日本国政府特殊作戦部隊〜アジアの羊達〜
1977年、日本赤軍によるダッカハイジャック事件発生を機に、
「日本警察特殊部隊(SAT)」
が創設された。その時、政府トップクラスにより秘密裏
「日本国政府特殊作戦部隊」
が創設された。
「日本国政府特殊作戦部隊」
は、別名
「CODE:スネーク(コードスネーク)」
と呼ばれ、完全武装されたテロリストを相手に、SATが手に負えないと判断した場合、首相の判断によりコードスネークを投入する。
[AK47が耳に残る音をたてて、7.62mmの塊を飛ばす・・・・。
右にサイドステップを踏み、肩にあてたMP5の照準をヤツの眉間に合わせる・・・。]
プルルルルル ププ プルルルルル
本部からの呼び出しベルで目が覚めた。
「夢か・・・」
最近この夢ばかり。
人は疲れを感じると、良くない夢を見る。
時には愛する人に、身を委ねてみても、愛せば愛すほど心は疲れ、また悪循環へと陥る。車に乗るや、エレキギターの音が心臓をくすぐるぐらいのロックをかけて、朝のサプリメントを飲む。
本部に到着すると、すぐにミーティングルームに呼ばれた。
「やぁ、ティガー(俺のあだ名。極秘部隊の為、隊員達はそれぞれの本名を知らない。)」
隊員達との挨拶を軽くすまし席につく。
そこに少々興奮気味の隊長が、皆の顔を眺めながらやってきた。
「福岡県の輸入用の倉庫に、数人の男がたてこもっているらしい。彼等は武装されており、人質も数人いる様だ!!SAT隊員が現場に向かっているようだが、念のため我々も向かうことになった。荷物をまとめて駐車場に集合しろ。」
駐車場から輸送ヘリに乗り、飛行機に乗り換え福岡へ、さらにヘリに乗り現場近くの小学校グラウンドに着陸、待機していた警官に小学校体育館へと案内された。そこは特設の作戦会議室になっていて、複数のモニターが各局の事件を伝えるアナウンサーと倉庫をうつしていた。
隊員たちは、装備をつけながらもモニターから目を離さなかった。
「えっ、、後ろに見えます、ブラザー商事第三倉庫に複数の男が立て篭もっているという情報が入ってきました。今のところ警察は、えぇー、犯人との交渉をできていない模様。また、現場から1キロ離れた船着場に、あー、北朝鮮籍の漁船が放置してあるのも発見され、犯人は北朝鮮工作員ではないかとの情報も、あー、あります。」
物々しい雰囲気の中でしゃべるアナウンサーから、充分に緊張感が伝わってきた。彼等も今夜は車内で寝て、現場で一夜を過ごすのだろう、いや、寝ることも許されないだろう・・・そして帰宅する頃、子供は学校に、妻は近所の”仲間”と、ランチにツバを飛ばしながら、時間を潰していて、彼等は、冷蔵庫に申し訳なさそうに置いてある昨夜の晩飯を温めて、晩飯と孤独感を味わうのだろう、と、どうでもいいことを考える。
「突入できる入り口は?」という隊員の問いに、隊長はそばにいた警官を指差した。
背筋を伸ばした警官が現場のレイアウトを指差し、「東西南北全てに3つずつ扉があり、東側裏口の北と南の階段を上ると2階にそれぞれ非常扉があり、照明用の電気室につながっています。そこから1階へとつながる階段もあります。」
「その倉庫には、排水溝はないのか?」
隊員の問いに、レイアウトを見ながら「あっ、えっと、あります。」
建物を「井」の字に流れる排水溝があり、人一人はゆうに通れる広さだそうだ。
再びモニターに目をやると、SAT狙撃手がクレーンに配置されているのが見える。倉庫上部に通気口があり、そこからわずかに中が見えるようだ。
そこにSAT指揮官がやってきて、軽く挨拶をした後、状況を報告する。
「人間探査装置によると、1階にしか人影はなく、2階には人はいない。中は以外に静かで、今のところは落ち着いているようだ。今内部と電話が繋がり、交渉をしているのだが、日本に逃げてきた元北朝鮮政府幹部の脱北者引渡しと金を要求している。条件を満たされない場合、明日朝6時に人質一人を殺すという内容だ。」
「犯人と人質の数は?」と隊員。
「犯人は船までの車を、7人乗り以上の車を要求していることから、人質を乗せないとして多くても7人だと思う。実際は4〜5人程度か・・・。
人質の数は不明だが、倉庫従業員3人とプラス2人の5人程度だろう。」
丁度その時指揮官の無線が、耳障りな音を立てた。ザッ!!
「スナイパー1よりコマンダー」
「スナイパー1」
「スナイパー1、排気口より敵2人を確認!!一人はAK74Sを、もう片方はピストル…撮影しましたので転送します」
「了解」
ピリリリリ ピリリリリ
SAT指揮官の電話がなる。
「はい、はい、あっそうです、はい、(携帯電話を持つ手と反対の手の人指し指を立て、頭上でグルグル回し、出動のジェスチャーをする)了解しました。」
電話を切るなり、厳しい顔で
「コードスネーク出動を確認」
隊長が背筋を伸ばし、
「スネーク出動します」
完全武装された敵に倉庫という空間、人質、SATの装備、技術では対応できないと判断、首相よりコードスネークの出動が命じられたのだ。
彼等の外見はSATそのものだが、その中身は、遥か遠くイギリスはSAS、ドイツGSG-9、デルタフォース、SWATと、各国特殊部隊で訓練を積んで…自衛隊駐屯地内に極秘に建てられている訓練施設で、日々練習している、日本最強の特殊部隊なのだ。
「作戦は、まずブルーチーム6名二手に分かれ、東側裏口より2階に潜入電気室を抜け下りの階段を見て、合図を待て。レッドチーム3名は西側扉2ヶ所に爆薬を仕掛け、合図と同時に爆破、突入する。北側から回りこむ形で、南へ追い詰めろ。ゴールドチームは、排水溝に忍びこみ合図があったら、フラッシュバンを投げ、援護しろ。スナイパー2人が敵2人を同時に狙撃する、それから合図だ。以上だがなにかいい案があれば、聞く!」
誰もが信用をおいている隊長の意見に、隙はなかった。
「よしっ、全員現場に待機しろ!」
「はいっ。」
緊張を隠すかのように、少し低く、大きな声で返事をする隊員。
テレビカメラが現場警察官の手により、作戦に支障のない所へと向けられる。
そこに映る倉庫は、ただの倉庫にしか見えないが、今世界一注目されている倉庫。
隊長の無線がなる。ザッ「スナイパー1標的1を捕えています」
「スナイパー2標的2を捕えています」
すぐさま隊長
「ブルーチーム進め!」
息の上がった声で
「ブルー、了解」
裏口階段から中に入るドアを合鍵で開け、電気室ドア手前でMP5をしっかり目線まで持ってきて、一人の隊員がドアをあける。
6人全員が室内へと、スムーズに流れていくと、すぐさま階段前に向かい一歩一歩降りていく。
途中までくると、先頭の隊員が利き手の反対の拳を、肩から垂直に上げた。停止の合図だ!
「ブルーチームポイント到着」
かすれるくらいの声で言った。
「スナイパー状況を報告」
「スナイパー1標的1を捕えています」
「スナイパー2標的2を捕えています」
「スナイパー、ゴー」
発射音がハモるように聞こえると、
「スナイパー1標的1命中」
「スナイパー2標的2命中」
「全チーム進め!」
心臓が音をたてて伸縮を始め、その早さが、後に時間の長さを伝える事になる。
排水溝からゴールドチームのフラッシュバンが飛び出る頃、ドアが爆発して吹き飛んだ、ドアがその動きを止めた時、フラッシュバンが大きな音と眩しい光を発し、周辺の人間の動きを止めた。
一番に倉庫の地を踏んだのは、階段で待機していたブルーチームだった、パレットの影から走って西側に向かうと、呆然とした犯人を隊員の一人が腕を後ろにとり、地面に倒して捕獲。
レッドチームが爆破したドアの破片に当たり、負傷した敵が地面に落とした、AK47を拾おうとしたのを、レッドチーム2人が押さえ込む。
その頃、各捕虜に2人ずつ取られ、ブルーチーム4人とレッドチーム1人が合流すると、誰の指示もなく二手に分かれ、南側へと両サイドから進んでいく。
このフォーメーションは訓練で身についているのだ。
途中スナイパーに撃たれた敵に目をやるが、肩から上の形はもはや人間ではなく、即死を伝えた。「敵が、人質を抱え南側ドア前にいる、周辺には人質も多数」
ゴールドチームの声に緊張が高まる。
整列されたパレットを抜けると、敵を発見。
左右から隊員が銃を向ける…パァン…パァンパァン…一番東側にいた隊員が持つM4から犯人の頭部と胸元に三発の弾がめり込むと、敵は吹き飛んだ。周囲を見渡す隊員。
「制圧」
「制圧」
「制圧」
全チームリーダーから、倉庫内に抵抗する敵が居ない事が示された。
「制圧完了」
と隊長の声がイヤホンから聞こえると、体が震え、達成感を感じた。制圧された事を知ると同時に警察、救急が入ってきて人質と犯人を渡した。
銃はセーフティーロックをかけおろした。
隊員達はまたヘリと飛行機を使い、本部に戻った。
シャワーを浴びると、テーブルの上には食事が用意されていて、今日の事件の一部始終を伝えるテレビを見ながら食べた。
犯人達は、遠い異国からやってきた、誰かの企みの為に、誰かの命令に従い船をまたいだのだろう。
極端すぎる愛国心という言葉を教え込まれ…
彼等に家族はいたのだろうか。
兵士は戦場で、たった一人孤独と恐怖と戦う…極限状態で家族を想うと、笑顔の母が、長年付き添った愛しき妻が、笑顔ばかりの子供達が妄想の中で兵士を慰めてくれる。
彼等の最後に母の姿は現れたのか…妻は微笑んだのか…
怨め、悪の指導者を。称えよ、悪の仮面を被った、善なる兵士を…




