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1 茶会という名目の打ち合わせが始まる、はずだったんだけど。

 季節は春の半ば。


 昼を過ぎた頃。


 晴れ渡る春の青空と、太陽が柔らかな光を注ぐ、その場所。


 王城の一角、数多くある庭園の一つ。


 大きくもなく小さくもなく、中規模にあたる庭園の、それでも多種多様な花々や木々で構成されている庭園で。


 ごく小規模な茶会が開かれようとしていた。


 参加人数は二人。

 この国、グレイフォアガウス王国の第二王女と次期公爵、婚約者同士のごく小規模な茶会。

 第二王女には侍女が、次期公爵には側近がそばにいるが、侍女も側近も『茶会の参加者』ではない。

 なので、この茶会はやはり、『第二王女と次期公爵との二人だけの茶会』として準備がされていた。


 周囲には、近衛などの警備もない。


 次期公爵が「煩わしくはないのか」と、婚約者である王女へ冷たく問いかけ、「なら、下がらせます」と、王女もまた素っ気なく返した。

 そうして、婚約者同士二人だけ、そこに彼らの侍女と側近という『どこまでも小規模な茶会』が形作られてから、もう何年にもなる。


 親密な間柄だから、という理由で『二人だけの茶会』にした訳はない、と、お互いがお互いへ思っている。

 少なくとも、第二王女──シャーロットはそう思っている。

 確認は取っていない。

 確認など取らずとも、お互いにとって周知の事実のようなそれがあるから、確認する意味を見出していなかった。


 第二王女であるシャーロットは、周辺国より軍事力が頭三つは抜きん出ているこの国の、国軍に所属している。


 居場所を与えてくれた将軍には、感謝してもしきれない。

 幼い頃から淑女らしくあれなかった自分に、才能があるからと声をかけてくれた。

 そうして自分は、『軍』という居場所を得た。


 だからシャーロットは、恩人でもある上司の将軍を、とても慕っている。

 もちろん『慕う』の意味は、恋慕の情などではなく、『尊敬』の意味での『慕う』だ。


 シャーロットが恋をしている相手は、別の人間だ。


 シャーロットの髪色は白銀、瞳は深い紅紫色、華奢で小柄な体格。

 そんな彼女は、容姿だけで判断するなら、そぐわなく思える『二つ名のような何か』を持っていた。


 じゃじゃ馬を超えた暴れ馬。

 名ばかり王女のシャーロット。


 今年の春、つい先日に十五歳を迎えたシャーロットは、自分にお似合いの『二つ名』だ、と陰で呼ばれているそれらを受け入れている。


 自分の婚約者だって、自分をそう思っていることだろう。

 確認したことはないが。


 確認しなくても分かりきっている事柄なので、確認する意味も必要もないと、彼女は思っている。

 彼の切れ長な翡翠の眼差しは、今日もいつもと同じく、どこまでも冷たく自分を見ているから。





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