能力と危険
だいぶ久しぶりに投稿です
誤字脱字やアドバイスや批判批評お願いします
「あークソが!もう動きたくねー!疲れた……」
「あらあらあら?よくやったじゃないの〜。まさか全部落としちゃうなんてびっくりしちゃったわ〜」
そう言って道場の扉を開け桃色オカマが登場する。
「え〜とペカロムさん?いきなり何するんですか……せめて……何かしらの説明ぐらいはあってもバチは当たらないかと」
「そんな事ないわよ〜むしろ説明なんかしたら無粋だと思った〜わ。それより早く四人の所に行った方がいいわよ」
「え、あぁはい」
フラフラとした足取りで立ち上がり、道場を出ようとする。
「あら?ごめ〜ん忘れてたわ。はいコレ!大事な物だから落とさないでね」
そう言うといきなり空間に手を突っ込む。
「はっ?」
いきなり桃色オカマの腕が空間に食われたようにスッと消えた。しばらくガサゴソして腕を引っこ抜くとその手にスポーツバックが握られている。
「ごめんごめん。私ったらちょっと興奮しすぎてたわ。この中に着替えとか財布とか入ってるから落としたり無くしたりしちゃったらオシオキよ」
「イヤイヤちょっと待って下さい。何しれっと超常現象起こしてるんですか?」
「あら『虚空の倉庫』の事?まぁ天授の一種よ、目の前の空間に私以外に干渉できない部屋があって、そこにモノを入れたり突っ込んだりできるの」
「あーっ!だからさっき何も持ってないのに色々出てきたのか!」
「そうよ。ホラホラ長話してないでとっとと四人の所に向かった向かった」
そう言われた柳はそそくさと四人の所に向かう。
しばらくしたらペカロムは赤色の粉を取り出し、ドラゴンフライに振りかける。赤色の粉を浴びたドラゴンフライは蠢きながら、元の形を取り戻していく。
(やはり柳君は他の二人よりも危機を察知して回避する能力が高い……それも産まれながらの才能では無く、むしろ体が覚えている癖に近い)
全てのドラゴンフライがペカロムの体の周りに集まってくる。
ペカロムは腕をかざし倉庫に繋がる空間の扉を開く。それに応じて周囲のドラゴンフライ達が規則正しく扉の中に入って行く。
(さて……忙しくなりそうね。お肌荒れちゃうわ♪)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「そうそう。こんな感じだよこんな感じ」
最初に居た道場に戻ると、荒木が手鏡を覗き込みながら何かうんうん唸っている。
「よっしゃぁ!コツが掴めてきたぜ」
「何言ってんだ?自分の顔がどんな角度でハンサムに見えるか確かめてるのか」
「そんなナルシストじゃねぇよ!俺の加護の練習してんだよ。『魔眼』て言うんだけどさ、使うのに結構コツがいるんだよな〜」
そう言ってこちらに振り向く荒木たが、右目が群青色に輝いていた。
眼球の中に青色に光る電球でも入れたかのように光っている姿は何処と無く夜闇に見る猫に近い。言っちゃ悪いけど結構キモい。
「うわ何それ気持ち悪!自分で光ってて不気味じゃないかその目」
「いや全然、むしろカッコイイだろ!オッドアイだぜ邪気眼だせ」
「意味わかんねぇし、てかそれ凄いの?眼が光るだけじゃ無いんだろ?」
「もち!凄いんだぞこれ!俺の力は魔眼て言ってな。一人ずつ使える魔眼は違うらしいんだけど、俺の場合は名付けて『弱点眼』。相手の弱点が見えるようになるんだ!」
「よくわかんねぇ能力だな……どんな風に使うんだ?」
弱点を視覚的に確認できると言う能力は、単純な戦闘力以上の価値を生み出すと言っていい。どんな物でも初めて見ただけでその弱点を探れるのは、諜報や戦略的な価値からみてもまさしく最高の能力だ。
この能力があればどんな相手であろうが、最小限の労力で最大限の力を発揮し撃破できるだろう。
「あー、例えばあれか?それを使えば初めて見る戦艦でもどこに砲弾をぶち込めば沈めるのか一瞬でわかるって事か」
「簡単に言うとな。ルシオラさんは応用効かせてナンボの力とか言ってたけど」
適当な相槌を打つ。
「なぁ弘はどこに居んだ」
「あっち。何か制御し難い能力らしくて色々調整がいるんだって」
弱点眼を解除し部屋の奥を指差す。そこには某鋼鉄男の腕に似たアタッシュケースに入っていた器具を腕につけた弘と、何かの計測器のような機材を操作するルシオラ。そしてその傍でメモを取るハルクスエが居る。
弘の器具からはいくつかのコードが伸びている。
「あの腕につけているヤツあるだろ、あれが無けりゃ弘は能力が使えないらしい」
「難儀なモンだな」
そうしていると弘はこちらに気付いたようで視線を合わせてくる。その瞬間両腕の指先から紅い色の電光が二人に向けて発射された。
十本の指から飛び出た電光は一箇所に集まり、雷の槍となり、柳が立っていた扉の側に直撃しする。すると人一人が通れるくらいの面積を吹き飛ばす。
「…………え?」
「あぁぁぁぁっ弘さん!今は集中してないとこうなるって言ったでしょ!」
「すいません。おいっ二人共大丈夫か!」
「だから!集中して……!」
弘がドジったおかげで今度はバラバラに紅い雷光が飛び出す。
弘の前方に飛び散る雷は道場の壁を思うがままに破壊していく。当たった壁は一瞬で砕け散り、天井は破片を撒き散らす。
「危ねぇっ!」
道場の外に飛び出ようとする柳。しかし荒木は反応が遅れてしまう。暴れ狂う雷の前、このままではかなりの確率で直撃してしまうが、ハルクスエが爆発音と共に加速して荒木の前に立ち塞がるる。
するとハルクスエの掌から炎で出来た布が現れる。そしてハルクスエはその炎の布を大きく振るって電光にぶつけ、溶接音にも似た爆発音を響かせ雷の方向を大きくズラす。
「集中して!」
ルシオラの声が響き、少しずつ雷が収まっていく。そのまま弘は目を瞑り集中していく。
「どうしますルシオラさん」
「やっぱり機動鎧に土人形の技術を組み合わせて改造した物じゃダメね。ちゃんとした聖剣クラスの武具じゃなきゃりもう本人の成長を願うしかないわ」
「と言うことは限界出力値はさらに低く設定しましょう。力を引き出すとしてもこのままの出力では制御装置自体がダメージを負います」
「賛成」
そう言って計測器を操作する。暫くレバーやスイッチを弄っていたがそれも終了した。
「もういつも通りにしていいわよ。弘君」
「はあぁ……うわっ!なんかメチャクチャになってる」
「てか俺ハルクスエが助けてくれなかったら死んでたよ……」
「あっ!ごめん荒木」
「別にいいよ。怪我は無いんだし」
だが道場の内部はかなりボロボロだ。いたる所は焼け焦げ穴が空き破片が散乱している。
「ハルクスエさん……これって弁償は?」
「大丈夫ですよ弘さん……多分建築物修理費か、守護人訓練費かどっちかの勘定で予算はなんとかなります」
すると荒木が口を挟む。
「ならなかったらどうなるの?」
「皆さんの給料から差し引かれますね………そうなったら晩御飯が最悪そこらへんの雑草サラダにそこらへんの川魚ソテーに古古古古米ですね」
「てか給料制なの!?普通支援資金とか小切手で〜とか無いの!?」
「皆さんは一応民営企業の社員扱いですからね。働かざる者食うべからずですよ」
ついでに歩合制である。成績あげなきゃ飢え死にだ。
「てかさ、むっちゃ疲れたんだけど……風呂入ろうぜ。とっとと寝たい……疲れと眠気がドバッと来た」
「なんだ柳。お前むっちゃ眠そうだぞ」
「あ〜大騒ぎもひと段落したし。だいたい俺がコッチに来たのって夜の7時位だし」
今までやたら大騒ぎしたり驚きの連続だった為に忘れていたが、今の柳は結構時差ボケがでかい。
「なんか私も疲れましたし、風呂行きますか」
「おーいこーいこー」
「賛成。結構疲れた」
二人ともルシオラから着替えを受け取り、道場を出て道を歩く。外はまだそこそこ明るく、街路樹の間を爽やかな風が吹き、草原の草に波をつくる。
「この先に銭湯が有るんですよ。多分今なら安く入れます」
「はぁ……みんなさっきはごめんな」
「まぁまぁそこまでクヨクヨしなくても良いじゃ無いですか。荒木さんも柳さんも無事ですし」
眠そうな柳が質問する。
「はぁぁ〜ふう。さっきの炎の布は何だったんだよハルクスエ。結構気になる」
「あれは簡単な魔力防護術ですよ。強力な雷の魔力では結界を張ればすぐ破られますから、ああいう風にして力を流して防げたんです。念のために耐火服を着ててよかったです」
「いきなり専門用語ばっかり……耐火服?」
「はい。このセーターは耐火繊維で出来ていています。炎爆槍なんか使うと服が燃えちゃってて」
そこに荒木が口を挟むり
「そういうのって普通は自分は喰らわないんじゃないのか……」
「いやちゃんと自分が燃えないように術を組んでますよ?ただ服ばっかりはどうしようもなくて」
「ふぁ〜はぁ。なるほどね」
結構呑気な三人だが、弘だけは深刻な顔をしている。
(『紅雷』……あの雷はなんだ?どうもハルクスエが出していた魔術とかいう炎の布とは何か根幹が違う……荒木の魔眼とも何か雰囲気が違うな)
彼は知らないが、古来より雷と言うのは神話において最強の力として描かれる。
北欧神話の怪力無双のトールの持つ雷槌ミョルニル。
ギリシア神話の最高神ゼウスの象徴である雷。
中国圏の神話では最高神の上帝の属性でもある。
エクスカリバーやゲイボルクなど、神話において強力な武器も象徴として雷が使われている。
そして唯一神が反旗を翻したルシファーやサタン、ベルゼブブやベリアルなど、無数の天使を焼き払ったのも雷である。
誤字脱字や改善点、批評批判お願いします




