第四話『ヨモギ団子の串、パンにゃんと出逢ったのにゃん!』
第四話『ヨモギ団子の串、パンにゃんと出逢ったのにゃん!』
みんにゃがみんにゃ、押し黙っているのにゃ。
(誰か口を切ってくれにゃいかにゃあ)
ウチにゃけではにゃい。みんにゃの顔色がおんにゃじ思いであることを裏づけている。ややあって、こういう状況に一番耐えにくいと思われる友にゃちが期待に応えてくれたのにゃん。
「はぁい! 質問がありますでぇすっ!」
誰かが、ほっ、と息を洩らす。みんにゃ気持ちは一緒にゃ。この言葉をきっかけにウチらの歯車が正常に動き出したようにゃ気がしたからにゃ。
「はい、どうぞ」
勢い良く手を上げたミムカにゃんを指差したのはミストにゃん。ここでいつもにゃら、『議長を差し置いてどういうことわん?』とミーにゃんが突っかかってきそうにゃものにゃのにゃけれども、膝を抱えて座り込んにゃまま動く気配はにゃい。黙り込みにゃがらも不満そうに口をとがらせている様子から察するに、さっきまでの『友にゃちの失踪に打ちひしがれて』の状態からは既に脱却しているとみていい……にもかかわらずにゃ。
ではどうして? 理由は明白。質問に答えられる自信がにゃいのにゃ。『ええと、ええと』と、しどろもどろににゃる自分を曝け出したくにゃいのにゃ。体面を維持する為にも自分は黙って、代わりに答えられる者に答えてもらう。この方針が徹底しているのが、誰あろう、ミーにゃんにゃのにゃ。
まっ。この際、親友の分析はさておいてにゃ。
「天空の村の外へ飛んでいったってことはありませんですかぁ?」
「ふぅ」
そっぽを向いてほおに右手のひらを当てにゃがらミストにゃんはため息を。
「それはないわね」
別にミムカにゃんに呆れているとか、軽蔑しているとか、嫌っているとかじゃにゃい。さらっと口にするくらい、短めにゃ答えの時にミストにゃんが良くやる癖にゃのにゃ。
「ボクもないと思うな」
ミクリにゃんもミストにゃんを一瞥したあと、賛成の意を。
「ウチも激しく同意にゃ」
「アタシもそう思うわん」
「オレもだ、ミムカ」
ウチ、ミーにゃん、ミロネにゃんと続いたことで孤立状態ににゃってしまったミムカにゃん。戸惑った様子が顔からも口調からも伝わってくるのにゃ。
「はて? どうしてですかぁ?」
(ぶふっ。こういうところはミクリにゃんとおんにゃじにゃ)
素直で飾らにゃい、判りやすい性格は一つの魅力。変に偏った考えの持ち主でもにゃいかぎり、誰からも好感を得やすく、友も得やすい、とウチは思っているのにゃ。
ミムカにゃんの頭の上には、『?(はてな)』の文字が一杯にゃん。ほおづえを突きにゃがら、首を傾げている彼女にミストにゃんが答えを。今度はまともに相手の顔を見ている。ちゃんと答える気がある証拠にゃ。
「あなたも知っているわよね? ここ天空の村が、生きとし生けるもの全てが滅んだゴーストプラネット、『ウォーレス』の上空に浮かんでいる孤島だってことは」
「はい、存じておりますですよ」
「村の端っこまで飛んでいって見下ろせば一目瞭然だけど、ウォーレスと村の間には強い毒性を持つ黒灰色の雲海が横たわっているわ。あそこから時折、ぼんぼん、とガスの塊が飛び出してくるのはあなたも知っているでしょ?」
「はい。村の上空まで到達することもありますですからねぇ。まぁ直接、こちらへと落下するのを見たことはないんですけどぉ」
「白色ならただの気体の塊にすぎないんだけど……、赤混じりの黒色は違うわ。毒を帯びているだけじゃない。邪悪な怨念をも含んだ塊よ。もし仮に後者がぶつかってしまったとしたら……、霊体でさえも跡形もなく滅びてしまう。雲海に墜ちても同じこと。これは村では常識よ。間違っても、村から出ることなどあり得ないわ」
「そう……でしたねぇ」
ちょっとうなだれた感じで、頭を、こくり、とさせるミムカにゃん。表情が暗いのは友にゃちに不幸が起きたと認めたからかもしれにゃい。
ここ天空の村はかつて、ウォーレスの大地、大陸の一部であったという話にゃ。人と霊体がともに暮らす平和にゃ棲み心地のいい星にゃったらしい。ところがにゃ。他の天体から大挙してやってきた移民……『避難民』とか称する人間ら……の間で起きた覇権争いが元で戦争が勃発。惑星全土が戦場と化してしまったのにゃとか。そこで神霊ガムラは、原住生命体のほとんどが棲み、自分の核も眠るこの村を戦火から守る為、やむにゃく大地から切り放した、とイオラにゃんは教えてくれた。
天空の村の形って、そうにゃにゃあ、大ざっぱにいえば、円錐を逆にしたようにゃ姿といえるかも。とがった部分は下で、丸い部分が上にゃ。時折、雲海から飛び出してくるガスの塊は村の下部をも直撃することがあり、ウチらはそれを地震という形で知る。とはいってもにゃ。天空の村に満ちているガムラの霊力が防壁の代わりをしてくれる。にゃもんで、どんにゃにぶつかろうとも、はがれ落ちる土や岩の破片は、ほんのわずか。大事には至らにゃい、というのも村の常識とにゃっているのにゃん。
みんにゃがみんにゃ、口を噤んでしまう。
(恐らくこの場に居る誰もが今、ずぅぅん、と沈んにゃ気持ちににゃっているのにゃろう)
静かにゃる時が流れる。とその時、気勢を上げた妖精がひとり。
「みんなぁ! 諦めてはいけないわん!」
『ミーにゃん同盟』のリーダーであり、ウチの親友でもあるミーにゃんが吼える。ちゃぶ台の上に立つと自分を、そしてウチらみんにゃの士気を鼓舞するかの如く、右手に拳を造ってみせたのにゃん。
「ミロネんのいった、『消滅してしまったのかもしれない』の『かもしれない』は、不確定要素が含まれていることを意味しているわん。なら、『かもしれない』を『アタシたちで見つけられるかもしれない』に使ったって、あながち間違いだとは思えないわん。
みんなぁ! 四の五のいわず、ミリアんを捜しに行こうわん!」
おぉう! ぱちぱちぱち。
『考えるより、先ずは行動を』。まさにウチらのポリシーにぴったりのお言葉。きっと、みんにゃもウチとおんにゃじ気持ちにゃったのに違いにゃい。ある者らは拳とともに気勢を上げることで、またある者らは拍手をすることで、賛同の意を表わしたのにゃん。
こうしてウチらはイオラの森中を捜し回ることににゃった……のにゃけれども。
上空の真ん丸様を見れば、お昼も、もう間近にゃ。
「そうと決まればミーにゃん。腹が減っては戦が、いや、捜索が出来にゃいのにゃよぉ!」
ウチはこの一言で半ば強引にミーにゃんを『樹海の森』にある果物園へと誘ったのにゃ。落ち葉の中でも割と綺麗にゃものをせっせとかき集め、重ね合わせてお皿代わりに。ウチがお気に入りの樹木のてっぺんに登って枝をゆらせば、美味しい木の実がじゃんじゃん落下。もちろん、食べる以上のものは取らにゃいのが不文律。『これぐらいあれば』と納得したところで地面へと下りた。
あとは仕上げを残すのみにゃ。落ちた木の実を拾い、先ほど造った葉っぱのお皿……赤や黄や緑にゃどの色が混じった、ある意味、芸術ともいえる……に盛りさえすれば、
「完成にゃあ!」
心躍る思いが喜びの声とにゃって口から。気分が高揚している間にと、間髪容れずに食事の前のご挨拶。
「いっただきますにゃあん!」
むしゃむしゃむしゃ。もぐもぐもぐ。
ウチら霊体は、どんにゃに食べても直ぐにお腹がへっ込むから幾らでも食べられるのにゃ。生前に夢見た、『かぎりにゃき味への追及』が、今は現実に行にゃえる。にゃんとも不思議にゃ気分。
むしゃむしゃむしゃ。もぐもぐもぐ。
「美味いにゃあ。どうにゃん? ミーにゃんも一つ」
親友に水を向けてみる。盛んにパクついているウチの姿を見るうちに、興味を覚えたのにゃろう。『アタシはちょっと』と遠慮していたミーにゃんもついに参戦。ウチと一緒ににゃって食べ始めたのにゃ。
がつがつがつ。がつがつがつ。がつがつがつ。がつがつがつ。
(相も変わらず、すっごいにゃん)
小さにゃ身体にゃから一回に口へと運ぶ『量』は、当然ウチとは較べようもにゃいほど少にゃい。ところがにゃ。『速さ』では圧倒。目にもとまらにゅ、くらいの勢いでほお張るもんにゃから、おんにゃじ量でも、ほぼおんにゃじぐらいに食べ終えてしまう。『量』と『速さ』を合わせて考えるのにゃら、ウチとほぼ互角の食べっぷりとみて間違いにゃい。
(でもにゃあ。ウチと張り合っている、っていうわけでもにゃかろうしぃ……。
もっとゆっくりと味わって食べればいいのにぃ)
霊体は本来、食べ物を口にすることは出来にゃいという。でも、ここ天空の村では、お食事を心ゆくまで楽しめるのにゃん。
ウチについていえば、実体波を纏えるからにゃ。おかげで生前とにゃんら変わりにゃく食べられるのにゃん。
でもってウチ以外の霊体……妖体を含めてにゃ……はというと、ちと話が長くにゃるのにゃけれども、食べられる要因としては次の二つが挙げられるのにゃん。
一つは……『霊覚』にゃ。
自分が発生している霊力を通して得られる感覚のこと。ぶっちゃけた話、霊体の『感覚』といえば、これしかにゃい。心と心で遠くの相手とも伝え合える『霊覚交信』や、異様にゃ気配の察知にゃども霊覚を利用することで実現している。
でもって、も一つは……『摩擦』にゃ。
この世に存在する。それは霊力を持っていることに他にゃらにゃい。物質、生き物問わず。当然、食べ物も。存在力すにゃわち霊力にゃのにゃ。地面に立てる、座れる、あるいは物をつかめる、にゃど、霊体が実体あるものに触れられるのも、自らが自然放出している霊波を高めて、存在力の霊波との間で霊圧に依る『摩擦』を生じた結果にゃん。
『霊覚』と『摩擦』。これら二つを組み合わせることで、触感、視覚、聴覚、嗅覚にゃどといった、実体を持つ生き物とにゃんら変わらにゃい感覚を持つことが可能に。食べ物から漂う香りを嗅ぐことも味わうことも、『霊力』を摂取して命の糧とすることも出来るようににゃったのにゃん。
たにゃ……、実体ある生き物とウチら霊体とは、おんにゃじ食べるにしても、得られる物が違うし、この違いは食べ物に対する意識の違いへとも繋がっているのにゃ。
実体ある生き物は、食べ物から『栄養素』を摂取して命の糧とする。生きる為に必要不可欠にゃものと考えているのにゃ。これに対し、ウチら霊体はまるで違う。というのも、食べ物がにゃくても霊体は困らにゃいのにゃ。どうしてかといえば、天空の村全体が『神霊』と呼ばれる地霊ガムラの霊力に満ちた空間にゃから。命の糧は直ぐそばに、無尽蔵にあるといっていい。わざわざ食べ物から摂取する必要はにゃいのにゃん。それにゃら、どうして食べるのか? ずばり、『香り』と『味』を楽しむ為に他にゃらにゃい。食べ物とはウチらにとって『必要不可欠にゃもの』ではにゃく、『嗜好品』の意味合いが濃い代物、といえるのかもにゃん。
説明ついでに、も一つにゃ。『どんにゃに食べても直ぐにお腹がへっ込む』について言及するにゃらば……。
食べ物のほうからすれば、霊力を失うということは、存在する力を失うことと同義。霊体の身体の中で跡形もにゃく消えてしまうのは当然の帰結にゃ。もっとも……、霊力を余すところにゃく取り込もうとすれば時間がかかるし、この間、食欲も失せる。でも、ウチとしては直ぐにでも別にゃ食べ物をほお張れるようにしたい。そこでにゃ。生前が普通のネコであるウチは、これくらい取り込められれば、と納得した時点で食べ物は排泄してしまうことにしている。早い話が、おトイレ……地面に穴を掘ってにゃ……で用足しをする、というわけにゃん。
(……まぁ、お食事中には是非とも避けたい説明ではあるのにゃあ)
食事が終わると、早速ミーにゃんと捜索を開始したのにゃ。実は、ミリアにゃんの棲み家もこの園の中。食事ついでに見つけて、『ばんにゃあい!』で終わる予定でいたのにゃん。でも……所詮、期待は期待、予定は予定でしかにゃかった。
(くうぅっ。見つからにゃかったとは残念至極にゃ)
とはいえ、いつまでもがっかりしてはいられにゃい。気持ちを切り換えて別にゃ森へと向かうことにしたのにゃん。
イオラの森って幾つものエリアに分かれているのにゃ。主にゃものとしては、『遊びの広場』と『湖の広場』。薬園や果物園、それに霧の園がある『樹海の森』。そして『温泉の森』の計四つが挙げられる。これらの間を行き来するには、『森路』と呼ばれる『けものみち』を通るのにゃ。
お昼を食べ終えたウチとミーにゃんは今、森路の真っ只中。土が乾いているからにゃろうか。白っぽくて、ちょっと急ぎ足をしたにゃけでも土煙がふわんと舞い上がる。また森の中に較べて枯れ葉が少にゃく、逆に小さにゃ石ころは多い。それでも生き物が頻繁に踏み固めているせいか、均されていて歩きやすいことは歩きやすいのにゃ。
誰がどこを捜すかはミーにゃん同盟の会議でちゃんと決めてある。アホの集まりとはいっても、『どぉっこにしようかにゃあ』と適当に向かう先を選んにゃわけじゃにゃい。一つのエリアが終わったら、お隣のエリアへ。そこが終わったら、またお隣のエリアへ。ってにゃ具合に、続いているエリアへと進むようにしたのにゃ。そのほうが森路を歩くのにかかる時間を短く出来る。もちろん、他の仲間とはダブらにゃいようににゃ。
捜索側の本音をいうにゃら、どこもかしくも森路からの覗き見にゃけで済ませたいところ。でもそうはいかにゃい。林立する木々が視界を遮ってしまうのにゃ。
隙間にゃく並んでいる木々が、塀のようにゃ厚い壁の層を造ってしまっている。また、たとえ木と木の間隔が十分にあってもにゃ。中が広すぎるが為に、どれかの木が邪魔をして、奥の奥までは見渡せにゃい。
(まぁ覗き見にゃけで一望出来るにゃんて狭いところも、にゃいしにゃあ)
にゃもんで詳しく調べたいのであれば、やっぱり、一つ一つ飛び込むしかにゃい。
(ここら辺が、ちと面倒にゃん。でもやるしかにゃい)
森路を歩くウチらは、エリアとエリアの境目に造られた『にゃあまん神社』へと差しかかったのにゃん。
神社とはいっても名ばかりにゃ。実際には茶色がかった白っぽい石が山積みされているにゃけ。真ん中の下部分辺りが抉られたかのように、ぽっかり、と穴が空いていて、そこに、『にゃあまん』とかいうご神体の石像が祀られている。こちらは緑がかった白っぽい色で造られていて、にゃにか意味ありげにゃ感じがしにゃいでもにゃい。
霊体の中には、『石像には本当に戦神が眠っていて、表面の石は殻にすぎない』にゃどということを、したり顔で話す者もいる。イオラにゃんに尋ねても、『さぁ、どうかしらね?』と答えをはぐらかされてばかり。真相は闇に閉ざされたままにゃのにゃ。
ここで思いがけにゃい事態……では全然にゃいのにゃけれども、そういうことにしておいたほうがあとで角が立たにゃいのにゃ……が起こってしまったのにゃ。
「ミリアにゃんは一体どこへ……ふわああぁぁんにゃ!」
(ダメにゃん! ミリアにゃんを捜さにゃきゃあ!)
心ではそう思っていても、どうしても眠けが。
無理もにゃい。ネコは一日の大半が『寝子(=ねこ)』とにゃる。美味しい物を腹一杯食べると、おネムをしたくにゃる。この二つの『にゃる』が重にゃった瞬間、夢の世界が開いたのにゃ。でもって入口の門の下にはウチに良く似た美しいネコがひとり。『なにをしているの? さぁ早くいらっしゃい』との魅惑の言葉とともに手招きをしている。招きネコが誘っているのにゃ。おんにゃじネコの身で、これにどう抗えというのにゃろう。
「ねぇ、モワン。ほとんど白目じゃない。そんな寝ぼけまなこでふらふら歩いていたら、樹木に頭をぶつけてしまうわん」
「ぶつかったらそのまま寝ればいいにゃけの話にゃん。気にする必要にゃんてこれっぽっちもにゃいのにゃん。ウチは自由にゃ化けネコにゃもん。思うがままああ……ふわああぁぁんにゃ」
(もう自分が……にゃにを……いっているのかも……良く判らにゃい)
ふらぁりぃ。ふらぁりぃ。
「ほらほら、右に寄りすぎだわん。……と思ったら、今度は左……あっ、また右だわん。
んもう! 危ないってばぁ」
「にゃあんとも眠たいのにゃ。こればっかりはどうしようも……」
ばたっ!
「あっ! モワン!」
(ミーにゃん……。ウチは……ミアン……にゃ……)
うつ伏せに倒れてしまったようにゃ気がするのにゃけれども、判然としにゃい。頭が半ば夢心地の状態といっていい中、ミーにゃんの声が続いている。身体をゆさぶられているようにゃ感覚もにゃ。
「ねぇ、モワン。モワンってばぁ。早く起きて……」
言葉が不自然に途切れたのにゃ。でも直ぐに。
「あああっ! モワン! 危ないわん! 上からぁっ!」
悲鳴にも似た声。ウチはいっぺんで目を覚ましたのにゃん。ミーにゃんの『上から』の言葉が頭に残っている。急いで見上げようとしたその時にゃ。
ずぶっ!
「ふにゃあっ!」
ばたん!
ウチはそのまま還らにゅネコと……、
「にゃるわけにはいかにゃいのにゃん!」
(ウチも器用ににゃったもんにゃ。自分で自分にツッコミを入れてしまうにゃんて。
……おっとと。感心している場合じゃにゃい!)
「ふにゃあああっ! にゃぁんにゃあぁ、これはあぁっ!」
おでこのど真ん中に『にゃにか』が突き刺さっていたのにゃん。
(にゃんとかしにゃければ)
ウチはすぐさま、右の前足で『にゃにか』をつかんにゃのにゃ。
ずぼっ!
引っ張ったら、拍子抜けするくらい、いとも簡単に抜けたのにゃ。見れば細長い棒で、一方の端がとがっている。色は薄い黄色といったところにゃ。鼻を、くんくん、と近づけてみれば、生前、ウチが大好きにゃった甘い香りが仄かに漂ってくる。
「間違いにゃい。あんたは……ヨモギ団子の串にゃん!」
そういってネコ差し指を、びしっ、と突きつけたのにゃん。
ヨモギ団子。……ヨモギの葉を刻んで混ぜた真ん丸おモチ三個が、木を削って造った串に刺してある。『あんこ』と呼ばれる、べったり、としたものが塗られていて思わず生唾を、ごっくん、としたくにゃる。ウチが大好物とするお菓子にゃん。他の惑星から引っ越してきた移民が持ち込んにゃものらしい。村人らの間で評判が良かったことから、元の素材と似ているものを見つけ出して、それを材料として造ったとかいう話。最初は『ヨモギ団子もどき』と呼ばれていたみたいにゃのにゃけれども、そもそも本物自体が、もうどこにもにゃい。『もどき』を取っ払って、今みたいに『ヨモギ団子』とにゃるのは、ごく自然にゃ成り行きにゃったのかもしれにゃい。
痛みを感じにゃかったものの、ふつふつと怒りが込み上げてきたのにゃん。好きにゃものに裏切られた。愛情と憎しみは表裏一体。まさに『怒髪、天を衝く』思いにゃん。
「このいまいましい『串』にゃんめ。こともあろうに年頃の大事にゃ乙女のおでこを傷つけるとは。もう勘弁にゃらにゃいのにゃん!」
怒り狂ったウチはネコ人型モードに。両手を使い、ぽきっ、と折ろうとしたのにゃ。
ところが……にゃんと!
「ま、待ってくれのぐし。ワタグシの名前は『パン』。悪気はなかったのぐし。どうか命ばかりはお助けのぐし」
串を握っているウチの右手に、にゃにやら、ぽたぽたと水らしきものが。なめてみると、これがまたしょっぱいのにゃん。
(はっ! ……ということはにゃ)
「パンにゃんとやら、あんた、泣いているのにゃん?」
串にゃけに細みの身体。顔もあるのかにゃいのかさっぱりにゃのにゃん。受け留められるのは霊覚を通して伝わる心の言葉のみにゃ。
「ぐすん。そう……なのぐし。ぐすん」
(涙を流しているのにゃ。本当に済まにゃいと思っているのにゃん)
ウチの気持ちがにゃんにゃんと静まっていく。右手の握りもユルくにゃる。
と、その時にゃ。
ずぼっ!
パンにゃんが拳から飛び出す。一瞬、『しまったぁ! 逃げられたのにゃん!』と思ったのにゃけれども、……違ったのにゃ。そんにゃ狭い了見ではにゃかった。ウチの目の前で、ぴたっ、と、とまったのにゃ。
「ぐすん。悪かったのぐし。ぐすん。これ、この通りのぐし」
そういって細長の棒、いや、パンにゃんは、垂直に立っている身体をウチのほうへと倒して水平の姿勢に。と思ったら、また垂直に戻して。といった感じで、繰り返し繰り返し、続けている。まぁ早い話が、一本の串がぺこぺこと頭を下げているのにゃん。
「本当に悪かったと思っているのにゃ?」
「本当のぐし。本当のぐし」
ひたすら低姿勢で謝り続けるパンにゃん。ウチとしても怒りはとうに収まっているし、元々が温厚にゃ性格にゃ。許しの言葉を与えるのににゃんのためらいもにゃい。
「判ったのにゃ。今回は不慮の事故ということで、大目にみてあげるのにゃん」
「な、なんと寛大な。ぐすっ。有難うのぐし」
感動の涙にゃからに違いにゃい。今までよりも流れる勢いが強いのは、きっと。
(ふぅ。これで一件落着にゃん……と、そういえば)
さっきから見ているというのに。遅ればせにゃがら今、気がついたのにゃ。見ればパンにゃんは、平らにゃほうを上に、とがったほうを下にして宙に浮かんでいる。
(にゃぁるほどにゃ。やっぱり、団子を食べている時に持つほうが頭にゃのにゃん)
変にゃ発見に感心している自分が、にゃんともおかしかったのにゃ。
怒りが収まったこともあり、ウチはネコ型モードへ。普段の四つ足に戻ったのにゃん。
「モワン。無事で良かったわん」
そういってミーにゃんがウチのナデ肩に、ちょこん、と座る。
「大丈夫なの? おでこはもう痛くない?」
振り向けば、心配そうにゃ顔がそこに。
(にゃんのかんのとはいっても、やっぱり、ミーにゃんは優しいにゃあ)
「心配は要らにゃいのにゃ。これしきのことぐらいで、どうにかにゃるウチではにゃいのにゃん」
「よかったぁ。それじゃあ、これからどうする?」
「パンにゃんのせいで眠けが綺麗さっぱりと覚めてしまったのにゃ。
ミーにゃん。捜索を再開しようにゃん」
「うん。それがいいわん」
ウチとミーにゃんは、予定していた森へ歩こうとしたのにゃん。するとにゃ。
「ちょっと待って欲しいのぐし」
パンにゃんに後ろから呼びとめたのにゃ。ウチとミーにゃんは頭に『?(はてな)』を一杯浮かばせて、くるっ、と肩辺りから上を声のするほうへ。
「にゃんにゃ? まにゃにゃにか用事でもあるのにゃん?」
「あるなら早くいって欲しいわん。今日という日は二度と戻らないわん。ならば全力を尽くして遊びまくる。それが今という時間を生きているアタシたちの務めだわん」
(さすがはミーにゃん。いいことをいうにゃあ)
そう思いにゃがらも、親友の言葉の一つが心に引っかかってしまったのにゃ。
「ミーにゃん。捜索に対して『遊びまくる』っていういい方は、どんにゃもんにゃろう?」
「えっ。でもアタシたちにしてみれば、そういうことじゃないの?」
「まぁそれはそうにゃのにゃけれども。
たにゃにゃあ、それをいってはおしまいのようにゃ気がするのにゃ」
「じゃあ、どういえばよかったわん?」
「『にゃらば後悔のにゃいよう何事にも全力を尽くしてぶつかっていく』というのはどうにゃろう? 『にゃにを』に当たる部分はいわにゃくてもいいようにゃ気がするのにゃ」
「なぁるほろ。ものはいいよう、ってわけね。うん。それがいいわん」
ウチとミーにゃんの話し合いに一応の決着がみえた頃にゃ。再びウチらの耳元に『遠慮の意』を含んにゃ声が。
「あのぉ。そろそろ喋ってもいいのぐし?」
「あんた、まにゃここに居たのにゃん?」
「本当本当。なにやってんの?」
「あのぉ。ワタグシが呼びとめたのぐし」
ウチらは、はっ! として、思わず両手のひらを、ぱん! と叩いたのにゃん。
「おおっ! そうにゃんそうにゃん」
「すっかり忘れていたわん」
「お前さま方って……。まぁ、いいのぐし。
ところで、話というのは他でもないのぐし。実は、ワタグシは天外魔境からやってきた旅行者なのぐし」
「にゃ、にゃんと! 異界の者であったとは」
「そうだったのわん」
「で、下りやすいところを探していたら、お前さまの頭に突き刺さったというわけなのぐぐし。大変、済まないことをしたのぐし。そのお詫びといってはなんなのぐしが……。
この森をなんとなく気に入ってしまったのぐし。そこでものは相談なのぐしが、森を守る為に働くということで、ここにしばらく置いてはもらえないのぐしか?」
ウチとミーにゃんは、ほぼ同時ぐらいにお互いの顔を見合わせたのにゃん。
「ミーにゃん。どうするのにゃ?」
「うぅぅん。どうしたらいいわん?」
いきにゃりの頼みに戸惑うウチら。取り敢えずは、と、こんにゃ質問をぶつけてみたのにゃ。
「それは殊勝にゃ心がけにゃのにゃけれども、見たところ、たにゃの一本の串にしか見えにゃいのにゃ。『こういうことでお役に立てる』といった自慢出来るようにゃ力でもあるのにゃん?」
(あるわけにゃいのにゃん)
そうたかを括っていたウチに、こんにゃ返事が。
「これを用意してあげるのぐし」
ぱっ!
にゃんと! パンにゃんの姿が消え、代わって一枚の大きにゃ布がひらひらと。表面は青、裏面は赤と、にゃんともけばけばしい色合いにゃん。
「霊布で造られたこのマントの端を首に巻きつければ、空を飛ぶことが出来るのぐし」
「にゃあんにゃ、そんにゃことか。にゃははは」
「きゃははは」
ウチとミーにゃんは大笑い。でもにゃ。パンにゃんには合点がいかにゃいみたいにゃ。
「なんでそんなに笑っているのぐし?」
「あのにゃあ、パンにゃん。こう見えてもウチらは妖体。つまり、霊体にゃんよ。ミーにゃんはもちろんのこと、ウチにゃって絨毯姿に身を変えれば、簡単に飛べるのにゃ」
「なんと、霊体とは……。でも、それには自分の霊力を必要とするはずのぐし。ワタグシのマントを使えば、一切要らないのぐし」
「にゃあるほど。それは使い勝手がいいかもしれにゃいにゃあ。
とはいっても、ウチはそんにゃに空を飛ぶことがあまりにゃいのにゃけれども」
「でも、モワン。『転ばぬ先の杖』ってことわざもあるわん。使わせてくれるっていうなら、そうしたみたら? イヤなら直ぐに返せばいいんだし」
「それもそうにゃん」
ミーにゃんの勧めもあり、ウチもにゃんにゃんその気ににゃってきたのにゃ。
「判った、パンにゃん。有り難く利用させてもらうのにゃ」
と、ここでパンにゃんが最初にいったことを想い出す。
「ああでも……、お空を飛べるくらいでは森を守るにゃんて到底」
ウチが否定的にゃ見解を述べようとすると、パンにゃんがそれを遮ったのにゃ。
「いや、実は他にも『特別な力』があるのぐしよ」
「へぇ。特別にゃ力とはにゃあ。にゃあんか興味溢れる展開とにゃってきたのにゃん」
「本当本当。で? 一体なんなのわん?」
「それは……おあとのお楽しみ。おいおい判るということではいけないのぐしか?」
「ぶふっ」
ウチは口元に前足を当てて笑う。面白いことが始まりそうにゃ予感がしたせいにゃ。
「にゃんとも謎めいているのにゃあ。でもまぁたまにはそういうのもあり、ってことで、むしろ大歓迎。にゃあミーにゃん」
「うん。どっちに転んでもアタシが危険な目に遭うことはなさそうだしね」
「ウチも危険はイヤにゃよ。でもにゃ。にゃんか好奇心も膨らんできたし」
「どうやら喜んでもらえたようで。なによりのぐし」
にゃははは。きゃははは。くっくっくっ。
普段は静かにゃ森路の途中。『久し振りに楽しいことが始まるのにゃよぉ』と四方の森へ知らせるかの如く、ウチら三者三様の笑い声が高らかに響き渡ったのにゃ。
マントは小さくにゃり、ウチの首にマフラーとして巻きつく。これでパンにゃんとは、いついかにゃる時でも誰にも知られことにゃく会話が出来るようににゃったのにゃ。
パンにゃんの話に依れば、『森を守る為に働く』にはウチの協力が是非とも必要にゃとか。『まぁ少しぐらいにゃら』とは思ったのにゃけれども、どうやら、少しどころか、ウチが主体でやらにゃければにゃらにゃいみたい。そんにゃことは初耳にゃし、ウチも危険はごめんにゃ。ってことで、いったんは、お断りを申し出たのにゃ。ところがにゃ。その直ぐあとにパンにゃんが口にした『ある言葉』がウチの心の琴線に触れてしまったのにゃ。
立ち去ろうとして踵を返したウチの足をとめたばかりか、ついには、
「ウチも喜んで協力させてもらうにゃ」とまでいわせしめたのにゃん。
それからというもの、ミリアにゃんの捜索と列行する形でパンにゃんが口にした『特別な力』についての説明にゃいし特訓を受けるという、ネコ頭がいつ吹っ飛んでもおかしくにゃい、身体も頭も多忙にゃ日々をウチは過ごしていたのにゃん。
ミーにゃんに『実は』と話したのは、これらが全て終わったあとにゃ。『内緒にしていた』というよりは、『どちらもウチの予想をはるかに上回る短い期間で終わった』というのが本当のところにゃん。もちろん、ウチが優秀すぎたからではにゃい。『まぁ取り敢えず、これくらいは』みたいにゃ程度のものにゃったのが大っきい。とはいえ、『判らにゃい』あるいは『知りたい』と思ったことは、その都度、教えてくれるという。にゃもんで、『今直ぐ力を使え』といわれても特に不安は感じにゃい。
たにゃ一つ残念にゃったことが。ミーにゃん同盟の仲間にマフラー姿のウチを見せたところ、返ってきた評価はすべからず『格好いい』。『美しい』『可愛い』ぐらいは、いってくれるものと期待していたから、がっかり感はひとしおにゃ。『世の中ってこんにゃもの』と自分を慰めるしかにゃかったのにゃん。




