。

誰もがその幸運を享受するだろう。そしてそれを手に入れるチャンスがありながらただの運で手に入れられなかったら深く嘆くだろう。

だが


「それに急にそんな加護だっけ?そんなん与えられるよりも自分で何かを努力して手に入れる方が楽しいと思うぜ」


彼は急に変わろうとはしない。変わりたく無いのだろう。変わる前の自分を大切に想ってくれた人がいたのだから。


「きっとさ、俺がなんの加護も無いってのは凄くいい事だと思うんだ。そっちの方が俺らしいんだよ。俺なんかがそんな力を持つよりも、何も持たない方が俺は俺でいられる」


彼は幸運を享受しない。過去の思い出の中のあの笑顔に誓って。

話進めるとか言ったのに結局昼飯食っただけ‥‥初戦闘シーンまで何話かかるんだろう。

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