爆薬なの!?
ミランダ=アーバンツに割り振られたパラメータは魅力だけではない。
魅力は一目で解る美貌に。
魔力も測定できない程強大な力を持っている。
実はあまり目立たない、本人にしか気付かないスキルがある。
そう、知力もカンスト級に積まれているのだ。
「ミランダ様、本をお持ちしましたー。勉強熱心ですねー」
「ありがとう、ノピク」
パラパラと1分程、1ページずつ本をめくり、本を閉じる。
これで全ての本が記憶されたのだ。
脳内エ○ァーノート。全ての情報が頭で整理され、必要な時に必要な情報を調べる事ができる。
その気になれば、一日の事もビデオカメラのように思い出せるのだが、十歳児にそんな必要は無い。
この世界は二千八百九十もの国にわかれている。
そして、独自の生活、文化で発展を遂げて、独自の言葉を喋る。
全て覚えてしまった。
一度読めば文法は全て覚えたし、近隣の国は似通った単語と文法で扱われている。そう気付いたら後は早かった。
そして、知力に振っただけの事はあり、いきなり外国語をネイティブに話すような知力は隠しておくほうがいい、と一般的な幼女のフリをしていた。
満たされ過ぎていて不安だった。美味しい物を食べ、遊び、寝る。
奴隷身分と引き換えの悪役なのだ。消化しておかないと不安でたまらない。
悶々としたまま、二年が過ぎ十二歳、ノピクは十六歳になった。
ついに学校へ通う年齢になったのだ。
この異世界では、十二歳くらいまでは家庭教師が基礎的な事を教え、十二歳からいきなり応用的な事を学ぶ。それも四則演算程度の内容からだが。
全力で受ければ飛び級もあったのだが、ヒロインと学年が違ってしまうのが怖く辞めた。一年生からスタートだ。
とりあえず裏でヒロインを虐めればいいのだろうか。
「えっと、ヒロインは、ヒロインはどこかしら……」
入学生が集まる広場で、ヒロインらしき人物を探す。
「こんにちはっ今の名前はミランダだったよねっ?元気だったかなっ?」
「…………」
何かいた。
綺麗な顔立ちをした奴がいた。
中性的だったそいつは女生徒用の制服を身に纏っていた。
カミカだった。
女だったんだ……。
「……何でここにいるのかしら?」
笑顔を引き攣らせながら、尋ねると、キョトンとした顔でカミカが言った。
「え、監視だよっきちんと役目を果たしているのかなってねっ」
「……心配しなくても今日から学園よ。ヒロインを虐めればいいのよね?」
「えっ?」
「え?」
反応にカミカを睨みつけると、カミカは目を逸らして苦笑いを浮かべた。
「あ、あははっ君がいきなり役を聞いてたから、全部知ってるんだと思って、説明し忘れてたよっ」
(……悪役令嬢とか無いの?よく主人公を虐めて追放されるけどまともに生きていれば問題ないってご都合主義的なやつ)
(あるよ、それにする?)
知力カンストの脳内○ヴァーノートで思い出す。
「主人公を虐めて追放されるけどまともに生きていれば問題無いんだろう?」
「ご都合主義な翼主人公を虐めて世界から追放される奴だよねっ?」
「翼主人公!?何それ!?いや、その読み方には無理がない!?」
「あはは、さすがに知力カンストだと発言ニュアンスから漢字イメージが沸くんだねっ」
「翼主人公って何だよ……」
「魔王だよ?翼が生えた主人公魔王を虐めて、世界から隔絶された闇の世界で陵辱の限りを尽くされ、生きていれば問題無いって思い込みながら人生を送るんだよっ」
パーン、とAAのような顔でカミカの頭を叩く。
「チート意味ねーだろ!何でこんだけパラメータ振ってそんな目に合わないといけねーんだよ!」
「あ、あれえ……?もしかしてボク勘違いしたのかなっ?」
「勘違いも何も、そんな人生は貴族スタートでもいらねえよ!」
「う、うーん。でも、魔王と戦って勝てば貴族人生ゆるゆるエンジョイだよっ」
「……勝てるの?悪役令嬢が魔王を倒せるの?」
悪役令嬢、という言葉を聞いて、カミカが目を逸らす。
「おい、まだ何かあるの……?何があるの……?」
あはは、と笑ってカミカは答えた。
「え、えっと。君って発音悪かったんだねっなるほど、悪役令嬢って言ってたんだ。ボクてっきり爆薬令嬢かと思ってたよっ」
「爆薬令嬢!?」
何それ!?