レイン・フライ・ヒット
〜通りすがりの男性サラリーマン〜
ふぅ、予報では確かに言っていたが、まさかここまでひどく降るなんてな……。折り畳み傘、持ってきててよかった……。
……にしても、あと四ヶ所も回らなきゃいけないなんて……早く家に帰って晩酌したいもんだ。
「き、キャアアアァァァァッ!」
路地を挟んだ向こうの通りから、女性の悲鳴が聞こえてきた。
驚いてその場所まで走っていくと、四車線の車道に二つの大きな赤黒い水溜まりができていた。
〜通報を受け、現場へ到着した男性刑事〜
俺は、大きな血溜まりを前にして、思わず立ち尽くしてしまった。もうすぐで定年退職だってのに、トラウマが増えそうだ……。
「こりゃひでぇな……」
二人組の女がホテルから落ちたと聞いたが、二人とも体のほとんどが肉片に還ってしまって、性別も年齢も一見してわからなくなってしまっていた。
俺は上を見上げ、現場周辺の地理情報を細かく脳に記憶させる。
「八十階か……。あんな高さから落ちたら、そりゃひとたまりもねぇよな……。おい、吾妻、落ちた窓ガラスの方はどうなってる」
「こっちもひどい有り様です……。うっ……確かにもう一組、いますね……、この事故で、亡くなったグループが」
「そうか……。十×二十メートル、三百キロの窓が落ちてきたんだもんな……」
「警部、ちょっといいですか」
「なんだ」
「二人とも、遺体として仕分けするのはかなり困難だという連絡が。血液も完全に混ざってしまって、どうしても同じ棺に入れるしかないそうです」
「……向こうでも、仲良くやってくれりゃいいんだがな……」
〜???〜
「……あいにくの雨ですね、先輩。せっかくの初デートなのに」
「そうね……。でも、貴女がいるから、かえって風流に感じるわ」
「う……先輩がそう言ったら、もう雨に何も言えなくなってしまったじゃないですか」
「私、謝るべきかしら?」
「あぁいえいえ、そんなことありません!」
「き、キャアアアァァァァッ!」
「え?」
突然、私達の回りが暗くなった。
上を見上げると、四角くて、大きな、「なにか」。
先輩が私を突き飛ばして、逃がそうとしてくれた。
けれど、「なにか」は私達二人を覆うように……。