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じゃじゃ馬を超越する暴れ馬、女らしさのカケラもない名ばかり王女、シャーロット。
自分が彼の妻になったら、彼の評判は確実に落ちる。
王位継承権第二位の、立場が揺らぐ。
だから早く、婚約破棄でも解消でもなんでも良いからしてほしかった。
彼の負担になりたくなかった。
もっと淑女らしかったら。
もっと国民から愛される王女になれたら。
努力しても失敗ばかりで、周囲に嗤われるだけ。
セオドアは嗤ったりしなかったけれど、「変える必要があるとは思えないんだが」と冷たく言うばかり。
あなたのためになりません。
婚約について考え直してください。
何度も言っても、破棄も解消もしようとしない。
つまり、あれか。
嗤われながら「名ばかり」の公爵家夫人へなれと。
嗤われる一生を過ごせと。
第二夫人や愛人を娶れば、自分とは「名ばかり」の関係でも公爵家の後継者問題は起こらない。
本人から聞いたことはないけれど、セオドアには想う人がいるらしいと、姉がこっそり教えてくれていた。
もしかしたら、あなたの婚約者はその人と、と。
『可哀想なシャーロット。わたくしはいつでもあなたの味方だから、辛くなったら遠慮なく頼ってちょうだいね?』
わたくしたちは、姉妹なのだから。
妖精姫の二つ名を持つ異母姉は、自分へ寄り添い、励ましてくれた。
……けど。
『僕が愛しているのはシャルだけだ』
あの言葉が、本当なら。
セオ様は自分を、好いてくれている?
なら、彼の想い人は?
姉が内緒で聞かせてくれた話は?
姉が教えてくれたもしもの未来、第二夫人や愛人の話は?
最初に姉が『花言葉の意味』を教えてくれて、だから、頑張っていたけど。
王位継承権の話題は別として、セオ様が好いてくれているなら、名ばかりの夫人にならないのでは? あれ? え?
混乱し始めたシャーロットの横で。