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勇者召喚、ヤバいのが混じってた。 ~近代兵器と戦い抜いた男は、異世界で慈愛を振るう~  作者: 風水
第二巻:第四幕:産業革命編 第六章【白金の塩田と深海の宝庫】

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第二百三十九話:【風の枝条架:高濃度化の加速構造】

第二百三十九話:【風の枝条架:高濃度化の加速構造】


チタン製のポンプが規則的な鼓動を刻み、広大なコンクリートの器を海水で満たしていく。


だが、サキモリはその光景を眺めて満足することはなかった。


「海水をただ溜めて待つのは、あまりに効率が悪いですね。太陽だけでなく、この海岸線の『風』を構造に組み込みましょう」


サキモリの指示を受け、四人は次なる巨大構造物の建設に取り掛かった。


蒸発を加速させる「枝の壁」


サキモリが設計図として提示したのは、伝統的な製塩技法「枝条架(しじょうか)」をベースにした高効率濃縮システムである。


サキモリがストレージから次々と吐き出す木材と竹を、アリサとミャオが神速で組み上げていく。


それは、塩田の上にそびえ立つ、巨大なジャングルジムのような木枠の壁であった。その内部には、細かく割った竹の枝がびっしりと敷き詰められている。


「ここに、ポンプで汲み上げた海水を流します。枝を伝って滴り落ちる間に、海風が水分を奪い去る仕組みです」


ルミナが上空から風の魔法を補助的に送り込み、海岸線の強風を一定の方向に整流する。


竹枝の隙間を海水が薄く広がりながら流れ落ちるたびに、猛烈な勢いで水分が蒸発し、濃縮された「かん水」へと変わっていく。


太陽・風・循環の三位一体


サキモリはさらに、塩田の各所に小型の攪拌(かくはん)ポンプを設置していく。


「水が止まれば蒸発は停滞します。常に循環させ、常に風に晒し、常に太陽の熱を均一に受けさせる。これが『攻め』の製塩です」


小型ポンプが駆動し、塩田内の海水が渦を巻くように流れ始める。


太陽の直射日光、海岸を吹き抜ける強風、そして人工的な循環流。すべての自然要素が、サキモリの構築した仕組みによって「塩」を生み出すための歯車として最適化されていく。


「ただ天を仰いで待つだけじゃない……。これは自然をハックした、攻めの蒸発ですね」


エレンが感心したように呟く。


彼女の目の前で、透明だった海水は次第に重みを増し、水面には高濃度化の証である特有の「ギラつき」が帯び始める。


ストレージの有効活用


仲間たちが枝条架の微調整に追われている間、サキモリは一人、波打ち際に立っていた。


「調合ストレージの容量が、無駄に空いていますね。構造に遊びを作るのは合理的ではありません」


サキモリは自身のストレージを起動すると、チタンポンプが吸い上げる海水の一部を、直接内部へと引き込み始める。


百トンもの容量を持つストレージを、巨大な「予備タンク」として活用する計算だ。


「現地での濃縮と並行して、内部でも加工プロセスを回しましょう。一秒の停滞も許容しません」


静かに海水を飲み込んでいくサキモリの背後では、巨大な枝条架が風を切り裂き、白い霧状の飛沫を上げ続けている。


それは、原始的な自然環境を、最先端の「工場」へと塗り替えていく光景であった。かつてこの地を支配していたクラーケンの咆哮すら、今や重厚な機械音と水の流れる音にかき消されている。


「いい濃度になってきました。次は、この液体を『結晶』という形に固定しましょう」


水面の輝きが白銀へと変わるその瞬間を、サキモリの瞳は見据えていた。


(第二百四十話へ続く)

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