表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/24

モブ女、突撃する(その2)

 『愛川光穂』

 このワンダーワルツというゲームにおいての主人公。

プレイヤーの選択・行動によって、その性格は決められる。

まあほぼすべてのAVGアドベンチャータイプの乙女ゲームはそんなものだろう。

(その反対にシナリオタイプは選択肢があるだけなので主人公の性格は製作者側が決めている場合が多い)



 だから実際に生きている主人公に会ったとき、どんな性格なんだろうと思っていて。

光穂ちゃんに会ったとき、この子はおっとりタイプだと思い決めつけた。

まだ出会って1ヶ月も経っていないのに。

私は決めつけてしまっていたんだ。




「……篁と親戚と聞いて、お前は驚かないのか?」

「これでも十分に驚いてますよ~。さすがに恋人とか言われたらもっと動揺しますけど。親戚ならそこまでじゃないでしょ」

「驚いているようには見えんが」

「私、表情が出にくいタイプなんです」


 いつもにこにこしてるねってよく言われます。



 光穂ちゃんは笑顔を絶やさずにそう言うと、氷の表情の帝王に物おじせず視線を返している。

帝王の表情がますます冷え冷えとしたものになった。

けど光穂ちゃんも負けてはいない。

……光穂ちゃんの背後に般若が見えるのは気のせいだと思いたい。




 2人の雰囲気が怖くて行動を起こしかねていると、今まで黙っていた志乃ちゃんが初めて口を開いた。

それと同時に光穂ちゃんの般若もなりを潜める。



「成実、光穂、鈴原くん。ここは私に任せてくれる?……後できちんと説明するわ」

「え、志乃ちゃん?」

「お願い」



 志乃ちゃんは、光穂ちゃんと帝王の間に立つとまっすぐその視線を帝王へと向けた。

その視線を受けた帝王は、どこか困惑していて。

本当は気付いていたんだ。

志乃ちゃんがこの部屋に入ってから、一度も帝王にまともに視線を送ってないことを。

どこか目を伏せ、お茶を飲んでごまかしていた。



「後で、ちゃんと聞かせてね」

「わかってるわ。……ありがと、成実」



 こういう目をしている時の志乃ちゃんは何かの覚悟を決めている時で。

私や周りが何を言ってもきっと聞かないだろう。

だから私は光穂ちゃんと鈴原くんの手を取ると、そのまま生徒会室を後にしたのだった。






















「いいの?志乃ちゃんを置いてきて」

「ああいう時の志乃ちゃんは何を言っても聞かないよ」



 あの後私は、寮の志乃ちゃんと光穂ちゃんのお部屋にお邪魔していた。

鈴原くんはさすがに女子寮に入るわけにはいかないので、寮の手前でさよならして。

明日ちゃんと聞かせろよ!と言い残していたけど。

……本当のことを話せるのかは、この後の志乃ちゃんのもたらしてくる情報による。




 それよりも。

今私が行動を起こさないといけないのは、光穂ちゃんについてだ。



「ねえ、光穂ちゃん」

「なに?」

「なんで志乃ちゃんと会長のこと驚いてないの?」

「……。」

「光穂ちゃんは初めから知ってたの?あの2人が親戚だって」



 私の問いかけに、光穂ちゃんは答えない。

でもきっとそれが答え。光穂ちゃんは初めから知っていたのだ。

だからあの時、驚かなかったんだ。




 私たちの間にしばらくの沈黙が流れて。

それに耐えかねたのだろう。

光穂ちゃんが軽くため息をつくと、どこか諦めたように笑って口を開いた。




「うん、知ってたよ。あの2人がハトコだってこと」

「やっぱり」

「でも、まさか成実ちゃんが知ってるとは思わなかったな」

「私は志乃ちゃんから聞かされていたから」

「そうなんだ。そんなところで狂いが生じてる・・・・・・・とは思わなかった」




 光穂ちゃんはそう言うとにっこりと笑った。

その笑顔はどこかやっぱり諦めにも似ていて。

いつもののほほんとした笑顔からは想像もできない。





「狂い?いったい何のこと?」

「私が知ってる情報ではね、成実ちゃんはさっき知るはずなんだ。会長と志乃ちゃんがハトコだってこと」

「情報?光穂ちゃん、あなた一体?」


 光穂ちゃんは私の問いかけには答えずただ静かに微笑むだけ。

そして少し間を開けると、軽くため息をつきとんでもない爆弾を落としてくれた。



「……私の願いはね、成実ちゃんに幸せになってほしい、ただそれだけなんだ」





 光穂ちゃんの願いが私の幸せ?何、それ?

私たちは出会ってまだ1ヶ月。

なのに、光穂ちゃんは私に幸せになってほしいという。

出会って1か月の友達に言われるセリフじゃないよね、これ?




「そこまで私って不幸に見える?」

「……っ!ぷぷ、まさかそういう反応が来るとは思わなかった!」



 私の答えに、光穂ちゃんは少し面食らったらしい。

目を丸くして、でも次の瞬間お腹を抱えて笑い始めた。

なんだよー、そんなに不幸そうに見えるのかと心配したのに。

あまりにも私の返答がツボにはまったのか、光穂ちゃんたらひーひー言って笑いが止まらないよう。

そこまで笑うような返答だったかなぁ?

私の顔が不機嫌になったのがわかったのだろう。

光穂ちゃんは、こほんと軽く咳払いすると笑いをひっめる。




「普通、なんで幸せを友達が願うのかって疑問に思わない?」

「うん、思ったよ。だから友達にも幸せを願われるくらい、不幸そうに見られたのかと思って軽く落ち込んだ」

「ごめんね。そういう意味じゃないの。成実ちゃんの幸せが私の幸せなんだ……って、そこでドン引かないでくれるかなぁ!?」



 光穂ちゃんの言葉に、私は一瞬本気で引いた。

なんで私の幸せが光穂ちゃんの幸せなの?

まさか私、光穂ちゃんに攻略されようとしてる!?

そこまで考えたのが顔に出たのだろう。

光穂ちゃんが私に的確な突込みをしてくる。





「もう、変な意味じゃないの!成実ちゃんが幸せになってくれないと、私が困るってことなの!」

「だからなんでそこで光穂ちゃんが困るの!?」

「だって仕方ないないじゃない!成実ちゃんは主人公・・・なんだから!!」



 光穂ちゃんの言葉に私の頭の中は真っ白になる。

私が主人公!?

ただの立ち絵もない、しがないモブ女の私が!?

RPGでいうところの村人Aくらいの役割なのに!?





 でも光穂ちゃんに言わせると、どうやら私はただのモブ女ではなかったらしい。

一体、どういうこと!?

お願い、光穂ちゃん。詳しい説明プリーズ……。







すみません。

具合が悪いので更新が途切れ途切れになるかと思われます。

皆様風邪にはお気を付けください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ