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副会長は見た

更新遅くなりました!

 蔵前晃。

人は彼を帝王と呼ぶ。

それは彼がこの学園創始者の孫であり、理事長の息子であるから。

だけどそれだけで帝王とは呼ばれない。

彼が今まで行ってきた全てのことが、この学園に通う生徒のためであって自分のためではないから。





 だから今僕は非常に驚いている。

初めて、自分の我を通す蔵前晃を見たのだから。






「どういうつもりなの?」

「何がだ」

「……姫宮くんと崎谷さんのことだよ。あんな風にはめるような真似をするなんて」





 僕は前もって晃から「姫宮夏輝を生徒会に入れたい」と聞かされていた。

でもそれが拒否されたことも知っている。

そして拒否されたと同時に、晃が紫藤先生を呼び出していたことも。




 彼らの話によると、姫宮くんの幼馴染である崎谷さんを晃は利用したらしいけれど。

まさかあそこまで強引に話を持っていくとは思わなかった。



「はめるだなんてとんでもない。姫宮夏輝は自分から役員になった。それだけだ」

「違うだろ。崎谷さんを放っておけない姫宮くんの心情を利用した。僕にはそう見えたね」

「だからどうだというんだ?結果が全て・・・・・だろう」



 彼の言い方に、さすがの僕も疑念を抱く。

なぜそこまで彼を生徒会に入れたいのかと。

元々生徒会は内部生の集まりだ。

それは学園に慣れている生徒のほうが、生徒会を運営しやすいだろうという慣例からだけど。

外部生が生徒会になったことがないといういうわけでもない。

ただどの生徒も、外部生なのにすごく目立っていたという話を聞いたことがある。

むしろそこまでしないと、外部生は生徒会にはなれないというわけだ。



 そして姫宮くんは良くも悪くもあの容姿だ。

ものすごく目立つ。

また新入生代表挨拶を当日すっぽかしたという、ある意味目立つこともした。

多くの生徒が彼に興味を持っている。

話題性も抜群の彼に晃が目を付けても不思議はないだろう。

そう、不思議はないのだけど。



「とりあえずその頬を冷やしたら?立派な手形が付いてますよ」



 その時、生徒会室の扉が開く音がして、そこから冷たい声が聞こえる。

そこに立っていたのは、長い黒髪を一つにしばった凄味のある美人で。

僕や晃もよく知っている、2年の学級委員だ。




「海棠さん?どうしたのこんな時間に」

「忘れ物を取りに戻りましたら、たまたま・・・・言い争う声が聞こえたもので」

「ふんっ、たまたまなものか。大方、あの崎谷が気になって盗み聞きでもしてたんだろう?」

「あら、盗み聞きとは人聞きの悪い。崎谷さん可愛いんですもの、会長にいじめられていないか心配しただけです」




 ……2人の間に火花が見えるのは僕の気のせい?

本当に、昔からこの2人相性が悪いんだよな。

しかし海棠女史がまさか崎谷さんを気に入るとは思わなかった。

さっきちらっと見えた感じでは、姫宮くんが気になって崎谷さんに話しかけてるって感じだったのに。



 そういえば海棠女史って確か小さくてまるっとしたもの好き……。

 崎谷さんも小さくてまるっと……ごほごほ。



「副会長、なにか失礼なこと考えてません?」

「いえ、なんにも考えてないです!」



 こっわ~……。

 やっぱり海棠女史に逆らうのやめておこう。



 僕と海棠女史がやり取りをしているうちに、晃は用はないとばかりにさっさと席を立ちあがってしまった。

そして部屋を出て行こうとする。

その背中に海棠女史は鋭い視線を投げかけた。




「蔵前会長は一体何をしたいんです?あの時のあなたの行動は、常軌を逸してたとしか思えません」

「なんとでも言うがいい。俺には俺のやるべきことがある」

「それが姫宮くんを生徒会に入れることだというんですか?」

「そうと言えばそうだし、違うと言えば違うな」

「……どういうことです?」

「崎谷と姫宮、危なっかしい2人だ」




 海棠女史の問いに晃は不思議な言葉を返すとそのまま部屋を後にした。

残されたのは僕と海棠女史の2人だけ。

しかしさっきの言葉の意味は一体?

危なっかしいって、あの2人はお互いを思いあってるって感じなだけな気がするんだけど。

あの晃の答えに海棠女史は納得したのだろう。

顔が少し満足げだ。




「どういうこと?危なっかしいって」

「わからないんですか?副会長には」

「……さっぱり」

「2人を一目見た私にはわかりましたのに」



 だからあなたはいつまでたっても副会長どまりなんですよ。



 海棠女史はグサッとくる言葉を僕に残して、軽やかな足取りで生徒会室を後にした。

 



 ……だから、結局この騒動の意味はなんだったんだよ~~~!!!!!!

もう少し、彼らを観察して僕は僕なりの出方を考えるしかない。

その結論に達し、僕もまた生徒会室を後にした。







 この時の僕は知らなかったんだ。

生徒会室をでた晃が苦しげな表情を浮かべていたことも。



あいつ・・・には今度こそ幸せになってもらわないと困る」



 そう言って、崎谷さんと姫宮くんが行ったであろう方向を見つめていたことも。



 すべてを知るのは、まだ当分先の話。



 

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