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プロローグ『ふあぁぁんにゃ』

 プロローグ『ふあぁぁんにゃ』


「ふあぁぁんにゃ」

 ウチは大きにゃあくびをしたのにゃん。

 ここはどこにゃん? と、寝ぼけまなこで周囲を見渡せば、『精霊の間』にゃん。イオラの木の中にあって、イオラにゃんとミーにゃんの棲み家。何年か前まではウチの棲み家でもあったのにゃ。緑がかった白色の、全体的にふんわりとした世界。見た目には判別がつかにゃいのにゃけれども、ちゃんと壁、天井がある。ぶつかっても、やんわりと弾いてくれるのでケガにゃど一切しにゃい。もっとも、床に関しては緑色の度合いが少し濃くにゃっている。ミーにゃんのおもちゃ箱や、寝床であるゆりかごのベッド、ウチらみんにゃが使うちゃぶ台にゃども置いてあるから、宙に浮かんにゃ状態でも、『ああ、あそこら辺が床にゃ』と見当がつくのにゃけれども。


「さてと。世はこともにゃし。鬼の居にゅ間に」

 すぅぅっ。すぅぅっ。すぅぅっ。

 すぅぅっ。すぅぅっ。すぅぅっ。

 すぅぅっ。すぅぅっ。すぅぅっ。

 ぼがっ!

「ふにゃん!」

 頭ににゃにかぶつけられたようにゃ気が。にゃもんで思わず目が覚めてしまったのにゃん。

「こらあっ! ミアン!」

「うわっ! 鬼にゃん!」

「誰が鬼わん? 可愛い妖精をつかまえてなんてことを……って、今はそれどころじゃないわん! 『お話が始まった早々、眠っててどうする?』っていいたいわん!」

「……にゃあんにゃあ。ミーにゃんか。おどかしっこにゃしにゃよぉ」

 この怒りんぼさんは、かけがえのにゃいウチの親友にゃ。


『イオラの森』の中にあって、でぇんと地面に長い影を落としている大木『イオラ』。ほとんどが森である『天空の村』において、どの樹木よりも長く生きているのにゃ。この大木に宿る精霊……大木とおんにゃじ名前を持つ村の守護神にゃ……が造り出した花の妖精こそが他ならぬミーにゃんにゃのにゃ。


「お願いにゃから、もうちょっとにゃけ」

 どうにも眠い。再びウチは夢奥深く……。

 すぅぅっ。すぅぅっ。

 ぼがっ!

「ふにゃん!」

 再び目が覚めたのにゃん。

「こらあっ! 何度も何度も繰り返さすんじゃないわん!」

「……やれやれ、せっかちにゃミーにゃんにゃ。どれ」

 よいしょ、と身体を起こしたのにゃ。

「ミーにゃん。にゃんか頭が痛いのにゃけれども」

「えっ。大変じゃない。早く病院へ……ああでも、ひょっとしたら、アタシのせいかも」

「どういうことにゃん?」

「さっきと今とで二回、ミアンの頭めがけて飛び蹴りをやったの。だからだと思うわん」

「にゃあんにゃ。そういうことにゃん。にゃははは」

「そんなことだわん。きゃははは」

 にゃははは。きゃははは。

「……って、笑いごとじゃにゃい!

 ミーにゃん。にゃんでウチの頭を足げにするのにゃ!

 んもう。これ以上、頭が悪くにゃったらどうしてくれるのにゃん!」

「あっ……そうだったわん。ごめん、だわん」

 ぺこり。

 ミーにゃんは突っ走るにゃけ突っ走るのにゃけれども、こちらが本気で怒っていると判れば、直ぐに、ころっ、と態度を変えてくれる。扱いやすいようで扱いやすくにゃい。扱いやすくにゃいようで実はとぉっても扱いやすい妖精にゃのにゃん。

「判ればいいのにゃよ、ミーにゃん」

(にしても最近、強くにゃったのにゃあ。ちょっと前にゃったら、痛くもかゆくもにゃかったのにぃ)

『銀霊』にゃんからパワーアップしてもらったという話にゃのにゃけれども、その分、こちらに迷惑が及んでしまう。困ったものにゃ。


 ともあれにゃ。お話が始まっているというのであれば、いつまでも寝ているわけにはいかにゃい。

「ふあぁぁんにゃ」

 プロローグのタイトルが示す大あくびを、もう一度やらかしたのにゃん。


 ぱたぱたぱた。

「ねぇ、ミアン。目が覚めたわん?」

 四つ足で立ち上がった途端、ミーにゃんは急くが如く声をかけてきたのにゃ。

「まぁにゃんとか」

「それじゃあ早速、自己紹介をやるわん」

「ウチが?」

「ミアンが主人公になって話を進めるんでしょ? 『当然』だわん」

 話の決めつけに良く使われる『当然』という言葉が、ずぅぅんと胸にこたえるのにゃ。

「にゃあんか重い責任を背負わされたようにゃ気が。ネコには重すぎる試練かもにゃあ」

「なにつべこべいっているわん? さっさと始めなさい」

「ミーにゃんには敵わにゃいにゃあ。……ああでも」

「どうしたの?」

「今更こんにゃことを聴くのもにゃんにゃのにゃけれども……。

 本当に居るのにゃろうか? 『読者』にゃんていう生命体が」

「ああ、そのこと。アタシも直接会ったことはないんだけどね。

 なんでもアタシたちの行動やこうして話していることなんかが、『活字』とかいうものに置き換わっているんだって。それを『読む』ことで楽しんでいるっていう話だわん」

「ウチも楽しいことは好きにゃよ。どうせにゃら、たくさんの『読者』に楽しんでもらいたいものにゃん」

「そこで思いついたのがこの企画。ミアンも覚えているでしょ?」

「ええと……、

『少しでもウチらに対する理解を深めてもらおう』

 確か、そんにゃ趣旨にゃったと思うのにゃけれども」

「まさにその通り!」

 びしっ!

 ミーにゃんがネコ差し指をウチに突きつけたのにゃ。

(にゃあんか芝居がかっているのにゃあ。……ひょっとすると、『読者』を意識しているのかも。にゃとしても、ちとわざとらしすぎる気がするにゃあ)

 ウチの脳裏に……どこで耳にしたのか忘れてしまったのにゃけれども……『大根役者』とかいう言葉が浮かぶ。でも、『大根』であろうがにゃかろうがミーにゃんはウチの親友。『前足をぴんと立て、後ろ足は膝を屈して』の姿勢とにゃって、慎んで話の続きを拝聴することに。見ればいささか自意識過剰気味のミーにゃんは、弟子に教えを授ける師の如く、さもエラそうにゃ感じで両手を腰に当てているのにゃ。

(本当、ノリやすいタイプにゃん)

「いぃい? ミアン。理解を深めることで相手の心は自ずと開くわん。興味を持ってくれる。そうなったらしめたもの。『読者』がどんどん増えてくる。

 あっ。『読者』の友だちも『読者』から聞いてアタシたちに興味を持ってくれるかも。そしたら『読者』になってくれるわん。それがきっかけとなって『読者』の輪が更に拡がる。『読者』となった友だちの友だちもまた『読者』に。友だちの友だちの友だちもまた『読者』に。友だちの友だちの友だちの友だちもまた『読者』に。友だちの友だちの友だちの友だちの友だちの」

(どこまで続けるつもりにゃん?)

「ええいっ! ややっこしいわん!」

(ぶふふっ。やっぱりキレたのにゃん)

 大笑いしたいところではあるのにゃけれども、親友の様子から察するに真剣といえば真剣みたいにゃ。気分を害されても困ると思って、ぐっ、とこらえたのにゃん。

(代わりにお尻から、ぷっ、と出たらごめんにゃ)

「早い話が、ええと、ええと……そう、『生き物みな読者』が『実現』するってわけ。

 でもそれは……茨の道よ。『向こうに覗かれている』みたいな今までの受け身的な姿勢はもうダメ。脱却しなきゃ。あえて『こちらから覗いてもらう』といった積極姿勢に転じることで道を開く。これしかないわん!

 ミアンを主人公に話を進めることでアタシの夢が『現実』になったらいいと思うわん」

(ぶふっ。『実現』と『現実』。反対にするにゃけで意味が違ってくるのにゃあ。『実現』はどちらかといえば『未来』を感じさせるし、『現実』は過去から現在にゃし)

 さも張り切っているといった様子のミーにゃんには悪いのにゃけれども、ウチはにゃんにゃんと話についていけにゃくにゃったのにゃ。にゃもんで、表向きは聞いているフリをして、実際は他のことを考えて気を紛らわしていたのにゃん。

(でも……この苦労もやっと終わりみたいにゃ)

「まぁそんなこんなで、夢の実現へと向けた記念すべき第一歩が、主人公のことを正しく知ってもらうってこと。自己紹介をお願いするのはまさにそれが理由なの。

 ミアン、判ったぁ?」

 ウチは聞こえにゃいように、ぼそっ、と返事を。

「アホにゃん。ウチらのお喋りとお話にゃんて、『これより下はにゃい!』って断言出来るくらいレベルが低いのに……、一体にゃにを期待しているのにゃ?」

「うん? なんかいったわん?」

「いいや、にゃんでも」

「それならお喋りはこのくらいにして、と。

 ミアン。いよいよ、お披露目の時が来たわん。さぁ、張り切っていってみよう!」

 そう叫ぶと、ウチの親友は右手の拳を高く掲げた。もちろん、それを見たウチがこっそりとため息を突いたのはいうまでもにゃい。

(起きがけに自己紹介を迫られるとはにゃあ。でもまぁ緊張する時間が短くて済んにゃから、良かったといえば良かったのにゃけれども)

 ウチは、ごほん、と咳を。ちぃとは気が静まったのにゃ。

(あとは……そうそう、『初めまして』に相応しい言葉を述べるにゃけにゃん)

 ネコ頭で考えた割には自信作に仕上がったと自負しているのにゃ。『いざ、ウチの才能が開花した証を今ここにぃ』と思えば、喋る声と顔とに自慢めいたものが覗けたとしても無理からにゅこと。

(さぁミーにゃん。耳をかっぽじって良ぉく聞くのにゃよぉ)

『あっあっ』と喉の調子を確かめたあと、続けて考えに考えたセリフを口に。


『ウチはミアン。名前はまにゃにゃい』


 ぼがっ!

「ふにゃん!」

 いきにゃり赤のメガホン……『お手軽拡声器』ともいうらしいのにゃけれども……で殴られてしまったのにゃよ。痛かったのにゃん。

「ミーにゃん。暴力反対にゃのにゃん!」

 反発するウチの声に負けず劣らず、ミーにゃんも強い口調で応酬にゃ。

「それどころじゃないわん! 出だしから間違っているわん!」

(やれやれ。またにゃん)

「ミーにゃん。そんにゃに怒ってばかりいたら血圧が上がりっ放しににゃってしまうにゃん。身体には良くにゃいにゃよ。下手をすると、『幼くしてお亡くにゃりに』にゃんてこともにゃいわけじゃにゃい。ウチにさみしい思いをさせてはいけにゃいのにゃよぉ」

 ミーにゃんは、『えっ、そうなの?』と目をぱちくり。

「ふぅん。霊体でも実体波を纏うと、血圧次第で命取りになる……か。

 よぉし、判ったわん。これからは気をつけるわん」

「うんにゃ。良い心がけにゃん」

『健康は大切にゃもの』との認識をミーにゃんが持つのは、親友としてにゃによりも嬉しいことにゃ。あとは……そうにゃん!

「ところでミーにゃん。ウチのどこがいけにゃいのにゃん?

 やっぱり、あれかにゃあ。化けネコにゃから?」

「違うわん。ミアンがどうのこうの、じゃないわん。セリフがおかしい、っていったの」

「セリフが? あんにゃ短い言葉のどこがにゃ?」

「名前をいったあとに、名前がない、っていったわん」

「にゃあんにゃあ。軽いケアレスミスじゃにゃいか。ミーにゃんはチェックがきつすぎるのにゃよ」

「あっ、きつすぎたわん?」

「もちろんにゃ」

「そうかぁ。

 ……でも一応、最初だし。ここは、びしっ、と決めたほうがいいんじゃない?」

「どうにゃろう。最初から勢い込むと、あとが続かにゃい、にゃんてこともあるんじゃにゃいか?」

「なぁるほどね。それもまた真理かも。じゃあ、ここは軽ぅくいってみるわん?」

「うんにゃ。それが一番と思うのにゃん」

「なら、そういうことで。

 ミアン。じゃあ、あらためて自己紹介を頼むわん。

 ええと……そうね。誰かに語りかけるような自然な感じで」

「任せにゃさい! ……って、ミーにゃん。どっちを向いて喋ったらいいのにゃん?」

「適当でいいんじゃない? こちら側から相手が見えない以上、仕方がないわん」

「それもそうにゃん。

 にゃら、さっきとおんにゃじで。……ごっほん!」

 さっそうと四つ足で立つ。ミーにゃんも援護するかのようにウチの顔の右隣で浮かんでくれる。一切の雑念を捨て、ウチはミーにゃんと並んにゃまま自己紹介の言葉を口にしたのにゃん。


『ウチはミアン。一度は命を失ったものの、ここに居るミーにゃんの母親的存在であるイオラにゃんのおかげで、化けネコ、すにゃわち、妖体として生まれ変わった身にゃのにゃん。実体波を纏っているから、見かけ上は普通のネコとにゃんら変わるところはにゃい。容姿をいえば、ネコにゃから毛むくじゃらの身体にゃ。ほとんどは茶色地に黒の縞模様にゃけれども、顔や足の下部分とか、あとお腹は白い毛がふさふさしている女の子にゃ』

 ここで言葉を噤んにゃのはミーにゃんへの合図。『判ったわん』といわんばかりにうなずくと、ウチの言葉を継いにゃのにゃ。

『うふっ。それに身体が、もわんもわん、なのよね』

『といった次第にゃ。よろしくお願いするのにゃん』

 ぺこり、と頭を下げて、ウチの出番は終わったのにゃん。


「ふぅ」

 ウチの実体波は良く出来ている、というか、出来すぎにゃん。四つ足とも冷や汗でべっとり。それでも大役を果たしたことで今は、ほっ、と一息。

「終わったのにゃ。にゃかにゃか緊張するものにゃん」

「お疲れ様、だわん。これでここは終わりだわん」

(ぶふふっ。ミーにゃんは油断しているのにゃ。今がチャンスにゃ)

 やられたらやり返す。これがウチのモットーにゃん。

「まにゃにゃよ。次はミーにゃんの番にゃ」

「えっ! ア、アタシもやるわん?」

 ウチの目に映るは親友の怯えたようにゃ表情にゃ。

(逃がしはしにゃいにゃよぉ。ここでトドメの『当然』にゃん)

「『当然』にゃろう。ウチとミーにゃんあってのお話じゃにゃいか」

「ううぅん……まぁそれもそうだわん」

「ウチもこのままそばに居るから。

 ミーにゃん。それじゃあ」

「待って。ちょっと待つんだわん。まだ心の準備が」

(待つわけにゃいのにゃよぉ)


「ミーにゃん、始めぇっ!」


『えっ! ……ええと……ええと』

 アガリすぎにゃん。とどのつまり、にゃんの言葉も口に出来にゃかった。


「あぁああ。終わってしまったわん」

 ウチの親友はとっても無念そうにゃ顔をしているのにゃん。

「ミーにゃんったらぁ。もっと自分を抑えにゃいと」

「そうはいってもね。なかなか、だわん。なにかいい方法ってない?」

「深呼吸をしてみるっていうのはどうにゃろう?

 案外、それで上手くいくかもしれにゃいのにゃよ」

「本当? じゃあ、やってみるわん」

 すぅっ。はぁっ。すぅっ。はぁっ。

「どうにゃ? ミーにゃん」

「うん。驚くほど冷静になったわん」

(そうにゃん?)

 助言したウチも信じられにゃいのにゃけれども。

(まぁ、ミーにゃん自身がそういうのにゃら)

「それじゃあ、やり直そうにゃん」

「うん。今度は大丈夫だと思うわん」

「にゃら、いくにゃよぉ!」

「いつでもいいわん。……うぉっほん!」

 ウチは再びかけ声を。

「ミーにゃん、始めぇ!」


『アタシはミーナ。イオラの木に咲く花の妖精だわん。

 髪は水色で短め。身体は赤みがかった白色ってとこかな。背中の二枚翅はねは黄色みがかった白で、あと良ぉく見ないと判らないけど、銀色と緑色の帯が薄ぅく描かれているの。刺繍みたいな感じよ。全体的にいうなら、そうだなぁ、翅を除けば、人間の女の子を小っちゃくしたような姿と思って間違いないわん。妖精だから気ままな性格だけど、そこは我慢してもらわないとね』

(やっぱり、誤解しているのにゃあ)


 これはイオラにゃんから聞いた話。

 この世に現われたのは霊体が最初で、実体ある生き物は、ずうぅっ、とあとらしいのにゃ。天空の村の蝶がみんにゃ二枚翅にゃのは、ミーにゃんのようにゃ翅人はねびと型の霊体が原型とにゃっているからとか。さっきみたいにミーにゃんは良く『蝶のような』っていう言葉を使うのにゃけれども、本当は逆で、『蝶がミーにゃんのような』が正しいのにゃん。


 蝶といえばにゃ。移民が自分の星から持ち込んにゃのもあったそうにゃ、全部が全部、四枚翅にゃったらしいのにゃけれども、村に放したほんのわずかにゃ間に全滅したという。にゃからウチも目にしたことは一度もにゃい。生き存えることが叶わにゃかった最大の理由は、『風』にゃ。天空の村は空域、水域、地域のいずれにおいても、『神霊』と呼ばれる地霊ガムラの霊力に満ちている。村に吹く風もまた霊力の一形態。対応していにゃい翅では許容の限界値を簡単に突破する。判りやすくいうにゃら、空を飛ぶどころか、強い霊力をもろに浴びてしまうことで命さえ失ってしまうのにゃ。とまぁそんにゃわけで、小さにゃ生き物ほど、翅の枚数は少にゃいほうがいい。とはいってもにゃ。霊力の風に乗って自由自在に飛び回れ、かつ自分に必要にゃ霊力はきっちりと取り込めるものでにゃければにゃらにゃいのはいうまでもにゃい。よその星の蝶をにゃんの考えもにゃく放つにゃんて、無謀の極み、でしかにゃいのにゃ。


 ここで少しばかり、ミーにゃんの容姿についてもつけ加えておくのにゃ。

 短めの髪で色は身体とおんにゃじ。霊服も身に着けている。イオラにゃんのようにゃ一枚霊布ではにゃく、人間がいうところのタンクトップにパンツ。お腹の真ん中に加え、両腕、両足がもろ出しの格好にゃん。色は上下とも自由自在に変えられるという。今のお気に入りは緑色みたいにゃ。

 ちにゃみに天空の村に住む人間の着衣は主に作務衣。タンクトップやパンツは移民が持ち込んにゃ衣服の一つとか。まっ。ウチらには、どうでもいい話にゃのにゃけれども。


 さっきのミーにゃんと同様、隣に並んにゃウチも口を出す。

『でもにゃ。心優しい面も一杯にゃよ』

『うふふっ。……ってなわけでよろしくお願いするわん』

 ミーにゃんも、ぺこり。これでウチらの自己紹介は終わったのにゃ。


「お疲れ様にゃん!」

 ぱちぱちぱち。

 やり遂げた親友の快挙にウチは心からの拍手を送ったのにゃ。

「ミーにゃん。にゃかにゃか上手かったにゃよ」

「そう? えへへっ。自分では良く判らないわん」

「ウチもミーにゃんもこれで終わり……おや、まにゃあるのにゃん?」

「うん。あともう一回だけ。でも今度は、一緒に、だわん!」

 とまぁそんにゃわけで。


『これから始まるのはウチらの棲み家がある「イオラの森」での物語にゃ』

『アタシがまだ幼児の頃の話よね』

『妖精の寿命は千年近くにゃ。幼児期も三百年ぐらいあるから結構長いのにゃけれども』

『物語はほんの一部。ええと、今から百年ぐらい前の出来事が中心なのよね』

『物語に加えてにゃ。ウチとミーにゃんの他愛もにゃいお喋りもあるのにゃよぉ』

『もちろん、タイトルの「にゃあまん」も、ないがしろにはしないわん』

『さてさて。「にゃあまん」とは一体にゃんにゃのにゃろうか。どんにゃ事件がウチらを待ち受けているのにゃろうか』

『それは話が始まってからのお楽しみだわん』

『にゃら、いくにゃよぉ!』


『「にゃあまん」の始まり始まりぃ!』


 始まりがあれば終わりもある。ウチらの自己紹介もにゃ。

「ミーにゃん。今度こそ本当の本当。お疲れ様にゃん」

「ミアンだって。お疲れ様わん」

 初めてということもあって、ウチらは互いの労苦をねぎらったのにゃん。

「ねぇ、ミアン」

「にゃんにゃ? ミーにゃん」

「どうして百年前のお話にしたの?」

「ミーにゃんが一番無茶苦茶していた頃にゃもん。物語的にもぴったりと思って」

「……だったっけ?」

「飛び回る爆弾と化していたのにゃ。この頃のミーにゃんってウチにゃんかよりも、ずうぅっ、と強かったから、そりゃあもうやりたい放題にゃった」

「爆弾ねぇ。なかなかいい得て妙な……はっ!

 ふん! 余計なお世話だわん」

「あとは……そうそう、『読者』がウチらの話題にのぼったのって、確か数年前ぐらいからにゃろ? にゃら、向こうも昔のことは知らにゃいのじゃにゃいかと思ってにゃ」

「まっ。お優しいことで。

 それでそれで? 次のお話はアタシたちのお喋り? それとも物語のほう?」

「そうにゃにゃあぁ。……ふわあああんにゃあ」

 緊張感が途切れると眠けに誘われるのは誰しものこと。ウチのようにゃネコともにゃれば尚更にゃ。

「そろそろ眠たくにゃってきたのにゃん。

 ミーにゃん。物語のほうがいいにゃ。『昔のウチ』に任せられるし。……ってことで」

 そういって蹲るとすぐさま、

 すうぅっ。すうぅっ。すうぅっ。

「ミ、ミアン! どうして眠っちゃうわん? 物語は? 昔のウチって?」

「心配無用にゃん」

 にゅううっ。

 ウチがどこからともにゃく登場。額には『昔』が刻印されているのにゃ。

「呼ばれて飛び出てにゃんにゃんにゃん。ミーにゃん、ほらほら、昔のウチにゃよぉ」

 すっかり眠りこけている今のウチの額にも、『今』の刻印が浮かび上がる。ウチ……昔のほうにゃ……は今のウチのかたわらに立って、自分自身を指差しにゃがら声をかけたのにゃ。面白かったのはミーにゃんの反応。あんぐりとした表情を浮かべて、今のウチへ、昔のウチへと視線をきょろきょろ。でもって五、六回ぐらい繰り返したあとは、『理解不能』といった顔で頭を抱えたのにゃん。

「ああっもうっ! どっちも気まますぎるわん!」

 悲鳴にも似た声。首を振りにゃがら短めにゃ髪をくしゃくしゃに。

(ぶふっ。いらいらしている時のミーにゃんもまた可愛いのにゃん)



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