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5 経緯を聞いて、説明を聞いて、二人は余計に混乱した。

 変わり者として有名なソフィアは『偏屈魔女』と陰で呼ばれていた。

 次第に、彼女自ら、自分は『偏屈魔女』だと名乗るようになる。


 そのソフィアが。


 すれ違っているシャーロットとセオドアの仲を、今からでいいからどうにかしろと、兄へ言った。

 ソフィアの兄──国王へ。


 すれ違ったまま婚姻を結んで、すれ違ったまま夫婦となって、すれ違ったまま、愛も育めず離縁する。

 だけならば、まだマシな最悪だ。最悪には変わりないが。


『分かってんだろう』


 二人をすれ違ったままにしたら、国が滅びる。


 シャーロットとセオドアだけじゃない。

 国の民が苦しみ、その果てに死ぬ。馬鹿みたいな最悪の未来を回避しろ。


 言ったが、国王は耳を貸さなかった。


「そういった経緯で」


 ソフィア殿下お手製の魔法薬を使った次第です。

 アメリアがいつも通りに淡々とした口調で説明した、『経緯』を聞いて。


「ぜんっぜん、分かんない……」


 シャーロットは頭を抱えたい気持ちをなんとか堪え、呻くように言う。

 頭を抱えられないからと膝の上に置いた手でドレスのスカート部分を破らないよう、気をつけつつ。


「シャルと同意見だ」


 テーブルの上で手を組んでいるセオドアも、頭痛がしているように顔をしかめ、呆れたものになってしまう声を出す。

 本当に頭痛がしている訳ではないので、こめかみを押さえかけ、テーブルの上に手を組み直したセオドアだった。


「はい、聞くだけじゃあ分かり難いと思うんで」


 アメリアと位置を変わるようにして、シャーロットとセオドアの正面へ移動したジュリアンが、


「分かり易く、図解で説明しましょっかねー」


 いつもの調子で軽く言い、言葉通りに魔法で肖像画らしき人物画やら絵図やらを構築し、本当に図解説明を始めた。


「最初の最初なんで、基本的な情報からいきますかね」


 軽く言ったジュリアンは、何枚も構築した肖像画の中から、二枚、状況を見守るしかないシャーロットとセオドアの前へ移動させ、宙に浮かべる形で並べた。


 現在の正妃、シャーロットの母。

 一人いる側妃、シャーロットの姉の母。


 彼女たちの肖像画を並べ、


「んで、今現在、直系の王子は居ないと」


 軽く言い、軽いまま、続ける。


 国王に男のきょうだいはおらず、玉座から降りた前国王も既に他界している。

 前国王の子どもたちは、三人。


 生まれ順で言えば長子になる、公爵家へ嫁いだ長女。

 次に生まれた現在の国王。

 三番目、変わり者で独り身の次女。


 それぞれの肖像画を並べる。


「となると」


 今の状態で、後継者を血筋で選ぶなら。


 継承権第一位は、国王の従弟である侯爵。


 言いながら、侯爵の肖像画を並べ、その隣に別の肖像画──セオドアの肖像画を並べた。


「継承権第二位が、このお方。見ての通り、俺の主ことセオドア様っすねー」


 公爵家へ降嫁した、国王の姉の子ども。

 血筋上、シャーロットとセオドアは、いとこにあたる。


「だからどうした」


 胸の前で腕を組んだセオドアが、本気の呆れ声で言い、


「ホントだよもう知ってるよあたしだって」


 テーブルに突っ伏したい気持ちをなんとか抑え込んだシャーロットは、情けない声になった。


 そんなこと、分かりきっていると言いたげに。


 セオドアも、シャーロットも。


 二人だけでなく、国民全員が知っているくらいの話。


「逆に訳分かんなくなってきた……」


 これから何を言われるのか不透明すぎて、シャーロットは不安になってくる。


 なぜなら。


 その立場にいるから、自分みたいな人間が彼の妻として選ばれた。


 シャーロットは思っている。



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