クリスマスダンシングホールケーキナイトパーティーに行くまで
人がお菓子を通じて幸せを感じた時。
お菓子の妖精たちが暮らす街『スウィートタウン』にも、幸せのおすそわけが届きます。
キャンディをおいしいと感じるほど、
キャンディの木に新しい実が。
クッキーでほっこりするほど、
街の地面にあるクッキータイルに新しい模様が。
チョコレートで心がとろけるほど、
チョコレートの川がよりなめらかに。
そうしてスウィートタウンに幸せが満ちると、世界中のお菓子にまた''幸せのもと''が宿るのです。
クリスマスの時期は、スウィートタウンも華やかになります。人々がクリスマスのスイーツに心をときめかせているからです。
クリスマス当日の夜には、ホールケーキ広場で『クリスマスダンシングホールケーキナイトパーティー』も開催されます。
世界のどこかでたくさんの誰かが甘いものを通じて幸せを感じていることを、歌って、踊って、妖精たちは祝福するのです。
また、妖精たちはそれぞれが司るスイーツをクリスマスらしく盛りつけた『デザートハット』を被ってパーティーに参加します。みんなで踊り明かした後は、楽しくおいしくスイーツを分かち合うのもこのパーティーの醍醐味でした。
☆*。☆*。☆*。
今日は待ちに待ったクリスマス当日。
お菓子の妖精たちは朝からデザートハットの準備に夢中です。
とある大きなゼリーのお家の中にも、得意のゼリーを作っている妖精がいます。
ゼリーの妖精、ゼリィです。
「今年のクリスマスダンシングホールケーキナイトパーティー、楽しみだな~!最高にオシャレして行かなくっちゃ!」
ゼリィはお気に入りの真っ赤なゼリーのドレスを身にまとい、デザートハットの用意をしていました。
ゼリィのデザートハットはドレスと同じ、真っ赤な濃いめのいちごゼリーです。
このデザートハットに新鮮なホイップクリームを盛りつけてもらうべく、この後はマダム・ホイップクリームのもとへ出かける予定です。
クリームを絞ってもらったら一度家に戻って、
事前に用意しておいたラズベリー、クランベリー、ブルーベリーを乗せ、最後に小さなミントをちょこんと添えたら…
クリスマスパーティー用デザートハットの完成!後はパーティーに向かうだけ!
の、はずだったのですが…
お昼頃。
ゼリーが完成したので、ホイップクリームを盛りつけてもらおうと出かける支度をしていた時でした。トッピングの材料を確認していると、ゼリィは違和感に気づきます。
「…あれ?クランベリーだと思ったらこれ、アセロラだ!」
なんと、ベリーを一種類、間違えて用意してしまっていたのです。
「3種のベリーであることがオシャレポイントなのに…またフルーツガーデンに取りに行かなくちゃ。間に合うかな…とにかく、まずはホイップクリームさんのところに行かないと!早くしないといっぱい並んじゃう!」
ゼリィはひとまず、予定通りマダム・ホイップクリームのところへ向かうことにしました。
☆*。☆*。☆*。
クリスマスの日は真っ白なホイップクリームが大人気。クリームを絞ってくれるマダム・ホイップクリームの前には、まだお昼前だというのに長い長い行列ができていました。
「くっ…予想以上に並んでる…!」
「あ~ら!少し遅かったですわねゼリィ!」
「!」
ゴージャスなプリン・ア・ラ・モードのデザートハットを被ったプリンの妖精、プリーンが声をかけてきました。
プリーンのデザートハットには色とりどりのフルーツやクリスマスらしい焼き菓子、そしてホイップクリームがたっぷりと盛り付けられており、とってもゴージャスです。
「わぁ~!かわいい!」
「ふふん、当然ですわ。今年のクリスマスダンシングホールケーキナイトパーティーの主役はわたくしで決まりよ!おーほっほっほ!」
「………」
「ちょっと!急にわたくしへの興味を失わないでくださる!?」
「あ、ごめんごめん。クリスマスダンシングホールケーキナイトパーティーに間に合うか、ちょっと不安で…」
ゼリィは長い行列にそわそわが止まりません。
「マダム・ホイップクリームのクリーム捌きは達人の域ですわ。列は長いけれど進みは早いですし、十分間に合うのではなくて?」
「…実は、この後フルーツガーデンにも行かなきゃいけないの」
「えぇ?まだ用意していませんの?フルーツは前日までにもぎ取っておくものでしょうに」
「用意してたつもりだったんだけど、クランベリーを取ってきたつもりが今朝よく見たらアセロラだったの…」
「かーっ!全く、詰めが甘いんだから…」
プリーンはやれやれと首を横に振りました。
「…クランベリーですわね」
「え、プリーン…!」
「わたくしがクランベリーを取ってきてあげますから、アナタは他の支度をしっかり済ましてからおいでくださいまし。夕方6時にホールケーキ広場の前に集合ですわよ!」
「わかった!ありがとう…!」
プリーンは颯爽とフルーツガーデンの方へ駆けていきます。
ゼリィはプリーンのおかげで安心して列に並ぶことができました。
長い列にゼリィが並び始めてから3時間後…
ようやくゼリィの番がやって来ました。
「はぁい、次はだぁれ?」
「ゼリィです!よろしくお願いします!」
ゼリィはいちごゼリーのデザートハットをマダム・ホイップクリームに差し出します。
「はい、どうぞ~」
マダム・ホイップクリームは慣れた手つきで、ゼリーを囲むように真っ白なホイップクリームを盛りつけていきます。そして仕上げに、ゼリーのてっぺんにもちょん、とクリームを乗せたら完成です。
「わぁ…かわいい…!ケーキみたい!」
「うふふ。クリスマスパーティー、楽しんでね」
「はい!ありがとうございます!」
ホイップクリームを盛りつけてもらったゼリィは、一度家に戻ってラズベリーとブルーベリー、そしてミントをデザートハットに飾りつけます。この時点でもかわいいですが、クランベリーを盛りつけられたならもっと完璧です。
「あ、もうこんな時間!」
ベリーの配置にこだわっていたら外はすっかり夕方になっていました。時刻は5時過ぎ。
ゼリィはデザートハットを被って家を再び後にし、プリーンと待ち合わせているケーキホール広場前へ向かいました。
☆*。☆*。☆*。
ケーキホール広場へ向かう途中…
「うわーん…!」
誰かの泣き声が聞こえてきました。
ゼリィは一度足を止め、泣き声が聞こえる方へ様子を見に行ってみました。
すると、キャンディの木の前でマシュマロの妖精マシュが泣きじゃくっているではありませんか。
ゼリィは心配になってマシュに声をかけます。
「マシュ、どうして泣いてるの?」
「ぐす…ゼリィ…ボクが一番高いところにあるキャンディをデザートハットにつけたいなーなんて言っちゃったから、マロが木に登っちゃったんだ。そしたら降りられなくなっちゃって…でもボク、木登りできなくて…助けてあげられなくて…う…うぅ…っ」
木の上の方を見てみると、マシュのおともであるマシュマロネコのマロが、頭にひと粒の星形キャンディをくっつけながら「やっちまったニャ…」と困った顔をしています。
「わたしが行ってみる。木登りなら任せて!」
木登り番長でもあるゼリィは、自分のデザートハットをマッシュに預けてからキャンディの木をよじ登り始めました。
「マロ~!助けに来たよ~!」
「ンニャァ~…」
マロは慎重に足を伸ばし、木の枝からゼリィの肩の上に移動しました。
「よし、降りるね…んしょ…んしょ…」
ゼリィはマロを肩に乗せて、木をゆっくりと降りていきました。
「マロ~~!ありがとうゼリィ…!」
「どういたしまして!マロが無事でよかった」
「ンニャ~」
マロはゼリィの肩からマシュの肩へ飛び移り、頭にくっつけていたキャンディをマシュにプレゼントします。
「マロもありがとう。でも、もう無茶はしないでね?」
「ニャ…」
マロは面目なさそうにしながら、マシュのほっぺにスリスリしました。
「本当にありがとうゼリィ。はい、預かっていたデザートハット。今年も綺麗な色のゼリーだね」
「ありがとう!でもまだトッピングが足りていないの」
「そうなの?もしよかったら、ボクのマシュマロも少し乗せる?」
「え、いいの?」
「うん。マロを助けてくれたお礼!」
マシュはそう言うと、星や雪だるまの形をしたかわいらしい小さなマシュマロをゼリィのデザートハットに添えてくれました。
「わ~、かわいい…!クリスマス感が一気に跳ね上がっちゃった!ありがとうマシュ!」
「こちらこそだよ。お互いクリスマスダンシングホールケーキナイトパーティーを楽しもうね!」
「うん!」
ゼリィはプリーンが待っているホールケーキ広場を再び目指しました。
☆*。☆*。☆*。
夕方6時前。
もうすぐプリーンとの約束の時間です。
ゼリィは駆け足で近道の菓子パン通りを抜けていきます。
あともう少しでホールケーキ広場前に着きそうだった、その時。
「うわ!」
ゼリィは転んでしまいました。
幸い怪我はなかったのですが、ゼリーのドレスの裾がところどころ欠けてくぼんでしまっています。
「そ、そんな…お気に入りのドレスがぼこぼこになっちゃった…これじゃパーティーに行けないよ…」
ゼリィの目には涙が浮かび始めます。
年に一度の素敵な夜を、ぼこぼこのドレスでは迎えられません。けれど、今から家に戻って着替え直していたらパーティーに遅れてしまいます。
プリーンだって待ってくれているのに。
「どうしよう…」
「何かお困りかい?ゼリィくん」
そこに通りかかったのは、シュトーレンの妖精ミスター・シュトーレンでした。
ゼリィは涙をこらえながら、一生懸命答えました。
「シュトーレンさん…その…ドレスのゼリーが…少し欠けちゃって…」
「なるほど…それはショックだったね。なら、こんなのはどうかな?」
ミスター・シュトーレンがぱちんと指を鳴らすと、ポンッ!と現れたドライフルーツやナッツが、ゼリィのドレス裾のくぼみをギュッと埋めていきます。それはまるでシックな花柄スカートのよう。
更に、粉砂糖のグラデーションがドレス全体に施されて…ゼリィのドレスは、よりクリスマスらしい素敵なドレスに生まれ変わりました。
「すごい…!とってもクリスマスっぽくて、ゴージャスで、すんごくかわいい!ありがとうシュトーレンさん!」
「ふふ、気に入ってもらえてよかった。さぁ、パーティーを楽しんでおいで」
「うん!」
ミスター・シュトーレンのおかげで元気を取り戻せたゼリィは、ホールケーキ広場を目指して走り出しました。
☆*。☆*。☆*。
6時ちょっと過ぎ。
スウィートタウンの空が夜の準備を始めた頃、ゼリィはようやく広場前に到着します。
「プリーン~!お待たせ~!」
「遅いですわよゼリィ!…あら?なんだかドレスがよりオシャレさんになっていますわね。デザートハットにマシュマロも乗っていて…わたくしの次くらいにはゴージャスですわ」
「えへへ、ちょっと色々あったの」
「全くもう、ちゃっかりしてますわ!ほら、もぎたてのクランベリーですわよ。感謝なさいな」
「ありがとう…!」
ゼリィはプリーンからクランベリーを受け取り、デザートハットに飾りつけました。
ホイップクリームに添えられた3種のベリーとミントが映えるクリスマス用デザートハット
~クリスマスマシュマロ付き~の完成です。
「これで完璧!ん~、と~ってもクリスマスっぽくてかわいい!」
「納得のいくトッピングはできまして?」
「うん!最高のデザートハットになったよ!本当にありがとう、プリーン…!」
「よろしい。ならば行きましょう、クリスマスダンシングホールケーキナイトパーティーへ!」
「うん、行こう!クリスマスダンシングホールケーキナイトパーティーへ!」
こうしてゼリィは無事、クリスマスダンシングホールケーキナイトパーティーに間に合いました。
広場の入り口でクッキーの妖精が配っているジンジャークッキーを受け取って、オシャレをしたたくさんの妖精たちと共にその時を待ちます。
そして、ドーナツタワーの時計の針が7時を回ると…
ホールケーキ広場に真っ白なお砂糖の雪が降り始めます。
それは、人間たちがお菓子を通じて感じた幸せのおすそわけ。クリスマスダンシングホールケーキナイトパーティーの始まりを告げる合図です。
「今年もたくさんの人たちが、甘いものを食べて幸せな気持ちになっているのを感じる…」
「とっても幸せな気持ちが、わたくしたちの心にも伝わってきますわ…踊りましょう、ゼリィ!」
「うん!踊ろう、プリーン!」
ゼリィとプリーンは、幸せを分かち合うようにクルクルと踊り始めました。
他の妖精たちも楽しそうに歌い、踊り、今日という日の喜びを共に祝福します。
踊り明かした後は、デザートハットをみんなで食べました。
ショートケーキやブッシュ・ド・ノエル、シュトーレンにクグロフといったクリスマスのスイーツが並び、
チョコやキャンディ、マシュマロにプリンなどいつものお菓子たちも、この日のために用意されたクリスマス仕様です。
それぞれがとっておきの一皿をみんなに振る舞います。もちろんゼリィも。
こうしてゼリィは、たくさんの優しさに助けてもらい、今年も最高のクリスマスダンシングホールケーキナイトパーティーを過ごすことができました。
来年も、再来年も、この街できっと、
素敵なクリスマスを仲間たちと過ごすことでしょう。
☆*。☆*。☆*。
スウィートタウン。
ここは優しさに包まれた甘い甘いお菓子の街。
世界のどこかで、誰かがお菓子を作ったり、もらったり、見たり、食べたり…そうして幸せを感じた時、お菓子の街にも幸せが降り注ぐ。
お菓子の妖精が幸せな時は、誰かが幸せな時。
人も、妖精も、どうか幸せでありますように。
☆*。☆*。☆*。




