クリスマスには愛を(下心も)込めて〇〇を贈ります
ご無沙汰をしております。
1日遅れてしまいましたが、クリスマスのお話です。
相も変わらず拙い話ですが、楽しんで頂けますように。
12月24日、午後10時過ぎ
私は寝静まった子供部屋にそっと忍び込み、枕元にプレゼントを置いた。
子供達を起こさないように、そろそろとドアを閉めてからホッと息をつく。
明日の朝、どんな反応を示してくれるのかな?
驚いた顔、大喜びする顔を想像して思わず笑顔になりながらリビングへ向かった。
「おかえり。どうだった?」
「ぐっすり寝てたよ。明日の朝が楽しみだね」
リビングに戻ると、お風呂上がりの夫が冷蔵庫からお茶を取り出すところだった。
はい、とお茶が入ったグラスを手渡され、ダイニングチェアに腰掛ける。
「きっと明日は早起きするんだろうなぁ」
「そうだね。普段から早起きしてくれたら、凄く助かるんだけどね」
毎朝バタバタして忙しないんだから。
そう言うと、苦笑する夫の顔をまじまじと見る。
向かい合わせに座って夫と話すのは久しぶりな気がするなぁ。
あれ、もしかしてちょっと痩せた?
年末だからか、最近の夫は帰宅が午前様な日々が続いていた。
疲れた私が先に寝てしまうこともあり、あまり会話が出来ない状態だったのだ。
「12月に入ってからは、苦手な算数も頑張ってたよ。サンタさんにプレゼント貰いたいから頑張るんだって言って」
「そうか…。サンタさんは頑張ってる人のところにくるんだもんなぁ」
「?」
最近の子供達の様子を話していると、突然席を立つ夫。
何をするつもりかと見ているとリビングを出て行き…戻ってきたときには手に何かの包みを持っていた。
あれ?あのパッケージ、どこかで見たことが…。
「あのさ」
持ってきた包みをテーブルの上に置くと、夫は私の隣に腰掛ける。
間に遮るものがない状態で向かい合わせになる状態で。
「俺にもサンタさんが来て欲しいんだけど」
「え??何の話?」
唐突な話題についていけず、きょとんとする私。
顔にデカデカと『?』と書いてあるであろう私に、丁寧に説明してくる夫。
「勉強を頑張ってる子供達のところにサンタさんが来るんだからさ、家族の為に頑張ってる俺のところにもサンタさんが来てくれてもいいと思わないか?」
「え?あ、うん、そうだね…??」
答えた途端、ニヤリと笑う夫の顔を見て、嫌な予感が背筋を走り抜けていく。
返事を間違えた!そう思っても、後の祭りで…。
「だからさ…サンタさんになってくれるよね?」
「はあぁぁぁ!?」
「馬鹿、声が大きい!」
そう言われ手渡された包み。
無言で開封するよう促され、恐る恐る開いてみると……。
「ねぇ、コレって……」
「男のロマン、サンタコスですよ♪」
包みの中にはキャミソールタイプの赤いワンピース、白いガーターベルト、ガーターベルトとお揃いのストッキング、そして下着が入っていた。
胸元と裾には白いファーがついていて、可愛いデザインなのだが…。
スカート丈が短い…ひざ上、ではなく股下から測ったほうが早いであろう、この超ミニのキャミワンピースを着ろと…!?
無理!絶対無理ぃぃぃ!!!
「絶対お前に似合うと思ったんだ。なぁ、早く着て見せてよ」
がちん、と固まったままの私を他所に楽しそうな夫は、いそいそと私の服を脱がそうとする。
上着の中に手が入ってきたところで我に返った私は、慌てて服の中から夫の手を追い出し距離を取った。
「ちょっと待って!?なんでそうなるの!?」
「え?何が?」
「『何が?』じゃなーーーい!!」
首を傾げてこちらを見る夫を睨み、ワンピースを投げつける。
じりじりと後ずさる私、じわじわと距離を詰めてくる夫。
「算数を頑張った子供達にはサンタさんが来たのに、俺のところに来てくれないのか?」
「サンタさんは子供のところにしか来ません!」
「なんで?頑張ってる人に大人も子供もないだろ?」
「私に言われても知りません!サンタさんに言ってください!」
「じゃあサンタさん連れてきてよ」
「自分で探してきてください!」
子供のように屁理屈な会話をしつつ、じりじりと動きながら逃げる隙を探す私。
ふと、夫の視線がダイニングテーブルへと向けられた。
今だ……!!
夫の視線が外れた瞬間、リビングのドアへと走ろうとした私の足が何かに躓く。
嘘、こんなタイミングで何が…!?
よろめいて倒れそうになった私の腕を後ろから掴む手。
おなかに回った腕に身体を支えられ、気がつけば夫の腕の中。
「捕まえた」
そう言うなり、右手が上着の中へ滑り込んでくる。
左腕は逃がさないと言わんばかりに腰に回ったままで、指先を使ってソロソロと右のわき腹を撫でさする。
…そこが弱いことを知った上で…。
びくん、と大きく跳ねた私の身体を左腕一本で押さえ込み、そっと耳元で囁かれる。
「ここで俺に着替えさせられるのと、自分で着替えるのと、どっちがいい?」
「…っ」
「答えるまで、ずっとこのままだからな?俺はそれでもいいぞ」
耳の縁を何度も舌で舐られ、気がつけばブラジャーのホックを外された状態にされ。
私は半泣きで白旗を揚げることになった。
「~~~~~っ!!!着ます、自分で着ます!だからもう離してぇ」
「よし、言ったな。お風呂まだだろ?寝室で待ってるから早く帰ってこいよ」
夫から手渡された衣装一式を持ってバスルームへと追い立てられる私。
恨めしげに夫をねめつけると、にこにこと手を振られた。
いっそのことバスルームに閉じこもってしまおうか…。
1時間もすれば、きっと夫は寝てしまう……
「あ、45分経っても出てこなかったらドアをぶち破るから。逃げようなんて考えないほうがいいと思うぞ?
…酷くされたいなら篭城してもいいけど、あまりおススメしないかな」
「…ハイ、できるだけ早く出てきます…」
肩を落としてバスルームへ向かう私は、背後の夫の表情に気づかなかった。
楽しそうに、嬉しそうに笑っていたことを。
「楽しみだなぁ。さて、今の間に寝室の準備をしとこうか…」
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「おかーさん!!見て!サンタさんからクリスマスプレゼントを貰ったよ!!」
「おかあさん!!サンタさん来てくれたよ!!」
子供達に良かったね、と笑顔で言いながら、内心で大きくため息をひとつ。
何故、私のところにはサンタさんは来てくれなかったんだろう??と思っていると、そっと背中から抱きしめられた。
「おはよう。昨日は無理させてごめん」
「謝るくらいなら、手加減してよね」
前に回された腕を軽く抓って腕の中から逃げ出す私に、そっと差し出されたのは…小さな箱。
「後で開けてよ」
そう言うと子供達のところへ歩いていく夫。
子供達と遊んでいる姿を横目に見ながら、渡された箱を開けてみる。
また何か変な物が入ってるんじゃないの?という私の思いとは裏腹に、目に飛び込んできたのは白い手袋とハンドクリーム。
そして、1枚の小さなメッセージカード。
【いつもお疲れ様。そして、ありがとう】
思わず口許に笑みが浮かぶのを堪えきれず、慌てて子供達に背を向ける。
こっそりとプレゼントを準備したのは、どうやら同じだったみたい。
キッチンに隠しておいた夫へのプレゼントを見つめ、いつ渡そうかと考えを巡らせながら小さく、ありがとうと呟く。
サンタさんは来てくれなかった、と思っていたけれど、全然そんなことなかった。
今年のクリスマスは、特別なプレゼントを貰ったよ。
胸の奥に柔らかい光と熱…大事に想う幸せと、想ってもらえる幸せ。
ぽろり、と頬をつたう雫はきっと暖かい想いの塊。
お読み下さり、ありがとうございました。
読んで下さった皆様に、心からの感謝を。
年内は、これが最後の投稿になります。今年一年お世話になりました。
来年も、どうぞ宜しくお願い致します。良いお年をお迎え下さいね。