第二話『ちょっとひと休みにゃん! その一 ~四捨五入のお利口さん~』
第二話『ちょっとひと休みにゃん! その一 ~四捨五入のお利口さん~』
ここで『昔』のウチはひと休み。『今』のウチの出番にゃ。
「第一話で全滅とはにゃあ。……まぁ、最初はこんにゃものにゃろう」
ウチは、ずずずいっ、と親友の前へと身を乗り出す。
「ミーにゃん」
「な、なにわん? いつになくマジな顔を、ほとんどアタシの顔にくっつかんばっかりに寄せているけど」
「ウチはアホにゃのにゃけれども」
「……んもう、ミアンったらぁ。そんなに自分を蔑まなくても」
「ところがにゃ。最近接した新しい考えでいくと、ウチは、お利口さんににゃってしまうかもしれにゃいのにゃよ」
「なんと! 聞き捨てならないわん。もし、それが本当なら、いまだ耳にしたことがない画期的な考えといわねばならないわん。
ミアン。是非、その考えとやらを教えて欲しいわん」
「それがにゃ。……ちょっと待つのにゃ。話す前に、顔を引いて、と」
ぐいっ。
「うん。それぐらいでいいわん。さぁ、焦らさないで早くぅ」
「この偉大にゃる発見は、にゃんと、人間の子供らが教わる『算数』とやらの中に潜んでいたのにゃん」
「おおう! なんか現実味を帯びてきたわん。で、その教えとはなんなのわん?」
「ずばり、『四捨五入』の論理にゃのにゃん!」
「えっ。四捨五入?」
「たとえばにゃ。ここに0.0~0.9までの数字があったとするのにゃ」
「うん」
「普通にゃらばどうしたって、整数部は『0』で『1』にはにゃらにゃいのにゃん」
「そうなるわん」
「しかしにゃがら、というか、そこでにゃ。小数点一桁を四捨五入するという、まっこと素晴らしき前代未聞の新しい考えを取り入れるのにゃん!」
「おおう! すると、どうなるわん?」
「0.0~0.4までは残念にゃがら、これまで通りにゃのにゃけれども」
「0.5以上は?」
「繰り上がりが起きるのにゃよ。
0.5~0.9は四捨五入の論理でいえば、『1』とにゃってしまうのにゃん」
「へぇぇ。……まぁ確かに画期的な考えであるわん。だけどぉ」
「どうしたのにゃ? ミーにゃん。浮かにゃい顔をして」
「だからね。それとミアンがお利口さんになるのと、どういう関係があるわん?」
「今、喋った整数部の『0』と『1』を、『アホ』と『ぎりぎりセーフのお利口』に置き換えるのにゃん」
「えっ。どういうことわん?」
「つまりにゃ。おんにゃじアホであっても、五割以上、『1』のほうに近ければ」
「そうかぁ。ぎりぎりセーフのお利口になると」
「『お利口』にゃけでいいにゃよ。ぎりぎりであろうがにゃんであろうが、お利口はお利口にゃもん」
「なぁるほどねぇ。ミアンもネコ頭なのに良く考えたわん。褒めてあげるわん。
功績として、『四捨五入のお利口さん』と認めてあげるわん」
「有難うにゃん。これでミーにゃんも、ほっ、としたにゃろう?」
「えっ? なんでアタシが?」
「これからは自分がアホかどうかで悩まにゃくても済むにゃろう?」
「ちょっと待つわん。ミアン。アタシはアホじゃないわん」
「そうはいってもにゃ」
「なにわん? その冷やかなまなざしは」
「自分はアホじゃにゃいと、マジのマジで断言出来るのにゃん?
十割のお利口さんにゃと、誰の前でも自信を持っていえるのにゃん?」
「そ、それは……」
たじたじ。
「長年、アホにゃウチと親友同士で、しかも仲睦まじく一緒に暮らしているのにゃよ。
それにゃのに十割大丈夫にゃと、絶対の絶対に確信が持てるのにゃん?
ウチとミーにゃんは『類は友を呼ぶ』の間柄じゃにゃいと誓って断言出来るのにゃん?」
「あ……あ……あ……」
「無理することはにゃいのにゃ。五割でいいじゃにゃいか。それでお利口さんにゃんよ」
「なんか……とってもあんまぁい、ささやきに聞こえてきたわん。
判ったわん、ミアン。アタシもこれからは四捨五入でいくわん」
「決まったにゃ。にゃら、今日からウチとミーにゃんは」
『四捨五入のお利口さん!』
「だわん!」「にゃん!」
ぱちぱちぱち。ぱちぱちぱち。
「あっ。でも、その逆もまたありよね。『ぎりぎりセーフのお利口』から『アホ』までにして、五割以上、アホに近いなら……むんぐっ」
ばたばたばた! ばたばたばた!
慌ててウチは親友の口を前足で塞いにゃのにゃ。
「ミーにゃん、それ以上、喋ってはにゃらにゃいのにゃん。
ウチやミーにゃんにゃけじゃにゃい。生きとし生けるもの全ての幸せの為にゃんよ」