優等生貴族令嬢役もあったんだよっ
カミカがやたらテンションが高くてウザかった。
「ねえ、ねえ、どんな気分なのかなっ?今どんな気分なのかなっ」
ペチペチと頬を叩かれる。痛くは無いが不愉快ダメージは着実に受けていた。
「ね、ねえ、カミカ……やめようよ。ミランダ怒ってるよ?」
「……」
この世界には魔力がある。異世界要素で、私はカンストに振った訳だ。
魔力は魔法を使うエネルギーとなる。
火を起こしたり、水を発生させたり、クラスメイトが授業で色々な魔法を覚えていく中、気づいた。
私は魔法を全く使えなかったのだ。
詠唱を読むだけで魔力を必要としない魔法ですらも発動しなかった。
「カミカ、どうして私は魔法が使えないのかしら」
隣でヨークが色々な魔法を使っているのに苛つきながらカミカに訪ねてみた。
「うん、元々爆薬令嬢は魔法を使えないよっ」
「はぁ!?」
俺の反応が面白かったのか、どんな気分?ねえどんな気分?とウロウロする。
魔力をカンストに振って伝説級の魔力を持っているのに使えないのはどんな気分?と。
「……解らないわ、魔力パラメータカンストさせてるわよね?あれは魔法を使うときの力じゃないの?」
「そうだよっ」
……そこはあってるんだ。
「なら、カンストに振ってる私は魔力を使えるわよね?」
「使えないよっ」
使えない……だと?
「爆薬令嬢の魔力は全て爆発にしか使えないよっ?」
「……じゃあ、私はこの学園を卒業できるの?」
「落ちこぼれで落第し続けて父親から寄付金を支払ってのお情けで卒業だねっ」
……!?
「劣等生だねっ魔法の実技試験もあるしねっ」
全ての魔法の詠唱を暗記して、色々な魔力の法則も発動の仕方も全て知力カンストの脳内エヴァ○ノートに入っているのに落ちこぼれ……。
「大丈夫だよ、ミランダが落ちこぼれでもボクが貰ってあげるからね」
ヨークが気の毒そうな目で見てくる。
「そうだ、水素も爆薬のカテゴリに含まれるの?」
「水素は爆発するけど、爆薬じゃないから無理だよっ」
爆発しろ、で爆発させるような事もできないと……。
「ミランダが爆発させられるのは火薬と魔力暴走した時の自分の周辺だけだよっ」
役に立たない。何だこの地雷配役……。ヨークとの差がありすぎるだろ……。
「爆薬令嬢じゃなくて、優等生貴族令嬢配役にすれば、縛りが薄いから色々と便利だったのにねっ」
……なんですと!?
「一般人スタートで隣国で八歳から召使い待遇の四年を過ごして、実父の男爵に養子で引き取られるって役だよっ」
なんでそんな役がある事を言ってくれなかったの!?
「爆薬令嬢をすぐに指名したから、説明する時間も無かったからねっ」
「その配役はまだあいてる訳?そっちに変える事ってできないか?」
「二〇〇ポイント必要だから無理だよっそれに役には転生した人がもう中にいるから無理だよっ」
カミカがあの二人だよ、と指差す。
「まあ、あれはセント家のヨーク様とアーバンツ家のミランダ様よ」
「二人共愛らしいわね」
「「モブじゃなかったの!?」」
私とヨークの声が重なった。




