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第三回 企画会議(後編) 規制におけるR指定はどこまでがOKなのか?

「では、部長。どういった理由でこの作品が部活動における作品にふさわしくないと?」


部長の発言に一番最初に啖呵を切ったのはシナリオ担当のもっちゃんだ。

彼は自分の作品に絶対の自信を持っているのか。

自信満々に部長に話しかける。


「敵を仲間にするためにオッパイを大きくする。そのためにはオッパイを揉まなければならない。そんな作品が如何わしくないとでもいうつもりか?」


売り言葉に買い言葉。

もっちゃんの発言を堂々と返す部長。


「質問に質問で返さないでくださいよ。まぁ、いいでしょう。一応答えます。如何わしい作品であることは十分に理解しています。ですが、R18指定の要素はありませんし、胸を揉むぐらいの行為はそこまで大きな問題ではないと思っていますね。今時、アニメや漫画でもその程度のことはしています。」


もっちゃんは部長の質問返しに反論しつつも自分の意見をきっちりと述べている。

まだ高校一年生とは思えない堂々とした発言だ。

逆に部長はその言葉を聞いて少したじろいている。

おい、最終学年。もっと堂々としなさい。


「いや、でもさ。もっと普通の作品のように敵を倒していくサクセスストーリーじゃダメなの?」


仕方がないので、俺が疑問を投げかける。

部長は言葉には出さないが、「いいぞいいぞ」とでも言いたげな顔でニヤついている。

だが、そのセリフを待ってましたとばかりにもっちゃんは俺の方を向いて意見を述べる。


「以前から、俺はそのことを疑問に思っていました。胸を揉むことやちょっとしたエッチな行動を強く批判する一方で、悪を倒すためならば暴力や殺人を行うことに一切の否定が入らない。それっておかしくないですか? なんでエロよりもそっちほのうが問題にならないんですか? 人の命を奪う物語はいいけれど。エッチなことをして人々を救う話はダメなんですか? そういう僕の思いが作品化されてこの物語はできています。なので、普通の作品ではだめです。」


ううむ。

手ごわい。

自分の疑問をこちらにぶつけつつ、こちらの質問に対しても完全に答えている。


しかも、問題の焦点を『卑猥な作品はいけない』から、『敵を殺すか。オッパイを揉んで仲間にするか』の二択問題にしてきている。

これで前者を応えれば、『卑猥な作品はいけないが非道な作品は倫理的に許される』という結果になりかねない。

逆に後者を選べば、この作品の後押しを俺がしたことになる。

教育者として、こういった作品を推進していると思われるのはいただけない。

俺の教育者としての立場が危うくなってしまう。


「そうでなくてだね。私は如何わしい作品はいけないと言っているんだ。学校のイメージが悪くなる。」


「・・・イメージ? そうやって外からの視線しか気にしてないから今の日本は駄目なんだ!」


俺の言葉に、もっちゃんは声を大にして叫んだ。


「外聞ばかり気にして、大事なところから視線を逸らす! そんなことばかりしているからダメになるってなんで気づかないんだ! 日本が駄目なのはあんたみたいの考え方の政治家がいっぱいいるからだ! 自分が駄目だと思うことは駄目だというくせにこっちの意見は全くの無視! そんなんでいいと本気で思っているのか?!」


それから、もっちゃんのマシンガントークは続く。

話の転換?

違う。

先程の話は人を殺す残虐な作品を書きたくないから如何わしいけど、死人の出ないストーリーを書いたものなのだ。

それを、如何わしいから死人を出せと言われて「はい」と答えるわけがない。

もっちゃんは前提条件が違うということを言いたかったのだという。


では、人を殺さない方向で・・・

となった時、作品にリアリティを求めた場合。それは破綻する。

そもそも、負けた相手がもう戦いに来ない可能性は低い。

特に、国家規模で徴兵し戦っている人間が一度負けた程度で引き下がるわけがない。


では、再起不能になるような怪我を負わせるか?

生きているだけの人形にして、手足を切り落としたけど生きているから倫理的には問題ないとするのか?

手足すべてを失わせるのは酷だから一つだけにすれば問題ないのか?


魔法の存在する世界だから魔法で再起不能にしろ?

精神を破壊すれば満足か?

普通の人は魔法が使えるけど、倒された敵は魔法を使えなくなれば満足か?

確実に迫害の対象になるが、それは問題ないのか?


そもそも、今まで使えていたものが使えなくなって生活できるのか?

魔法の発達した世界で魔法とは、文明の利器だぞ?

文明の利器が使えなくなってお前は今まで通りの生活ができるのか?

お前はいいとしても、他人にそれを強要していいのか?


たかが、オッパイを揉む作品。

されど、オッパイを揉む作品。


どちらの評価も正しく、どちらの評価も間違っている。

重要なのはそこではないのだ。


この物語を短く表すのならば、『異世界ヌゥーで迫害を受ける人たちを救うために、異世界から不思議な力を持った少年がやってきた。』ただそれだけの作品なのだ。

そして、相手はこちらを殺そうとしてくる。

ほとんどの作品は、それを力で解決する。悪い言い方をすれば暴力で解決する。

力あるものが正義。

それは世界の心理だ。

敵は殺す。

当然のことだ。


だが、せっかくの物語だ。

所詮は空想上のお話だ。

無血で、平和に解決してもいいじゃないか。

オッパイを揉むだけですべてが丸く収まるならそれでいいじゃないか。


それくらい。

許されてもいいだろう?









こうして、もっちゃんの力説によってこのシナリオは可決となり制作は無事に進められた。

異世界をいかにして救うかを題材にしたこの迷作RPGは空前の大ヒット。









そして、この作品を最後にして・・・

団子建立みたらし高校ゲーム制作部は廃部となった。

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