間話、翼主人公のスキル修行だよっ
PV6500付近まで行ってました。ありがとうございます。
嬉しくなったのでもう一本落とします。
学園には山がある。
山の中に学園がある、という方が正解かもしれない。
生産に関係無い学校や図書館等の施設は、山の上に建てられる。
魅了の訓練をするのに、動物で溢れている山は最適だった。
「小鳥、魅了!」
小鳥を睨み口に出して言うとパタパタと降りて肩に止まる。
「猫、魅了!」
「ニャーン!」
猫がこっちに近寄り、顔を足にこすり付ける。
これ……幸せスキルだ。
近くの動物を魅了していく。
ボクは最後に魅了した猫を撫で回しながら、動物に囲まれて転がった。
「このペースだとすぐレベル上がってミランダを魅了できるようになるかもね。あ、そこの鳥、魅了!隷属!」
大きな鳥が近寄ってきた。
嘴が鋭く尖り、傷だらけ。
お世辞にも可愛いとはいえない。不細工な顔立ちだった。
……何この鳥、怖い。遠近感さん仕事しすぎ。
「歴戦の戦士な鳥さんなのかな」
「ガー、ガー」
恐さで引きつって尋ねるボクに、鳥が答える。
「ガー、ガー」
鳥の威圧感に、周りの動物が怯えたように後ずさる。
その鳥はボクの足に顔を何度もこすりつけながら付きまとってくる。
ボクの近くに寄ろうとしている動物がいるとじろりと睨み、翼を広げて威嚇して追い払っている。
「ヤキモチ焼きだー。独占欲が強いねえ!」
周りの動物が怯えているので、ボクはその鳥に命令を出した。
「君が居ると、他の動物達が怖がるからあそこの木の枝にとまって、待ってて」
「ガー!」
命令されたのを聞いて嬉しそうに木の枝にとまる。
あんな大きいのも言うことを聞くなんて、ボクの魅了と隷属レベルがあがってるのかな?
ミランダの事を考える。
魅了して隷属化したとしても、何かをさせようとは考えていない。
理不尽な暴力や嫌がらせがなくなればそれでいいんだけど。
そんな事を考えていると、近くで銃声が鳴った。
「ひっな、何だ?」
大きな銃声に、魅了、隷属化していた動物達が混乱して逃げていく。
何があったんだろう……と銃声がした方を向くと。
あの大きな鳥が地面に落ちていた。
身体を打たれたのだろう。大きな鳥の身体から血が流れていた。
ボクが青ざめて近づくと、
「ガー!」
大きな鳥は任せておけ、とばかりに声をあげて、もう一度飛んだ。
「ガー!」
飛び、元居た枝にとまって、自慢げに声を上げた。
もう一度銃声がなり、落とされる。
「……え」
もう一度飛ぼうとしたのか、大きな鳥は、バランスを崩して転んでいた。
二度目は翼の部分を打たれたのか。
何をしてるんだろう、と思って気がついた。
鳥は落ちた後も、ボクが休めと言った枝に戻ろうとしていたんだ。
魅了化、隷属化。
大好きなご主人様の命令だから守らないと。
そう言っている気がした。
「ガー!ガー!」
悔しそうに打たれた身体を震わせ、木の側でウロウロと回り始める。
「うわ、すげえ、山のヌシ鳥撃てた。いつもは動き速いんだけどな」
「……」
この男が銃で鳥の羽を撃ちぬいたのだ。
何がおかしいのか、数人の男は木でウロウロしている大きな鳥を指さして笑っていた。
「……貴様ら、人の鳥に何をしてくれてんの?」
魔力を込めて威圧する。
男たちは顔色を変えて逃げていった。
ちんまりしても翼主人公。
スキルの威圧が無くなってもモブとは違うんだよ、モブとは。
ぐったりして、動かなくなったヌシをそっと抱き上げる。
「ボクがあそこの木にとまれって命令を出さなかったら、死ななかったのかな」
ボクはヌシを抱き上げ撫でながら泣いていた。
「ガー」
元気なく鳴くヌシを撫でながら、ごめんね、ごめんね……と謝った。
「まだ死んでないし、助かるけどねっ!」
「……カミカ?」
カミカが手を当てると、ヌシの傷が癒えていく。
「カミカー、カミカー。ありがとう……!ボク、はじめて君に感謝したよ」
「ヨークは普段からボクにもっと感謝すべきだと思うよっ?」
「ガー!ガー!」
「カミカ、隷属化や魅了の解除ってどうするの?」
「解除って言えばいいよっ」
ヌシの魅了と隷属化を解除した。変な命令をしてごめんね、と。お別れだね。
……数分立っても取り付いて離れなかった。
「……カミカ、解除できないんだけど」
「解除できてるよっ魅了、隷属化した時の記憶はそのまま残るから、ヨークにスキルじゃなくて魅了されて寄ってるんじゃないかなって思うよっ」
「……」
「ガー!」
……ミランダへの魅了、隷属化ができたら、ヌシを飼う事を許してもらおう。
そんな風に考えながら、ヨークはヌシの頭を撫でた。
読んでいただきありがとうございました!




